異世界人に常識を問いますか
どう森シリーズは施設や増築ができるのに一日かかるのが難点ですね…
「え、と。猫探しか何かですか?」
「いやいや、よく読んでよ。…あそっか。読めないんだっけ」
たはは、と笑うブレッドさんは先程指差した依頼書を持ってきて、私の目の前に動物の絵を見せつけた。
「このモンスターを倒せば良いの!」
つまりは、モンスター討伐の依頼であった。
しーランクの免許を受け取ってその依頼を受注し、そのモンスターが出現する場所へ移動する道中、ブレッドさんは字が読めない私のために依頼内容を教えてくれた。
簡単に纏めると、畑を荒らすモンスターを討伐して欲しいという農家からのお願いだった。作物を荒らす害獣の駆除、と言ったところかな。
そして私がネコと間違えたそのモンスターの実力を聞くと、まぁまぁかな、という評価が帰ってきた。
「確かに噛みつかれたら痛いし、血は出るけどね。命の危機には陥らないんじゃないかな」
「命の危機…」
そう言われて思い出した。初めて会った時からずっと気になっていたことを。
「一つ聞いても?」
「何かな?」
「あの、ここにいるモンスターって消滅しますよね。それって何故なんです?」
初めてブレッドさんを見たときのことや、町で倒したモンスター達のことを思い出す。攻撃して遠くに吹き飛ばしたかと思うと、ポンという音を立てて奴らは消滅した。血は遺るが、死骸は遺らない。
「え?モンスターだったらHPがなくなったら消滅するじゃん。常識じゃないの?」
「異世界人に常識を問いますか。…で、そのひっとぽいんと?ってのは何なんです?」
「あ、それも知らないんだ。そうだなぁ、命の割合みたいなものかなぁ」
そう言われるものの、いまいちよくわからない。命の割合ってなんだろう。10%の命とかが存在するとでも言うのだろうか。
「ちょっとさ、アタシのウィンドウ見てくれる?」
ブレッドさんが指を動かし例の板、うぃんどうを宙に出して私に見せるよう促す。そして一番上にある文字列を指差した。
「これがHPなんだけどさ、右に数字があるのわかる?」
「あ、これ数字なんですね。わからないです」
「そう。まぁこの数字がHPなの。で、モンスターのHPをゼロにしたら倒せるの。そしたら消滅する」
「…ちょっと待ってください。てことはブレッドさんのHPがゼロになったらどうなるんです。消滅するんですか?」
「まさか、人間は死ぬだけだよ。死体とか遺るし、それに──」
ブレッドさんが何かを言おうとしたところを、突如現れたモンスターの声が遮る。群れを組んでやってきた奴らの姿は、依頼書に描かれていたモンスターの絵に少し似ていた。つまりは。
「あれが、依頼の魔物?」
「ベジタリアーウルフだね。それじゃあ、とりあえず目の前のを片付けようか」
「了解です!」
二人で剣を構え、体勢を整えた。あぁ、何だかこうやって誰かと戦うのって久しぶりな気がする。




