魔法には自信ありますので
今更なんですけど、前書きってない方がいいんですかね?
戦いが始まっても、すぐに両者が動き始めるわけではない。
私はじっと試験官を睨みつけ、ただただ沈黙を続けていた。
「どうした、かかってこないのかい。お嬢さん」
何と言われようと先に突っ込むことはない。命がかかっていない戦いならば、相手の実力を見てから判断した方が楽だ。仮に相手が同じ考えだとしても構わない。沈黙には慣れている。
姿勢を動かさずに数分が経過する。今までこんなことはなかったのか、観客席の人々は私たちにヤジを飛ばす。
それに痺れを切らしたのか──試験官の男が動き始めた。
剣を下に構えた男が地面を蹴り、一気に私との距離を詰める。そうして懐に潜り込むと、構えた剣を一気に振り上げた。
この攻撃は避けられないだろう。
──私以外は、だが。
「何!?」
目の前にいる男が驚きの声をあげた。斬り上げた剣は私に届くことはなく、土の壁が受け止めていた。以前モンスターと戦ったときと同じで、大地の魔法を使い地面を隆起させたのだ。
自分で言うのは少し恥ずかしいが、こうやって高速で魔法を唱えることができる人はそうそういないだろう。
ともかく、詰め寄る時の速さはわかった。相手の攻撃は魔法で受け止められることも。これくらいの能力なら、勝てる。今度はこっちの番だ。
呆けた顔を引き締める男からバックステップで距離を取り、再び剣を構える。相手は魔法を見て私の実力がわかったのか、自らを守るように剣を持つ。
だが、それは無意味だ。
「おぉぉぉっっ!?」
風の魔法で相手を浮き上がらせ、そのまま大地の魔法で重力を増し、風の魔法を解く。空中で身動きが取れなくなった男はなす術もなく地面に叩きつけられる。
重力も元に戻し、未だ倒れている相手の上に乗り首元へ剣先を突きつけた。すると。
「そこまで!」
というレフェリーの声が耳に届いた。
「試験官の行動不能を認めます。勝者、チャレンジャー・シロカ!」
その叫びと共に歓声が再び部屋中に響き渡った。
何だかあっさりと終わってしまったが、まぁ良いだろう。この世界のしーランクと呼ばれる人の実力も見れたことだし。
「はは、参ったよ」
私の下で、試験官が小さく笑う。
「まさかあんなに魔法の扱いが上手いとはね」
「私、魔法には自信がありますので」
「そうみたいだな。あんなに早く魔法を使えて、しかも風魔法と重力魔法を同時にかけられるなんて、思いもよらなかったよ」
そうか。そういえば、一度に二つの魔法を同時に扱うことは難しいと、戦いの師匠に教わった気がする。この世界でもそれは同じだということか。
「完敗だよ。後で受付に来てくれ、Cランクの免許を発行するからさ」
そう言う男の笑顔に応えるように、私も小さく微笑んだ。




