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異世界勇者の人助け  作者: 鳥羽こたつ
9章
123/125

知識不足のせいで後悔してきたもので

この物語を描き始めてから一年が経過しました。引き続き、完結に向けて頑張ります。

「お父さん、お帰り!」


母親から逃げるように少女は現れた大男に抱きついた。男は柔らかな笑みを浮かべて少女を撫でると、表情を一変させて私に鋭い視線を向けた。


「…この人は?」

「この辺りに迷い込んでいた人なの」


母親の答えを聞いた男は、尚も私に視線を向ける。やがて優しく少女を引き離すと、またその頭を優しく撫でた。


「ごめんな、お父さんはこの人と話があるんだ」

「え、お父さんの知り合いだったの?」

「ちょっとな。…外に来てくれ」


抵抗するな、そう言いたいのだろう。男が何を望んでいるのかはわからないが、少なくとも穏やかな話し合いで終わるとは思えない。

いざという時のために剣を回収しておきたいところだが、そんな余裕もなさそうだ。私は顎で指示する男と共に家を後にした。


「何しにここに来た」


第一声がそれだった。男の瞳には敵意しか映っていない。


「見ての通り、ここは普通なら人が通ることもない森の中だ。何も目的もなしに辿り着くことなどあるまい」

「道に迷って、という理由では納得していただけないでしょうか」

「しても良いが、だとしたら早く出てってくれ。帰り道なら教えてやる」

「何故、そこまで人が来るのを拒むんです?」

「お前が知る必要はない」

「人が来るとマズイんですね」

「貴様!」


男は素早く弓を構え、矢の先を私の額へと向ける。ここまで過剰な反応、さては街で罪でも犯したのだろうか。少なくとも彼らの家族の後ろには黒い背景があると見た。


「首を縦に動かせ。でなければ、打つ!」

「事情を聞かせてくれれば縦に動かしてもいいですが」


口答えする私の口を封じ込めようと男は矢を放つ。しかしそれは、私が生み出した氷の壁に阻まれ届くことはなかった。


「なっ…!」


呆気に取られて隙が生まれた男の裏へと回り込み、その首元を押さえつけた。我ながら完全に悪役の動きだなと呆れてしまう。しかしだ、もしこいつが放っては置けない何かをしていたのだとしたら、私はこいつを捕まえなければならないと思う。


「形勢逆転ですね」

「貴様、何が望みだ!」

「あなたの考えを知ることです」

「知ってどうなる!」

「すみませんが、興味本位です。色々と知識不足のせいで後悔してきたもので」


男は抵抗して私を振り解こうとするが、私はそれを許さない。やがて諦めた男がポツリと本音を漏らす。


「…俺たちの幸せを崩さないで欲しいんだ」


涙を流しながら、男は言葉を紡いでいった。

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