いつも大丈夫だからって
「いやぁ、なんかすみません。ご飯までいただいてしまって」
ベッドから飛び降りて数分後。私は湯気のたつ食卓を囲んでいた。目の前には例の少女とその母親。それぞれの前には湯気のたつ食べ物が添えられている。オムライスだった。
「いえいえ。困った時はお互い様ですから」
と、少女の母親がニコリ。私はスプーンを手に取り、渡されたオムライスを頬張った。
珍しい、そう思った。玉子の中に入っているご飯はチキンライスではなく白いガーリックライス。ソースもあまりかかっていないため味は薄いのかと思いきや、ライスの味が濃く、十分に美味しく食べられる。
「どうでしょう、お口に合いましたか?」
「えぇ!」
これならお店を出せるだろう、と本気で思える。本人に伝えようかと思ったが、家の窓から景色を見る限り、ここは人里離れた所だ。恐らくここに住むしかない理由があるのではないかと推測した。なので今は目の前にある料理を堪能するとしよう。
気がつけばあっという間にオムライスを平らげていた。
「ところで、私はどういう経緯でここに運ばれてきたんですか?」
少女の母親と共に台所に並び、自分で使った食器を洗いながらそれを尋ねた。
あぁ、それは…と呟くと、母親はチラリと背後に目線を向ける。その先には室内で木の棒を振り回す少女の姿。家具を傷つけないか少し心配だ。
「あの子があなたを見つけて、わたしを呼んできたんですよ」
「え、ならあの子は森の中に一人でいたってことですか」
「危ないからやめてって、いつも伝えてるんですけどね」
まったくだ。私みたいに一人になって遭難したらどうする。
「って、いつも?」
「はい。もう数えるのも忘れてしまいました」
「いやいやいや、それはもっと強く言わないとマズイですよ。いつも大丈夫だからって、次も大丈夫とは限らないんですよ」
「強く言ったつもりなんですけどねぇ…」
母親は静かにため息を吐く。しまった、他人の家族の都合に口を挟みすぎた。
もしかしたら自分の家の周りなのだから自然と道を覚えている可能性もあるだろう。現に私を見つけた後、家に戻って再び現場に駆けつけているのだ。私が思っている以上にしっかりしているに違いない。
「でも、そうですね」
食器を洗い終えた後、母親は決心したかのように拳を握った。
「もう一度あの子に注意してきます」
「えぇと、お手柔らかに?」
「拳はふるいませんよ。生意気な態度を取らなければ」
と、母親は少女の方へと向かい、私と話していた時とは異なる強い口調で話をしていた。具体的な内容までは聞き取れなかったが、今回の注意であの少女が理解してくれるのを期待しよう。
……ガタガタッ。
私が親子の会話を見守っていると、扉が大きな音を立てた。自然に視線が音の方へと向かう。誰か来たのかと見つめていると、開いた扉からヌッと大男が現れた。




