尿という単語を考えることに
その場所は意外とすぐに見つかった。街の様々な飲食店が例の尿を取り扱っており、更に言うなら一般販売されているとのことだ。あの尿が。
それだけ皆幻覚を見たいのだろうか、とシロカと話しているうちに、例の尿を扱うお店へと辿り着く。見た目は普通の牧場のようなところであったが、その本質は何を表しているのだろうか。
それにしてもアタシ、尿という単語を考えることに何も思わなくなってきたなぁ
「お邪魔しまーす…」
オレンジ色のライトが照らす、カントリーな雰囲気の建物の中へと入る。よくある物語ならば明るい雰囲気のおじさんやおばさんが出迎えてくれそうなものであるが。
「なんですか」
出てきたのは変な雰囲気の女だった。あの喫茶店の店主と同じ目をしていた。
「えっと、ここでディアのおし、尿を作っているっていうのは本当ですか」
「当たり前ですが」
当たり前なのか。よくわからない。どうやらこの街にアタシたちの常識は通用しないらしい。
「えっと。それは何のために?」
「何のために、とは?」
「誰が何のためにあの尿を飲んでいるんです?」
「はぁ。それは自分のためでしょうけど」
「自分のため?」
ということは何だ。吐くもの吐いて気持ちよくなろうとか、そういうものだろうか。
アタシが頭の上にハテナマークを浮かべていると、後ろにいたシロカが続いて質問をし始めた。
「それはあれを飲むことで見る幻覚が関係してますか?」
「なんだ。あなた方も飲んだんですか」
「えぇ飲みました。見たくないものまで見ました」
アタシが見たものも見たくないものだったのだろうか。きっとそうなのだろうが、何故かそう言い切れない自分がいるのも事実だった。
「そうでしょうね。あれで見るとしたらそういう幻覚じゃないかなと」
「えっ」
考え事をしている間に、この牧場もどきの主人はそう答えたのだった。
見る幻覚の種類が同じ?というよりも、本当にこの街の人たちはあの幻覚を目当てにあの尿を飲んでいたのか?何だかその可能性は考えたが、まさか本当にその通りだったのかと驚いた。だってわざわざ幻覚を見たいだなんて感覚はアタシには持ち合わせていないからだ。
「で、何でそんなものを皆が飲みたがるんです?」
アタシの頭にあった疑問を代わりにシロカがぶつけてくれた。
「幻覚を見ると言うことは脳か視覚に何かしら影響を与えるはずですよね。体に無害なはずもない」
「えぇ。あれは飲み過ぎれば体に異常をきたすものです」
「…そこまでわかっているのならば、何故販売してるんです」
シロカが呆れたようにそう言うと、変な雰囲気の女の答えはこれだった。
「自分の闇と向き合うためですが」




