放っておけよ
先に謝罪と言い訳があります。
何だか最近疲れているせいか、今回の話は少し毛並みが違います。
なるべく今まで通りに戻すつもりですが、この7.5章の間だけはこの雰囲気のまま進ませてください。
すみませんがよろしくお願いします。
「この村の教会に住みついたモンスターを倒して欲しいんですじゃ」
とある村にたどり着いた私たちは、着いた瞬間村長を名乗る老人に手を引かれそんな話をされた。唐突にも程がある。
それにしても、語尾に「じゃ」をつける人間を初めてみた。
「村人は全員あのモンスターに呪いをかけられて抵抗できないんですじゃ」
「あぁ、自分には攻撃できないようにするみたいな奴ですか」
「いえ、食欲を増大させる呪いですじゃ」
抵抗しろよ。
喉元まで出かかった言葉を飲み込む。もしかしたらこの村には戦える人がいないのかもしれない。安易なことは言うものじゃないだろう。
「あれこれ数年間呪いに苦しめられておりますのじゃ…」
「え、数年って。その間にそのモンスターを倒す人とかって現れなかったんですか?他の村や町に助けを呼んだりとか」
「みんな食べるのに必死でそんなことをする余裕がないんですじゃ」
それを聞くと恐ろしい呪いだ。だが数年となると食べ物もなくなりそうではあるが、そこは大丈夫なのだろうか。
「この村には老人しかいないんじゃ。食べられる量なんて限られてるんですじゃ」
「でも食べ物も限られてますよね。今までどうしてたんですか?」
「いや、食事には命をかけれるので村人総がかりで作物を作っていたんですじゃ。おかげで毎日お腹いっぱいですじゃ」
もうそのモンスター放っておけよ。
喉元まで出てきた言葉を再び飲み込む。側から見たら何の問題もなさそうだが、当人達にとっては苦しんでいるのかもしれない。人の気持ちなんて他人にはわからないのだ。
「そんなわけで、モンスターを倒して欲しいんですじゃ…」
「事情はわかりました。ちなみに聞きますけど、お礼って貰えますか?」
「あっはっは。はっはっは」
笑って流されてしまった。どうやらお礼は期待しない方が良いらしい。
村長の家を出た私たちは村人達からモンスターに対する情報を集めようとしたが、上手くいかなかった。というのも、ほとんどの村人は呪いをかけられたこと自体を忘れていたのだ。
「そういえば教会にいる人、モンスターだったねぇ」
「何もないこの村だけど、食事が娯楽でさ。色んな料理が食べられて幸せなんだぜ」
「息子に呪いをかけて貰ったんだけど、毎日元気にご飯を食べてくれるからすくすく育っちゃって。おかげで一回も風邪にかかったことがないのよ」
村人から聞いた話をまとめると、そういうことだった。わかったことは、そのモンスターは人間と意思疎通ができるということだ。
もう倒す必要なんて無いんじゃないだろうか。というか、そもそもそのモンスターは何がしたいんだ。
最初はやる気に満ちた目をしていたブレッドさんも、今は村人から話を聞くたびに眠そうになっていく。完全に興味を無くしている様子だ。
「何かもう、そのモンスターに呪いを解いてもらえるか聞けば良いんじゃないかな」
「そうですね…。解きたい人は解いて貰って、そのままで良い人はそのままでいて貰った方が良い気がしてきました」
この問題に対して解決する気が失われつつある私たちは、そんな投げやりな態度のまま教会へ向かった。




