そんなのアリか
スォンナさんは登った後も特別不思議なことはしない。いや、彼女の場合は姉のソレッティさんに親切にするだけで十分不思議ではあるのだが。
一体どういう風の吹き回しだろう、と私たち三人はポカンとした顔で彼女らを見ていた。やがて幼馴染であるドリーさんが何かに納得したかのように手をポンと叩く。
「何だかんだと言っても、あの二人も家族なんだな」
家族だから、何やかんやで放ってはおけないのだろうと呟いていた。それを聞いたブレッドさんも少し考えはしたものの、「まぁ、そうなんだろうな」といった顔をする。恐らく普通に考えたらそうなんだろうけど。
「それじゃあ戻ろうか。ここに長居する意味なんてないだろうしな」
持ってきた包帯などでソレッティさんの応急処置を終えると、ドリーさんはそう言って先頭へ立った。そして誰に言われることもなく、スォンナさんは怪我をした姉を背負う。
微笑ましそうに彼女らを見るドリーさん達だが、何となく気になって、私はスォンナさんへボソリと声をかけた。
「どう言う風の吹き回しですか?」
「何がだ?」
「貴女が姉を助ける理由が見当たりません」
「理由はある。こいつはわたしのことを良く知る女だ、なぁ?」
「…えぇ、そうね」
背負われたソレッティさんは悔しそうな表情を浮かべて妹の背中に顔を埋めた。そして、表情以上の感情が込められた息を吐く。
「まさか、こいつに助けられるなんてっ」
「悔しいんですか」
「当たり前でしょう。この借りは高くつくわ…!」
「よぉくわかってるじゃないかぁ。流石は血の繋がったわたしの姉だ」
意地の悪い笑みを浮かべて妹は笑った。…もしかして借りを作るためにわざわざ助けに行ったのだろうか。
いや、それが一番納得できるぞ。スォンナさんがこの前言っていたことを思い出してみろ。
「さて、洞窟から出たら救出料でも貰おうか」
お金持ってないですよね?と言ったら、『なければ稼げばいい』と。
こういうことですか。人助けは人助けだが、わざわざ金をもらうために助けに行くというのは…。どうだろう、アリなのだろうか。少なくとも家族の絆を信じて微笑みを浮かべていたドリーさん達にはこの真相を打ち明けにくい。
「でも残念ね。今回はあんたの隣にいるシロカさんに助けてもらったわけ。あんたに渡すお金なんてないわ」
「いやいや、お前を助けた報酬金でわたし達は呑みに出かけるんだ。そうだろう?」
「あんた達グルだったの!?何よ、見損なったわよシロカ!」
酷いとばっちりだ、そんなのアリか。
必死に弁明しようとしたが聞き入ってもらえなかった。その様子を見たスォンナさんが、「コイツのこういう思い込みが激しいところが嫌いなんだ」と呟いたところを私は見逃さなかった。




