はぁ?どうしたんですか
「どうしました!?」
悲鳴の元へ駆けつけると大きな穴が床に開いていた。周りを見ると例の光る苔が生えている。
「苔を集めようとソレッティさんがあそこに移動したんだ、そしたら」
「穴に落ちた?って、あんなに大きな穴…」
話していて気がついた。恐らく落とし穴だろう。流石にあのように大きな穴、気がつかないわけがない。
穴から下の様子を覗いてみる。どうやらそこまで深くはないようだが、不意に落ちてしまったのならば怪我をしているかもしれない。
「ソレッティさん!大丈夫ですかー?」
肉眼では様子が確認できないため声をかけると、返事はすぐに返ってきた。
「えぇ。でもちょっと足を挫いちゃって。登るのは難しいかも」
返事の内容はそういったものだったが、声に苦しさは感じない。どうやらそこまで切迫した状態でもなさそうだ。
救出に行きたいが、方法と人員はどうするか。足を挫いたと言うならば彼女自身が上まで来ることは難しいだろうから、誰かが下に行き上まで登る、または上から釣り上げる必要があるだろう。
とりあえず下の様子を確かめるためにいつものように灯りをつけた。しかしこれは、どうやら登るのは難しそうだ。というのも下は空洞になっていて、登れるような壁がない。
こうなると一旦誰かが下に降りて助ける方法が無難か。助けるとしたら、やはり私だろうか。以前教会に侵入した時のようにソレッティさんを背負って風の魔法で…。
いや、天井が高くないこの場所で使えば頭をぶつけてしまいそうであまり使いたくはないな。他の方法は…。
「あ」
そうだ。あまり使ったことはないが、あの魔法があった。あれなら下に人を送れば、安全に引き上げることができるだろう。ならばその人選だが…。
「なんだ?」
スォンナさんだけはないだろう。そもそも行きたがらないだろうし。
「こっちを見て変な顔をするな。で、ソレッティが落ちたのか?」
「近寄ってはダメです。どうせ唾でも吐く気でしょう?」
「わたしがあいつに近づく度に警戒するのはやめろ。それで、奴を引き上げればいいのか?」
「はぁ?どうしたんですか」
一瞬自分の耳が壊れてしまったのかと思ったが、そういうことでもないらしい。スォンナさんは私が何かを言う前に下に飛び降りていった。アルコールが入っているはずなのに軽やかな身のこなしだ。
というか、私はまだ何も説明していないのだが。まさか自分から助けに行くとは思わなかった。これにはドリーさんも驚いているみたいだ。
「それで?ここからどうやって上がればいいんだ?」
「え、あ、はい。今から植物の魔法で蔦を這わせるので、それをロープ代わりに登ってきてください」
「そんなこともできるのか?器用なことをするな」
感心するスォンナさんの方へ向けて魔法を放ち、私の右手から蔦を出す。念のため二人の様子を観察していたが特に喧嘩をすることもなく、いがみ合いをすることもなく、私の魔法を使って上の階まで戻って来たのだった。




