良いお酒が飲めそうだなと
無事100話目まで行きました。
色々投稿時間などは守れていないですが、これからも完結まで目指して頑張ります。
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洞窟の奥へと進むたびに、段々とじめじめとした空気が広がって来た。太陽の光が全く届かないせいだろうか。次第に私やドリーさんが作る火の玉だけが、文字通り希望の光になっていった。
「こんなに湿度が高いとカビでも生えてしまいそうだな」
「あんたの脳みそには生えてるようなものでしょー?」
「お互い様だろうがー」
そんな中歩いていたら疲れも出て来るというものだ。彼女らの姉妹喧嘩を止める気もなくなってくる。というより、遠くにいる相手に向かって話し始めるくらい元気なこの二人の体力が異常なのだ。
だが疲れるだけ歩いたこともあり、地図は概ね完成しているだろう。分かれ道は段々と減り、今は一本道を歩いている状態だ。
このまま道が分かれてなければ、この道が終わる頃に地図の作成が終わるだろう。光る苔は未だ見当たらないが、きっとこの道の奥にあるのだろう。多分。
「しかし、こう何もないと期待をしてしまうな」
隣で歩くスォンナさんがボソッと不穏な言葉を呟く。
「何を?」
「こんなに静寂が続いているんだぞ?壊れる時は派手に壊れて欲しいだろうが」
「やめてください。ただでさえ最近、望んだことと反対の出来事が起きるというのに」
「なら騒音を望んだらどうだ?」
「心の底から望むことができるでしょうか…」
いや、無理だろうな。
何故か段々と気分が高揚していくスォンナさんとは裏腹に、私の気分は段々と冷めていった。疲れのせいだ。間違いない。
「天井が急に爆破したりしないだろうか。それか謎のガスでも蔓延して、気を失って全滅でもいいな」
「何でそんなに破滅思考をしているんですか」
「生きてるのが嫌になればそんな考えにでもなるさ」
そんな言葉にふと足が止まってしまった。急に彼女の考えがわかってしまったからだ。
「どうした?」
「いえ、貴女とは良いお酒が飲めそうだなと思いまして」
「ふぅん」
スォンナさんはいつものような意地悪い笑みではなく、心の底からの優しい笑顔を浮かべて私の肩を抱いた。姉妹喧嘩をする時とも違う、友人を見つめるような瞳だった。
「一瞬腐った目をしてたぞ」
「貶してます?」
「わたし好みだ。ここから出たら、一杯なら奢ってやる」
「お金、ないでしょうに」
「なければ稼げばいい」
「正規の手段ですよね?」
「金稼ぎに正規も非正規もあるか。偽造のコインでなければ、どっちも金だ」
「そんな考えは良くないと思いますが」
…そういえば、段々この人との会話が長続きするようになってきたような気がする。もしかして、私もこの人と気が合うのだろうか。気が合うような気がして来た。
「おーい、後列の二人!」
しばらく聞いていなかった声が聞こえた。ドリーさんだ。先ほどまで私と同じように疲れ切って一言も話していなかったというのに、あんなに声を張り上げてどうしたのだろうか。
「例の光る苔が見つかった!最奥地まで来たみたいだから、地図作成も終わりだよ!」
軽やかな声を聞き、ようやくゴールを迎えたことを実感する。地図の作成が終われば、後は来た道を戻るだけだ。結局モンスターとはあまり戦わずに済んだし、誰も怪我をせずに終わったな。
「残念だ。何も起きなかったか」
はぁ、と大きな溜息が隣から聞こえた。今の私は、何も起きなければそれで良いと考えている。どうやら昔ほど破滅思考ではなくなったようだ。
「うわぁ!?」
しかし、やはり私の望んだことと反対の出来事が起こってしまうようだ。明らかに先ほどまでとは違う、戸惑いの声が、遠くの方から聞こえたのだ。




