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ほほえみ社長  作者: とみた伊那
22/54

22.郵便事件

ここは一つのビルに

  夢野薬局

  夢野整体院

  夢野家自宅

が入っている。したがってビルの入り口には、それぞれ『夢野』の名前の付いたポストが三つ並んでいる。


 このポストは普段から郵便の入れ間違いが多い。郵便屋さんが『夢野』の名札のところに適当に何でも入れてしまうからだ。


 薬局の仕事として、レセプトのために必要な書類を毎月役所から送ってもらっている。

 どうもその書類が届いていないので、一応社長に聞いてみた。社長はおもむろに事務所に戻ると、いつもの笑顔で

「ああ、ここにありました。他の郵便と一緒になっていて、気がつきませんでした。すみませんねえ。ではこれで、よろしくお願いします」

 と、封を切っていない封筒を差し出した。

 これは普通なら遅くても三日前には届いていたはず。日頃から嫌なことからは目をそらす生き方の社長である。となると、毎日届いているはずの請求書とか請求書とか請求書は、こうやって一切中も見ないで積んであるのであろうか。


 その結果として、こちらの仕事が邪魔されている!


 この場合、障害となるものが社長だけならまだ良かった。

 毎月書類を送ってくれるはずの役所が、きちんと正しく書類を送ってきたことが一度も無い。

「○○さんの書類が入っていないのですか? それは私の担当ではないので。担当者は今、いないので分かりません」

「あれ? 送ったはずなのに。あ、ここにあった。じゃあ、これから送りますね」

 などという役所とのやりとりが毎月あった。


 そして郵便屋さんは、相変わらず『夢野』であれば適当にポストに入れ続ける。

 あまりに入れ間違いがひどいので『ちゃんと名札を見てポストに入れてください』とポストに貼り紙をしておいた。すると『名札をちゃんと付けてください』と、逆切れの貼り紙が……。

  夢野薬局

  夢野整体院

  夢野大洋

 と分けて書いているのに。


 そして間違ってポストに入れられた郵便は、社長の事務所の机に積まれ、埋もれていく。


「また今月も、書類が届いていない。レセプトができない」

「社長のところに行ってないか、聞いてくる」

「社長のところには今回は無かった」

「じゃあ、役所に電話して聞いてみる」

 私は受話器を取り上げた。

「……この電話は、絵お客様の都合により、お繋ぎすることができません」

 しまった!

 今度は電話料金の未納だ!


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