22.郵便事件
ここは一つのビルに
夢野薬局
夢野整体院
夢野家自宅
が入っている。したがってビルの入り口には、それぞれ『夢野』の名前の付いたポストが三つ並んでいる。
このポストは普段から郵便の入れ間違いが多い。郵便屋さんが『夢野』の名札のところに適当に何でも入れてしまうからだ。
薬局の仕事として、レセプトのために必要な書類を毎月役所から送ってもらっている。
どうもその書類が届いていないので、一応社長に聞いてみた。社長はおもむろに事務所に戻ると、いつもの笑顔で
「ああ、ここにありました。他の郵便と一緒になっていて、気がつきませんでした。すみませんねえ。ではこれで、よろしくお願いします」
と、封を切っていない封筒を差し出した。
これは普通なら遅くても三日前には届いていたはず。日頃から嫌なことからは目をそらす生き方の社長である。となると、毎日届いているはずの請求書とか請求書とか請求書は、こうやって一切中も見ないで積んであるのであろうか。
その結果として、こちらの仕事が邪魔されている!
この場合、障害となるものが社長だけならまだ良かった。
毎月書類を送ってくれるはずの役所が、きちんと正しく書類を送ってきたことが一度も無い。
「○○さんの書類が入っていないのですか? それは私の担当ではないので。担当者は今、いないので分かりません」
「あれ? 送ったはずなのに。あ、ここにあった。じゃあ、これから送りますね」
などという役所とのやりとりが毎月あった。
そして郵便屋さんは、相変わらず『夢野』であれば適当にポストに入れ続ける。
あまりに入れ間違いがひどいので『ちゃんと名札を見てポストに入れてください』とポストに貼り紙をしておいた。すると『名札をちゃんと付けてください』と、逆切れの貼り紙が……。
夢野薬局
夢野整体院
夢野大洋
と分けて書いているのに。
そして間違ってポストに入れられた郵便は、社長の事務所の机に積まれ、埋もれていく。
「また今月も、書類が届いていない。レセプトができない」
「社長のところに行ってないか、聞いてくる」
「社長のところには今回は無かった」
「じゃあ、役所に電話して聞いてみる」
私は受話器を取り上げた。
「……この電話は、絵お客様の都合により、お繋ぎすることができません」
しまった!
今度は電話料金の未納だ!




