23.ダンディー動く!
給料の未払いがあった二週間後、給料の半額が支払われた。しかしその次の給料日は、全く支払いが無かった。給料の未払分は一か月半と増えていった。
給料日の次にやってくるのは、問屋への薬代の支払い期限である。先月、請求のためにやってきた問屋の営業所の所長のダンディー黒岩に対し、お互い社長からもらうべきものをもらったかどうかを、あやふやなままやり過ごしてしまった。
再びやってきたダンディーは異様に暗い私たち二人を見て
「もしかして、給料が出ていないのか」
と聞いてきた。先月はうやむやに答えたが、さすがにここまでくると私たちも首を縦に振った。
「大変だ! 」
この従業員への給料の支払いの有無が、会社の存続を判断する目安としていたらしい。
ダンディーは私たちへの挨拶もそこそこに、営業所へ飛んで帰った。
もうこの頃になると、私たち二人もこの薬局にいつまでもとどまることは考えていなかった。ただ、定期的に薬を取りにみえる患者さんもいる。医療機関というものは、そう簡単に明日からシャッターを閉めておしまい、という訳にはいかない。
私たちは幕の引き方を考えていた。
その日以後、ダンディーは社長のいる事務所に行っても、帰りにこちらへ寄って
「どう、患者さん来てる? 」
などと聞くことはなくなった。
その代わり、今まで以上に事務所には行っているらしい。
支払いが滞っている今、問屋はいつまで薬を納品してくれるのか。
今の状態はいつまで続くのか。
状況を聞くため、私たちは何度かダンディーのいる営業所に電話してみた。
「夢野薬局ですが…」
「あ、今、所長はちょっと出ていますので分かりません」
普通ならば
「代わりにご用件を承っておきます」
というはずの言葉が無い。
何となく分かってきたことは、問屋の営業所の所長でありながら、営業所の業務とは別にダンディーが個人的に動いているらしい。
全てのことは営業所に聞けば分かるのではなく、黒岩に聞かないと分からないことになっているようだ。




