5.壊れる鍵
次の日、いつものようにユウを見送ると、マリアは出掛ける準備をして部屋の玄関を開けた。
「おや?出掛けるのかい?」
「ツネさん!」
玄関を出たところで、同じアパートに住む年配の女性、ツネに会う。ツネは一階の部屋に住んでいるので、あまり二階まで登ってくることはない。
ツネが二階まで登ってくるときは大体決まっている。
「良かったら大根を沢山もらったからお裾分けに来たんよ」
ツネが笑顔でそう言葉を綴りながら、大根が入った袋をマリアに差し出す。
「いつもありがとうございます」
マリアがお礼を述べながら大根が入った袋を受け取る。
「あっ!そうそう、ツネさん。この前は球根をありがとうございました。今、鉢に入れて育てています」
「そうかい。綺麗に咲くとええな~」
マリアの言葉にツネが微笑みながらそう言葉を綴る。
そして、ツネが戻っていき、マリアは一旦部屋に入り、頂いた大根を冷蔵庫にしまうと、アパートの外に出た。
(良かった……いないみたい……)
周りをぐるりと見渡したが、例の男がいる気配は無かったので、安堵の息がマリアの口から洩れる。
そして、アキの勤めている大学に向かうために最寄りの駅に向かって歩きだした。
***
「……ふぅ、何も出てこないな」
モトキ警部がそう声を出す。
モトキ警部とサザワ刑事は連日に渡り、犯人に繋がる手掛かりがないかを調べるためにシマノの部屋を捜索しているが、未だに何も犯人と結びつきそうな物は出てこない。
「……やはり、何か手掛かりがあるとしたらコレですかね?」
サザワ刑事がノートパソコンを指差しながらそう言葉を発する。
「これを署に持ち帰って調べてみるしかなさそうだな」
モトキ警部がため息を吐きながらそう言葉を綴る。
パソコンに何か手掛かりがあるかもしれないと思い、電源を入れて確認しようとしたらロックが掛かっており、解除するためにはパスワードが必要だった。試しにいろんなパスワードを入れようという話も出たが、場合によっては何度もパスワードを間違えると、しばらく使えない状態にもある可能性があるので、他の何かで犯人の手掛かりになるものを見つけようという事だった。
しかし、やはり何も犯人に繋がりそうなものが出てこないので、そのノートパソコンを調べるために、署に持ち帰っていった。
***
「おっ!いらっしゃい!」
大学の研究室にやってきたマリアにアキがコーヒーを片手にそう声を出す。
「久しぶりだね、アキちゃん」
マリアが微笑みながらそう言葉を綴る。
アキはよく研究室で寝泊まりしており、今日も研究室で朝を迎えたらしく、来ている白衣は所々に皺が寄っている。肩まである髪は乱雑に一括りしており、その様子から研究一筋という事が伝わってきた。
「ユウ君との暮らしはどうなの?相変わらず仲良くやってる?」
アキがマリアを研究室にある椅子に座らせて、その近くのテーブルに腰掛けながらマリアの近況を笑顔で聞いてくる。
「うん!仲良いよ!」
マリアが満面の笑顔で嬉しそうにそう言葉を綴る。
「それは良かったよ。まっ、私も会ってみてこの人なら大丈夫って思えたからね。その前の相手は殺してやりたいくらいだったけど」
アキが前の相手を思い出しているのか、ちょっと嫌な顔をしながらそう言葉を綴る。
「まぁ、もう昔の事だし、今幸せだから大丈夫だよ」
マリアがその相手の事はもう気にしていないのか、微笑みながらそう言葉を綴る。
そして、たわいのない会話をしながらアキと時間を過ごす。
アキが行っている生物学の研究の事や、マリアのユウとの暮らしであった出来事を話していく。
「……幸せな事は良いことだよね。ただ、マリアは優しいところもあるからユウ君がヤキモチ妬くのも分かる気するわ」
アキが笑いながらそう言葉を綴る。
「でも、そこは私も心配かな?マリアは優しい分、変な人に好かれるところがあるから」
アキの綴る言葉に、マリアの表情が曇る。
「……どうしたの?」
マリアの表情に気付いたアキがマリアに声を掛ける。
「……実は……」




