4.暗闇の中の思い
一方、モトキ警部とサザワ刑事がシマノの事を調べた結果、住んでいる場所が分かったので、その場所に向かった。
シマノはワンルームの部屋に一人暮らしで、仕事は日雇いの仕事をしているという事が分かった。
「ここですね」
サザワ刑事が「102」と書かれた部屋の札を見てそう声を出す。
「うっわ~……」
部屋に入ると同時にその部屋を見て、サザワ刑事があまりの雑然さに声を発する。
部屋の中は、そこら中にゴミ袋が置かれており、そのゴミ袋の中には空のビール缶やつまみの空袋が入っている。冷蔵庫を確認すると、中に入っていたのはビール、ワイン、チーズ、といった物しか入ってなくて、部屋の隅にはウイスキーの大きなペットボトルが置かれている。
「被害者はアルコール依存か何かか?」
部屋の中にある大量のお酒を見て、モトキ警部がため息交じりにそう言葉を綴る。
「それは分からないですが……」
サザワ刑事が部屋を捜索しながら、そう返事をする。
ワンルームの部屋の中には、敷いたままの布団に小さなローテーブル、ノートパソコン、小さなテレビが、どれも埃を被っている状態で、掃除というのを全くしていないような有り様だった。
「よくこんな埃の上で寝ていられますね」
布団にも薄っすらと埃が被っているので、サザワ刑事が呆れたようにそう言葉を綴る。
「とりあえず、犯人の手掛かりになるものを探していこう」
モトキ警部がそう言葉を綴り、サザワ刑事と二人でその部屋を捜索していった。
***
「……はぁ~、やっぱ美味しい~」
ユウが帰って来ていつものようにマリアと二人で夕飯を囲んで食べていると、ユウが魚のムニエルを口に頬張りながら、嬉しそうな顔でそう言葉を綴る。
一方、マリアは夕飯を口に運んでいるが、その表情がどこか暗い。
「マリア?大丈夫?」
マリアの表情にユウが気付いて、心配そうに声を掛ける。
「その……」
マリアが箸を止めて、そう声を出す。しかし、上手くその言葉の続きを紡ぎ出すことが出来ない。
「どうしたの?何かあったの?」
マリアの顔がどこか恐怖におびえているような表情だったので、ユウが心配になりながら声を発する。
「実は……」
マリアが例の薄汚れた男にストーカーのようなことをされている事を話す。今日も買い物の帰りにその男を見た事を話していくが、家まで来ていたことは話さなかった。
余計な心配を掛けさせたくない……。
マリアの中でそう感じたので、その事は黙っておくことにしたのだった。
「じゃあ、その男は全然知らない人……ってことだよね……?その事、警察には話してないの……?」
ユウがその話を聞いて愕然としながら、声をわなわなと震わせたままそう言葉を綴る。
「交番に行ってその人の話はしたのだけど、手を出されたわけでは無いから今の段階では何もできない……って、言われて……」
「そんな……」
マリアの言葉にユウが呆然とする。
自分は仕事があるからマリアの傍にいることは出来ない……。
でも、もし仕事に行っている間にマリアに何かあったら……。
ユウの中でそんな不安がグルグルと渦巻く。何か手を打つために、警察に行っても今の段階では相手にしてくれないかもしれない。そうなると、マリアの事を守るために何をしたらいいのかが分からない。
近くに頼れる人もいない……。
どうしたらいい……?
どうしたらいい……?
いくら考えても答えが出ない……。
迷路に迷い込んだネズミのように何を頼ればいいかが分からない……。
「……とりあえず、何かをしてきているわけでは無いから大丈夫だと思う……。なるべく周囲には気を配っておくね」
マリアが力なく微笑みながらそう言葉を綴る。
「……分かった。でも、何かあったらすぐに言うんだよ?」
「うん……ありがとう……」
ユウが今の段階では何もできないと感じたので、その言葉が精いっぱいだった。何も起こらないことを祈るしかないと思いつつも、何か出来る事があるかを考える。
その時だった。
――――ピコン!
マリアのスマートフォンがメールの受信を知らせる。
メールを開けると、アキからのメールだった。アキはマリアの大学時代からの友人で、今は大学の研究室で働いている。メールの内容は研究に一区切りがついたから、良かったら久々に明日にでも遊びに来ないかという内容だった。
「……行ってきてもいい?」
今の状況があるので、マリアが申し訳なさそうな顔をしながらユウにそう尋ねる。
「まぁ、ちょっと心配だけどね……。でも、折角だし行っておいで」
「ありがとう、ユウ!」
ユウの言葉にマリアが笑顔を見せる。
「でも、周りには十分に気を付けて行ってきてね。何かあったらすぐに電話するんだよ?」
「うん!」
そして、マリアはアキからのメールに行くことを伝えて、スマートフォンを閉じた。




