29.絶望の中の願い
「………綺麗だね」
夕日に照らされてキラキラと光る海を眺めながら、マリアがそう小さく呟く。
「寒くない?大丈夫?」
ユウがマリアを抱き寄せながらそう言葉を綴る。
「うん、大丈夫だよ。ユウが暖かいから大丈夫……」
マリアがそう言葉を綴りながらユウに抱き付く。
あの後、二人は電車に乗り、三重県の志摩に来ていた。そして、民泊をしているという宿に泊まり、その近くに海があるので、荷物を部屋に置くと、ユウとマリアは海を見にやってきた。
海に溶け込むように沈んでいく夕日をユウとマリアは静かに眺めている。
「マリア……ずっと一緒にいようね……」
ユウがマリアを抱き寄せながら、海を見つめたままポツリと呟くように言葉を綴る。
「うん……一緒だよ……。ずっと、ユウと一緒だよ……」
マリアも海に視線を向けたままユウの腕の中でそう小さく言葉を綴る。
やがて、夕日が海に沈んで辺りが暗闇に包まれる。空には月と沢山の星が宝石箱のようにキラキラと輝いており、海と空が一枚の絵のような情景が溢れてくる。
『捕まるのは時間の問題かもしれない』
ユウの心の中でそんな思いが駆け巡る。
でも、あと少しだけ……。
少しでも長くこの時間が続いて欲しいと願う……。
そんな思いを巡らせながら、辺りは宵闇に包まれていった……。




