28.偽りの日常の中に入るヒビ
店に着いて自動ドアをくぐる。
「い……いらっしゃい……」
店主がユウとマリアがやって来たことを確認すると同時にぎこちない声を出す。
その時だった。
「…………ユウ、今日は違う店にしよ」
「……え?」
マリアが何かを感じ取ってユウにそう声を掛ける。
そして、ユウの腕を引っ張ってその店を出て行く。
「マリア?どうしたの?」
マリアに腕を引っ張られながらユウがマリアにそう尋ねる。
「……ユウ、多分警察に私たちがここにいることバレているかもしれない」
「?!」
マリアの言葉にユウが驚きの顔をする。
「店主さんが私たちが店に来て様子がいつもと違ったでしょ?きっと、あの店に私たちの事を聞きに来た刑事か何かがやって来たんだと思うよ。多分、このままこの町にいたら捕まる可能性がある……。だから、今日中にこの町を離れた方がいい……」
「……分かった。ここを離れよう」
マリアの綴る言葉で、店主の様子がおかしかったことに納得のいったユウがそう応える。
そして、急いで部屋に戻り、大急ぎで鞄に荷物を詰め込むとその部屋を出て行く。そして、部屋を貸してくれた一階に住む大家のポストにある程度まとまったお金と部屋を貸してくれたお礼の手紙を封筒に入れて、その場所を離れていった。
***
「………分かりました。ご協力ありがとうございます」
サザワ刑事が店主にそう言葉を綴りながら頭を下げる。
モトキ警部とサザワ刑事が来た夜にユウとマリアが来たのだが、マリアが何かを感じ取ったのか、何も注文しないまま店を出て行ったとのことだった。店主は指紋を取ることが出来なかったことに平謝りをしていたが、サザワ刑事は「大丈夫ですから、気にしないでください」と言って、店主が自分を責めないように配慮していた。
そして、その場にいるモトキ警部と共に、その店の外に出る。
「どうやら奥さんは相当勘が鋭い人みたいだな……」
モトキ警部が深く息を吐きながらそう言葉を綴る。
「……だとすると、他の地域にまた逃亡した可能性がありますね」
サザワ刑事が唸るような声を出しながら、そう言葉を綴る。
マリアたちが、自分たちをこの地域に探しに来た可能性があると分かって、この地域に居続けることは考えにくい。他の場所に向ってしまった可能性は十分にあり得る。
そうなると、次に逃亡した場所を探らなくてはならない。もし、郵便局の通帳でこの地域にいる事を勘づかれていたとしたら、同じ手を使っても見つけることは難しい。
モトキ警部とサザワ刑事が店の前でどうやってユウたちを追うかを話し合う。
その時だった。
「あら!いらっしゃい!」
店の奥さんが現れてモトキ警部たちに笑顔で声を掛ける。
「外で話してないで中に入ってくださいな!」
奥さんが笑顔で二人にそう声を掛ける。
「いえ、自分たちはちょっと用事でここに来ただけなので……」
サザワ刑事がやんわりとそう言葉を綴る。
「そうなの?うちは常連客が多いから新規のお客さんは歓迎だよ!良かったら何かサービスするしね!」
奥さんが笑いながら二人に笑顔でそう声を掛ける。
「……そういえば、奥さんはこの二人をご存じですか?」
サザワ刑事が写真をポケットから取り出して、奥さんに見せる。
「あら?映っているのって……」
サザワ刑事が見せた写真を見て、奥さんがそう声を発した。




