27.懐かしい記憶、そして……
「……この近くに住んでいるの?」
和食屋の奥さんが笑顔でユウたちに声を掛ける。
「えっと……まぁ、近くと言えば近くですね……」
ユウが咄嗟に口からそう言葉を発する。
「私は友達の家に呼ばれて今帰り道なんだけどね。……そういえばなんか嬉しそうに話をしていたけど何を話していたの?」
奥さんが興味津々で聞いて来る。
「新婚旅行で行った場所の話ですよ」
マリアが笑顔でそう言葉を綴る。
「あら♪それは良いわね♪何処に行ったの?」
奥さんがマリアに笑顔で尋ねる。
「ふふっ。それは私と旦那さんだけの秘密です」
マリアが笑顔でそう返事をする。
「おやおや、妬けちゃうね~。二人だけの秘密ってわけね」
「はい♪」
奥さんの言葉にマリアが微笑みながら返事をする。
「じゃあ、また店に食べに来てね!」
奥さんは二人にそう声を掛けると、その場を去って行く。
「…………び……びっくりした…………」
奥さんが去ったのを見届けると、ユウが大きくため息を吐く。
自分たちが逃亡していることがバレて何かを探りに来たのかと勘繰ったせいで、ユウは奥さんの言葉にしどろもどろになってしまった。しかし、マリアが上手くカバーをしてくれて、奥さんもそれ以上は何も聞いてこなかったことに安堵する。
「……多分、あの人、何も知らないと思うよ?スマートフォンはアパートに置いてきているから居場所を特定するのは難しいと思うし……」
マリアが滑り台から降りて来て、ユウの背中を擦りながらそう言葉を綴る。
「多分、おしゃべりが好きなだけじゃないかな?知りたがりの人って世の中にはいるしね」
マリアが「大丈夫だよ」とでも言うようにユウの背中を擦りながらそう言葉を綴る。
「……でも、また行けるなら行きたいな……海、凄く綺麗だったし……」
マリアの口から出ている言葉は新婚旅行で行った場所の事を言っているのだろう……。
「そうだね……行けるなら行きたいね……」
その言葉にユウがマリアの肩を抱きながら、小さな声で綴った。
***
「……指紋を……って……なんでまた……」
サザワ刑事の言葉に店主が愕然としながら絞り出すように声を出す。
「あの夫婦は何か事件の容疑者かなんかなのか?」
店主の表情からは「信じられない」とでも言うような雰囲気が伝わってくる。
「詳しいことは話せません。ですが、宜しければ協力して頂けないでしょうか?」
サザワ刑事の言葉に店主はすぐに返事が出来ずに固まっている。
「あんな仲の良い夫婦が……事件だなんて……」
店主はよっぽど信じられないのか、呆然としながらそう言葉を綴る。
「二人が使った食器を一つずつで良いので、我々が次に来るときまで取っておいてもらいたいんですが……」
サザワ刑事の言葉に店主が力なく頷く。
「それと、二人が何処に住んでいるかを聞いたことはないですか?」
「いや……それは全く分からないです……」
「そうですか……」
店主の言葉にサザワ刑事が肩を落とす。もしかしたら、どこに身を隠しているのかが分かるかもしれないと思ったが、そこまで話はしていないという事だった。
そして、また日を改めて来ることを伝えて、モトキ警部とサザワ刑事はかけ蕎麦を食べ終えると、その店を出て行った。
***
「……そろそろ夕食に行く?」
「うん!いつもの所がいいな!」
ユウの言葉にマリアが笑顔で例の和食屋に行きたいことを伝える。
そして、電車に乗り、主要の駅で降りてその店に向かった。




