22.檻の中で誓う愛
「……地平線が凄いね」
マリアが海を眺めながら、そう言葉を発する。
ユウの提案で「ちょっと遠出してみようか」という話になり、ユウとマリアは電車を少し乗り継ぐと、適当なところで駅を降りた。
降りた駅は無人駅で、駅員はおろか、誰もその駅で降りる人も乗る人もいない少し錆びれた駅だった。
その地域をユウとマリアは手を繋ぎながら歩いていると、潮の匂いが漂ってきたので、近くに海があるかしれないという事になり、そちらの方向に足を進めていった。すると、急に視界が開けて、ユウとマリアの目の前に大きな海が現れたのだった。
その浜辺の近くにベンチがあったので、二人は並んでそのベンチに座り、手を繋ぎながらマリアはユウの肩に頭を乗せていた。
「あの地平線の先って別の国があるんだよね?」
マリアが地平線の先を指差しながらそう言葉を綴る。
「そうだね。海外なんて行ったことないからどんな感じか見当つかないけど」
ユウが微笑みながらそう言葉を綴る。
「異国ってなんだか憧れるな……」
マリアが地平線の先にある国を想像しながら、そう言葉を綴る。
「僕はこの国が良いかな?海外ってなんか怖いイメージがあるし」
ユウは異国に憧れは無いらしく、困ったような顔をしてそう言葉を綴る。
「異国に行けたらいいのにな……」
マリアがポツリとそう呟く。
その言葉にユウはどう返事をしていいか分からない。
きっと、マリアのその言葉の意味は逃げ隠れする状況から解放されるかもしれないという想いがあるのだろう……。
そんなこと出来るわけないと分かっていても、そう願ってしまう……。
だから、その言葉にユウは何も言うことが出来ない……。
静寂が流れる……。
耳に響く波の音……。
大空を優雅に飛んでいる鳥の姿……。
あの鳥のように自由になれたらどれほど楽だろうか……?
あの鳥のように自由に飛べる翼が自分にもあれば……。
でも、それは叶わない願い……。
「……少し海沿いを歩いてみようか」
「うん」
ユウの言葉に二人は手を繋いだまま浜辺をゆっくりと歩く。
浜辺を歩きながら、ユウもマリアも口を開かない。
でも、離れ離れにならないようにお互いの手はしっかりと握っている。
「ねぇ……ユウ……」
沈黙をマリアが破り、小さく声を出す。
「ずっと……ずっと……一緒にいようね……」
マリアが歩みを止めて何処か懇願するように小さく言葉を綴る。
「うん……一緒だよ……。ずっと……ずっと……傍にいるよ……」
ユウが小さく言葉を綴りながらマリアの身体を抱き締める。
「僕はずっとマリアの傍にいる……。生も死もずっと一緒だよ……」
「うん……」
「大丈夫……マリアを独りになんかさせない……。ずっと……傍にいるからね……」
「うん……。ユウ……ユウ……大好き……」
マリアの瞳から涙が零れ落ちる。
「僕も大好きだよ……マリア……」
ユウがマリアを更に強く抱き締めながら、そう言葉を綴る。
いつかは来る終わり……。
逃亡は永遠には続かない……。
ユウとマリアが抱き締め合う……。
離れ離れにならないように……。
強く……。
強く……。
優しい波の音が響く……。
どこか悲しいメロディーを響かせながら…………。




