2.見えない鎖
ある日の昼間、海辺に遺体が転がっていた。その連絡を受けて、モトキ警部とサザワ刑事がその現場に訪れる。そして、その遺体を見てモトキ警部がそう口を開いた。
「モトキ警部!被害者の名前が分かるものがありました!」
サザワ刑事が何かのカードを手にそう声を出す。
遺体は男で、背中には何かで刺された跡と頭を強打された形跡が見つかった。死に至ったのは強打された頭の方が致命傷だと鑑識が答える。そして、被害者が着用していたズボンから財布が見つかり、その中にあるポイントカードに名前が書かれていた。
「被害者の名前は、シマノという名前ですね。他の所持品は見つかりません」
サザワ刑事が遺体を調べながらそう言葉を綴る。
「携帯電話は無いのか?」
今の時代なら携帯電話の類を持っていてもおかしくないので、モトキ警部がそう声を発する。
「多分、海に投げ出されたのではないでしょうか?」
シマノの内ポケットをまさぐっても出てこないので、サザワ刑事がそう言葉を綴る。
「免許証は?」
「入っていません」
モトキ警部の言葉にサザワ刑事がそう応える。
他にも財布を探ってみたが、シマノの住所が分かるようなものは一切入っていなかったので、名前を頼りにシマノの事を調べる事になった。
***
「……あ、そろそろ行かなきゃ」
マリアが時計を見てそう声を出す。
いつものようにユウを見送ると、マリアは家の掃除を始めた。そして、今日は近所のスーパーの特売日なので、それに行くための準備を始める。
「はぁ~……」
マリアがスーパーに行く準備をしながらため息を吐く。
その表情には不安とどこか怯えのようなものが入り混じっている。
「大丈夫……だよね……?」
不安な表情をしたまま、小さくそう声を出す。
出掛けることに不安はあるが、特売日にしか手に入らないものもあるので、出掛けないわけにはいかない。しかし、心の奥底にはある事の恐怖がふつふつと湧き上がってくる。
深淵から這い上がってくるような恐怖……。
「大丈夫……大丈夫……」
マリアが必死で祈るように、小さく何度も言葉を繰り返す。
そして、マリアは近くのスーパーに出掛けて行った。
***
「おっ!今日もですか~!」
ユウの仕事場の同僚であるクロイが、ユウが持ってきたお弁当を見てそう声を発する。
「ウインナーあるじゃん!一個くれ!」
クロイがそう言ってユウに手を差し出す。
「ヤダ」
ユウが淡々と御弁当を頬張りながら一蹴する。
「いいよな~、愛妻弁当~。毎日だもんな~。妬けるな~。可愛い笑顔の奥さんの愛妻弁当~」
クロイが「くれ!」と言うように、箸をカチャカチャと音を立てながらユウに言葉を並べたてる。
「誰にもあげるわけないじゃん」
ユウがお弁当を黙々と食べながらそう返事をする。
「ちぇー、けちんぼー。一つくらい分けてくれてもいいだろ。俺なんて今日もコンビニ弁当なんだぜ?哀れな俺に恵んであげようって気は無いのかよ?」
「ない」
クロイの言葉をユウは間髪開けずにそう言い放つ。
「最愛の奥さんが作ってくれた弁当は俺だけのものだってか?」
「当たり前じゃん」
クロイが放ってきた言葉にユウは「当然」とでも言うような表情できっぱりとそう声を発する。
「……相変わらずラブラブな事で……」
クロイもそれ以上は言う気を無くしたのか、ため息を吐きながらコンビニの御弁当を食べ始めた。
***
「えーと……これで全部かな……?」




