プロローグ&1.幸福の裏にある闇
~プロローグ~
「…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
高い崖の上から一人の男が海に向って落下していく。
そして、崖の上からは黒い煙が立ち上がっている。
一体何がったのだろうか?
事故なのか……?
殺人なのか……?
これは愛を貫いた鳥の悲しく切ない物語…………。
1.
「……ふぅ、これで良し!」
マリアが付けていた軍手を外しながら、そう声を発する。
アパートに設置されている小さなベランダで、マリアはチューリップの球根を植えていた。
そして、部屋に戻りそのまま夕飯の支度を始める。
――――コトコトコト…………。
夕飯のメニューである具沢山スープの鍋が美味しそうな匂いを放ちながら火に揺られている。
その合間に他のメニューも手際よく作っていき、時計を見ながらメインである肉を焼き始める。
そして、夕飯が出来上がり、キッチンにあるテーブルに夕飯をセッティングしていくと、そこで、玄関を開く音が聞こえた。
「ただいま~」
「あっ!おかえり、ユウ!」
マリアが嬉しそうな声を出しながら、帰ってきたユウに抱き付く。
「夕飯、出来ているよ!」
マリアがそう言ってユウをキッチンの方に引っ張っていくと、テーブルにはいつものように夕飯が並んでいた。
そして、二人が向かい合わせになるように椅子に腰かけて、いつものように「いただきます」と言って食べ始める。
「……やっぱりマリアのご飯って最高~」
ユウが夕飯を満面の笑みで頬張っていく。
「今日もお仕事お疲れ様でした!あっ、ビールはどうする?」
「じゃあ、頂こうかな?」
ユウの言葉にマリアが返事をして、ビールをグラスに注いでユウの目の前に置く。
「……はぁ~、最高だな~。美味いご飯に冷えたビール……。やっぱり、家でこうやってマリアの作るご飯が最高のひと時だよ~」
ユウが笑みをこぼしながら夕飯を食べていく姿を、マリアは嬉しそうに眺めていた。
「ふふっ……」
「どうしたの?」
マリアが嬉しそうに声を出したので、ユウが頭にはてなマークを浮かべながらそう声を出す。
「ユウは私の作るご飯を美味しいって言って食べてくれるから、本当に嬉しいなって思って……」
マリアが笑顔でそう言葉を綴る。
「だって、本当に美味いからね!こんな美味いご飯を食べられる僕は幸せ者だな~って思うんだ」
ユウが顔を綻ばせながら、そう言葉を綴る。
「ありがとう、そう言ってくれて。ユウがそう言ってくれるから、私もご飯作りが楽しいんだ」
マリアがニコニコと嬉しそうにそう言葉を綴る。
「……その笑顔、反則だ……」
マリアがニコニコしている顔を見て、ユウがボソッとそう呟く。
「どうしたの??」
ユウの言葉にマリアが心配な顔をしながら、そう声を出す。
「……この前さ、僕の仕事場の同僚と一緒に飲みに行ったじゃん。マリアも連れて来いって言うから連れて行った例の飲み会……」
ユウが表情に少し影を落としながらそう言葉を綴る。
「うん??それがどうかしたの??」
ユウの話がよく分からなくて、マリアが頭にはてなマークを乱舞しながら首を傾げる。
「その……、その次の日に仕事場に行ったらさ、笑顔がめっちゃ可愛いい奥さんだな~って言われて、お前にはもったいないんじゃないのかって言われたんだ……」
ユウが少し泣きそうな顔をしながらそう言葉を綴る。
「だから……あまりその笑顔をみんなの前では出さないで欲しいな~って思ってさ……」
ユウがどこか悲しそうな表情をしながらそう言葉を綴る。
「ふふっ……。心配しなくても私が一番大好きなのはユウだよ!」
マリアが笑顔でそう言葉を綴る。
「本当?」
ユウはまだどこか心配なのか、不安そうにそう声を出す。
「誰がなんと言おうと、私はユウが一番大好きだよ!」
マリアが満面の笑みを浮かべながら、そう言葉を綴る。
その表情には、一転も曇りもなく、晴れやかに澄み渡る春のような表情だ。
「ありがとう、マリア。僕もマリアの事が世界で一番大好きだよ」
ユウがマリアの表情で少し安心したのか、はにかみながらそう言葉を綴る。
「ほらっ!夕飯食べないと冷めちゃうよ?」
マリアの言葉に夕飯の続きを食べ始めて、いつものような夜を過ごした。
幸せな日々の日常……。
でも、その日常が音を立てて崩れることになるとはまだ知らない……。
***
「……殺人だな」




