18.追ってくる手
「ごめんね……マリア……」
ユウがそう小さく呟いてマリアを優しく、抱き締めるように包み込む。
ユウの温もりがマリアの心に伝わり、マリアの瞳から涙が溢れていく……。
「ずっと……一緒だよ……」
マリアがユウにそっとそう言葉を綴る。
「うん……一緒だ……」
ユウがそう応えながら、マリアに見られないように静かに涙を流した。
***
「……多分、この人だったと思うよ?」
一人の男性が写真を見ながらそう言葉を発する。
タチバナが殺された件で、モトキ警部とサザワ刑事は例の河川敷近くに聞き込みを始めると、近くに住む男性がサザワ刑事が見せた写真に写っているユウの姿を見たという事だった。
「本当にこの人で間違いないですか?」
サザワ刑事がユウの写真を男性に見せながら確認するようにそう言葉を綴る。
「えぇ、なんか悲痛そうな顔をしていたんでね。身体もふらついていたし。だから、記憶に残っていたんですよ」
「そうですか。ありがとうございます」
サザワ刑事が男性にお礼を言うと、男はその場から去って行く。
「……やはり、間違いないようだな」
サザワ刑事の隣にいるモトキ警部が、そう口を開く。
「そうですね。恐らくタチバナと言い争っていたのはこの写真の男で間違いないでしょう」
サザワ刑事が写真を見ながらそう言葉を綴る。
そして、モトキ警部とサザワ刑事はユウの職場に行けば何か分かるかもしれないという事で、ユウが勤めている会社に赴いて行った。
***
「……風、気持ちいいね」
マリアが公園の中にある滑り台の上で風を感じながら、そう言葉を綴る。
ユウとマリアは、お弁当を食べた公園で時間を過ごしていた。公園の中にある滑り台やブランコで、子供の頃を懐かしむように遊んでいる。
「ユウ!もう一回ブランコ乗ろうよ!」
マリアがそう言って滑り台を滑り降りてくると、そのままブランコの方に駆けていく。
そして、二つあるブランコにユウとマリアが腰を掛ける。しばらくはブランコを揺らしながら、どちらも口を開かない。
公園に優しく風が吹き抜けて、ユウとマリアの髪がなびく……。
何故、こんな事になってしまったのだろうか……。
あの、当たり前に過ごしていた日常はとても幸せな日々だった……。
でも、その当たり前な日常は、もう、戻ってこない……。
「ごめんね……僕のせいで……」
ふいにユウがポツリと小さく言葉を発する。
「大丈夫だよ。ユウとこうやってずっと一緒にいることできるし……」
マリアが微笑みながら、優しい声でそう言葉を綴る。
「でも……」
ユウが何かを言い掛けて口を閉じる。
分かっている……。
この逃亡がいつまでも続かないということ……。
お金もこのままではいつか尽きてしまう……。
だからと言って仕事をすることも出来ない……。
出口が見えない迷路の中……。
光を見ることは許されない……。
犯した『罪』は消えない…………。




