17.幸せな日々だったはずなのに……
ツネが言った日にちにモトキ警部とサザワ刑事が同時に驚きの声を上げる。
何故なら、その日はタチバナが殺された次の日の遺体が発見された日だった。モトキ警部とサザワ刑事が顔を見合わせて、頷き合う。
「その日がどないしたんや??」
ツネが頭にはてなマークを浮かべながら、そう言葉を綴る。
「いえ、何でもないですよ。ありがとうございます」
サザワ刑事がツネにそう言葉を綴ると、モトキ警部と共に、そのアパートを出て車に乗り込む。
「……タチバナの件と何か関係あるかもしれないですね」
サザワが手帳を広げながらそう声を発する。
聞き込みで分かっているのはタチバナが男と言い争いをしていたという事。そして、もしかしたらその男というのはユウのことかもしれないと思い、タチバナの行動と並行して、ユウとマリアの行動も調べる事にした。
***
「……どれがいい?」
お弁当が並んでいるコーナーでユウが微笑みながらマリアに尋ねる。
お昼ご飯を食べるのに、ユウとマリアは近所のスーパーにお弁当とお茶を買いに来ていた。
「どうしようかな……?」
マリアは色々並んでいるお弁当を見ながらどれにしようか悩んでいる。
お弁当は定番の海苔弁当から唐揚げ弁当、色とりどりの野菜が使われたヘルシーなお弁当、それにカツ丼からそぼろ丼など、種類豊富に取り揃えられている。
「う~ん……。じゃあ、これにする!」
マリアが手に取ったお弁当は、野菜と肉団子が甘酢で絡めてある料理がメインのお弁当だった。
ユウはカツ丼を選んで、ペットボトルのコーナーでそれぞれお茶を購入すると、スーパーを後にする。
そして、そのまま近くにある小さな公園に入り、ベンチで二人並んで買ってきたお弁当を頬張る。
「どう?それ、美味しい?」
「うん!」
マリアが肉団子を美味しそうに頬張っている姿を見て、ユウが微笑む。
「ユウの方は?美味しい?」
マリアが笑顔でユウの選んだカツ丼を指差しながらそう言葉を発する。
「まぁまぁかな?」
「なにそれ」
ユウの言葉にマリアが笑いながら応える。
やがて、お弁当が食べ終わり、空になったお弁当の箱をスーパーで貰った袋に入れて傍にあるごみ箱に捨てる。
「はぁ~♪ご馳走様でした!」
マリアが手を合わせながら笑顔でそう言葉を綴る。
「お腹満たされた?」
ユウがマリアにそう声を掛ける。
「うん!でも……」
マリアの表情がどこか寂しそうになり、顔は微笑んでいるが瞳には哀しみが漂っている。
「どうしたの?」
ユウがそんな表情のマリアを心配して声を掛ける。
「ユウに最近ずっとご飯を作ってあげられてないな~って思って……」
「……」
マリアの言葉にユウは何と返事をしていいか分からなくて黙ってしまう。
『こうなったのは自分のせい』
ユウの中でマリアに対する申し訳なさが込み上げてくる。
「ユウは私が作るご飯を、美味しい、美味しい、って言って沢山食べてくれていたから……。だから私もご飯作りが楽しくて、メニューを考えるのも本当に楽しかったんだ……。次はこれを作ったら美味しいって言ってくれるかな?とか、思ったりして……。ユウの為に料理を作るのが本当に楽しかった……」
マリアが寂しそうに目を伏せながら、言葉を綴っていく。
その瞳に映っているのは、懐かしい日々……。
それと同時に、そんな日々がもう戻ってこないかもしれないという哀しみ……。
もう戻れない日々だと分かっていても、心のどこかで願ってしまう……。
『また、あんな日々を過ごしたい』
でも、それが叶わない願いだという事も分かっている……。
分かっていても願ってしまう……。




