15.深淵の想い
サザワ刑事が河川敷で見つかったホームレスの男の事を話していく。
河川敷で見つかったその男は「タチバナ」という名前で、年齢は五十八歳。しかし、驚いたのはタチバナに犯罪歴があった事だった。
何年か前にタチバナは「婦女暴行罪」で警察に捕まっており、割と最近になって刑務所から出てきたという事だった。
そして、刑務所から出てきたものの、帰る家が無くてホームレスになったらしく、あの河川敷の場所をねぐらとして過ごしていた。
「もしかしたらタチバナは、何かしら犯罪を企んでいたのでしょうか?」
前科がある人間は同じことを繰り返す可能性が高いため、サザワ刑事はタチバナの事をそう推測する。
「それは分からんな。でも、その可能性はあるだろう」
サザワ刑事の言葉にモトキ警部がそう応える。
「もしかしたらタチバナは、何か事件を起こそうとして逆に殺された可能性もありますね」
サザワ刑事がそう言葉を綴る。
「そうだな。タチバナが遺体で発見される前の行動を調べれば何か分かるかもしれないな」
「そうですね」
モトキ警部の言葉にサザワ刑事が返事をして、遺体になって発見される前のタチバナの行動を追ってみることになった。
その前にもう一度、マリアの住んでいるアパートに赴くことになり、二人は車に乗り込むとアパートに向って車を走らせた。
***
「……大丈夫……大丈夫だよ……」
暗がりの部屋で暗い表情をしているユウを抱き締めながら、マリアがそう言葉を綴る。
こんな生活はいつまでも続かない……。
人を殺してしまった『罪』は消えない……。
「これからどうすればいいんだろう……」
ユウがマリアを抱き締め返しながらポツリと呟く。
「大丈夫……大丈夫……」
マリアが魔法の呪文のように何度も同じ言葉を優しい声で繰り返す。
「大丈夫……大丈夫……」
マリアが何度もその言葉を繰り返す。
「大丈夫……大丈夫……ずっと一緒だよ……」
マリアがその言葉を言霊のように、何度も、何度も、繰り返す。
明日が見えない日々……。
いつかは捕まるという恐怖……。
離れ離れになりたくないという想い……。
本当は分かっている……。
自分たちの逃亡は間違っているという事は……。
それでも……。
それでも……。
いろいろな想いが交差する……。
どこまで逃げ切れるのか……。
この暗闇は何処まで続くのか……。
それは、誰にも分からない……。




