12.地獄の底で見る幸せな夢
アキが薬品棚をみて、薬品の数が合わないことに疑問を感じ、そう声を発する。
そして、どの薬品が欠けているのかを確認する為にその棚の中を調べる。調べていくと、どの薬品が無いのかが分かり、同じ研究室にいる人に声を掛ける。
しかし、どの研究員もその薬品はしばらく使っていないと答えるので、アキとその部屋にいる人たちでその薬品が何処にあるかを探すために研究室を調べる。しかし、薬品は出てこない。
「一体どこに??」
アキがはてなマークを浮かべながら、そう声を出す。
薬品を紛失することは研究員として絶対にしてはいけないことで、その薬品が最近使われたのがいつかを確認する為に、薬品管理ノートを広げる。
しかし、やはり最近はその薬品を使って研究した記録が無いので、棚の中に収納されているはずだった。
その薬品がいつ頃から無いのか、その特定が出来ない。しかし、このまま紛失したままで終わることも出来ないので、その事を責任者に伝えるためにアキはその研究室を出て行った。
***
「ん……」
ユウがぼんやりと目を開けると、窓の外は夕暮れが差し掛かっており、部屋が赤く染まっていた。隣で寄り添うように眠っているマリアは今も寝息を立てている。
「もうこんな時間か……」
ユウが手首に付けている腕時計を見ながら、小さく呟く。
「んん……」
マリアがもそもそと身体を動かしながら、ゆっくりと目を覚ます。
「マリア、大丈夫?」
少し寒そうにしているマリアにユウが声を掛ける。
マリアはまだ夢の中なのか、ぼんやりとしていて返事はない。
「……お腹空いた」
マリアがポツリとそう呟く。
「何か食べに行こうか」
ユウの言葉にマリアが頷く。
そして、ユウとマリアはどこかで夕飯を食べるために、その部屋を出て行く。
電車に乗り、その地域では主要となる駅で降りて、どの店で夕飯を食べようか話しながらちょっとした繁華街を探索する。
「あ……」
繁華街を歩いていると、マリアがある店を見て小さく声を出す。
その店は古くからある和食処だった。外の看板には新鮮な魚の写真が貼られており、その日に採れた魚が書かれている。
「ここがいい?」
ユウがマリアにそう尋ねる。
そして、その店で夕飯を食べることになり、二人は暖簾をくぐり、自動ドアを潜り抜けて店に入っていく。
「へいっ!らっしゃい!」
店の店主と思われる男が偽に入ってきたユウとマリアに笑顔で声を発する。
ユウとマリアは四人掛けのテーブルに座り、立て掛けてあるメニューから何を食べるかを考える。
定食のメニューがいろいろと目に飛び込んでくるが、どれが良いのかがよく分からなくて、無難にマリアはかけそばを頼み、ユウは肉入りうどんを頼むことにした。
「あまり見ない顔だね。ここには仕事か何かで来たのかい?」
注文を聞きに来た店主が、ユウとマリアを見てそう言葉を綴る。
店主の話だと、この店にくるお客さんは殆ど常連さんが多く、ここら辺は呑み屋関係の店が多いので、この和食処に足を運ぶ人は少ないという。
「良かったらこれからも食べに来てくれや!」
店主がそう言って、調理するために店の厨房の方に姿を消していく。
店にはちらほらとお客の姿はあるものの、静かでのんびりとした雰囲気が漂っていた。
「こういう雰囲気の店ってなんかいいね」
微笑みながら店を見渡しているマリアが、そう言葉を綴る。
「もし、ご飯も美味しかったらまた来てもいいかもね」
マリアの言葉にユウが笑みを浮かべながらそう返事をする。
やがて、かけそばと肉入りうどんが運ばれてきて、ユウとマリアは料理を口に運んだ。
「美味しい……」
マリアがかけそばを一口食べて、そう声を出す。
かけそばは色々と具材が入るわけではないので、味に誤魔化しが効きにくい料理だ。だが、一口食べただけで、蕎麦にはコシがあって柔らかくなりすぎていない事や、汁も醤油と出汁が絶妙にブレンドされているのが分かる。
「ホントだ、確かに美味しいね」
ユウが肉入りうどんを食べながら、そう声を出す。
ユウが食べている肉入りうどんも肉に味が染み込んで、絶妙な旨味を引き出していた。
食事が終わり、会計の時にユウとマリアが美味しかったことを店主に伝えると、店主からは「贔屓にしてくれや」というような返事が返ってくる。
そして、店を出るとユウとマリアは借りた部屋に戻っていった。
***
「……モトキ警部、この写真の女性、シマノの元彼女だったこの人かと思われます」




