9/4 大統領決断を ①
私にはこの国を左右する力がある。
小国だったこの国が列強国に対して声を上げる事ができるようになったのは国民が私を選び、国民が生活を頑張ったおかげであろう。
そして、私も身を粉にし働いてきた。その甲斐あって今日も安定して国が回っている。
「大統領、とうとう四カ国会議が始まりますね」
「あぁ、この会議で今後の私たちの立ち位置が決まると考えると腹が痛くてしょうがない」
今夏、私たちの国は経済大国A、資源大国K、技術大国F、世界を引っ張る大国の会議に混ぜて貰えることになった。
我が国の歴史的な日であると同時に負の歴史を残す可能性があるのだ。
「大丈夫です。大統領がこれまでに行ってきた様々な政策、外交などは国民が一番見ておられます」
秘書官になり30年目のエドワードは昔と変わらぬ姿勢で私を優しく見守る。
政治家になり、妻よりも多くの時間を一緒に過ごしてきたエドワードは私と年齢は同じであるが、私より20歳以上若く見える。
「よしてくれ、別に私が全て行ったことではない。党の議員もうまく動いてくれた」
私たちの党に所属する議員は汚職も失言も淫行をも行わなかった。とある若手議員はパイプカットを行ってでも党に入り国ため身を尽くしたいと言った。のちに、パイプカットの意味を尋ねた時、私は内股になりその場で冷や汗が止まらなかった。
「大統領、今お時間よろしいでしょうか」
「おう、スミダかいいぞ」
扉が引かれスミダは一礼し直ぐに要件に入った。
「大統領、四カ国会議の資料をお持ちいたしました。ご確認お願いいたします」
クリップで止められてた資料の束は辞書以上の分厚さがあり、受け取った際にはその重さで膝までもが曲がってしまった。
「大袈裟ですよ大統領。まだ、そんな歳でもないでしょうに」
「もう、歳だよ。この四カ国会議が終わり次第今後の去就も考えないといけない」
体も頭もしっかりと働くのだが、私たちは数年の国運営ではなく、数十年あるいはもっとその先を見据えなくてはいけない。その為、早めに席は空けとくに越したことはないのだ。
「まだまだ大統領にはやっていただかないといけない事が沢山あるんです。どうせ、四カ国会議が終わったら精力的に仕事をしますよ」
スミダは笑い、一礼したのちゆっくりと部屋を出ていった。スミダの明るさからパイプカットなどと言葉が出たとは今でも信じがたかった。
「大統領。今日はこのまま資料を確認しご自宅に帰られるのですよね?」
「あぁ、軽く目を通し今日は帰ろうと思う。車はそうだな...7時には手配をお願いしたい」
「承知しました」
エドワードは電話をかけ車の時間を運転手に告げる。簡単に済ますと次々に電話をかけ要件を進めていった。気が利き、仕事が早く、人当たりも良い。私は恵まれている。
「大統領、本日私は失礼いたしますが、そろそろどちらにするか決断をお願いいたします」
「あぁ、もう時間がないからな。早めに決断をしなくてはいけないな」
「よろしくお願いいたいします」
エドワードもスミダと同じように一礼をし部屋を出ていった。
私は扉が閉じたのを確認しコーヒーに手を伸ばした。先ほど、エドワードが入れたコーヒーはまだ暖かく香りが立っていた。時計に目をやると午後3時。車が門前に到着するのが午後6時50分。まだ、4時間程度の時間が残っていた。スミダの資料の1/3程度見ることはできるだろう。
大統領は椅子に深く座り直しデスクライトの下に置かれたメガネをかけ、もう一度コーヒーを啜った。




