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愛はひとつではないから  作者: ぽーりー


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13/46

13 希望




その後の調査で、私を池に突き落としたのはモニカだということがわかった。

彼女は学生の頃からスレイン様をお慕いしていて、妃であるコリーナに逆恨みをしていた。

しかし自分のせいでスレイン様が命を落としたことを知ると、彼女は正気を失い、自ら罪を認めて自害したという。

そんな話を聞かされても、私は彼女に対して憎しみも憐れみも何も感じなかった。

私があの時、彼女をもっと警戒していれば。

中庭に行かなければ。

スレイン様は死ななくてすんだのだ。

彼が死んだのはすべて私のせいだわ・・・。


「もう秋なのね・・・」


庭の桜の木が赤く色付いていた。

気休めに読んでいた本をテーブルに置き、窓の外をぼんやりと眺めていると、突然コツコツという音が聞こえてきた。

何かしら。

視線を落とすと、見覚えのある鳩が窓の向こうからこちらを覗いていた。

あれは、エニフィール様の伝書鳩・・・。

窓を開けると、鳩は嬉しそうに部屋の中を飛び回って、私の肩に舞い降りた。

うろ覚えだけれど、確かくちばしを押すと音声が再生されるのよね。


『ミリアさん・・・お久しぶりです。体調はいかがですか?』


エニフィール様の声だわ・・・。


『今はゆっくり休んでください・・・。それで、元気になられたら、一度うちの屋敷へお越しくださいませんか?ミリアさんにお伝えしたいことがあります。スレイン殿下の件です』


え?スレイン様の??


『お待ちしています』


翌日、私はさっそくエニフィール様のお屋敷に足を運んだ。


「ようこそお越し下さいました」

「スレイン様のことでお話しがあるとか・・・」

「はい。とりあえずお座りください」


執務室のソファに腰をかけると、執事のジョセフさんが紅茶を運んで来てくれた。

この香り、懐かしいわ。

このお屋敷に来るとなんだかホッとするわね。


「ミリアさん、だいぶ痩せられましたね・・・」

「あ・・・みすぼらしいでしょう。ごめんなさい」

「そうではありません!ただ心配で」

「大丈夫ですよ。最近は少し食べられるようになりましたから」

「そうですか・・・」


気を使わせてしまったわね。

もっと厚着をしてくれば良かったわ。


「実は僕は昨日まで、ある魔法を創造するために研究室にこもっていたんです」

「魔法ですか・・・?」

「はい・・・。ミリアさん、もしも過去に戻ることが出来るとしたら、どうなさいますか?」

「え?」

「過去に戻ってスレイン殿下をお救いすることが出来るとしたら、戻りますか?」


過去に戻る?

そんなことが可能なのかしら。

でも、もしも本当にそんなことが出来るのなら。


「戻ります。戻って必ず殿下をお救いします」


その言葉を聞いたエニフィール様は、寂しそうに微笑んだ。


「そうですか・・・」

「そのような魔法があるのですか?」

「はい。僕が作りました」


すごいわ!

時間を遡る魔法なんて聞いたことがない。

彼は本当にすごい魔導師様なのね。


「でも、この魔法は一方通行なんです。一度過去に戻ってしまえば、現在に戻ってくることは出来ません」

「そうなんですね・・・」

「それでも戻られますか?」


私の心はもう決まっているわ。


「えぇ。戻ります」

「わかりました・・・。ミリアさんを過去に戻します」

「ありがとうございます!今すぐ戻れるのですか??」

「いえ・・・。この魔法を発動するには膨大な魔力が必要なんです。私の魔力だけでは発動させることが出来ません」

「ではどうすれば・・・」

「魔導石を使います」

「魔導石?」

「スラナビアの鉱山で採れる、魔力が込められた石です」

「スラナビア・・・とても遠方にある国ですね」

「はい。魔導石は他国への輸出が禁止されているので、現地に赴くしかありません」

「スラナビアまで・・・」

「はい。行って帰って来るまでに数ヶ月はかかるかと・・・」

「まさか、エニフィール様が行かれるのですか??」

「はい。僕が行って採取して来ます」

「それはあまりにも危険過ぎます!スラナビアを出る際に捕まってしまいますわ!」

「しかし、それしか方法がありません」

「どこかで人を雇うとか、何か他に方法が・・・」

「このような危険な依頼を受ける人はいないでしょう。心配なさらないでください。僕は魔導師ですので、身を守る術はあります」

「でも・・・」

「必ず魔導石を持ち帰りますから、ミリアさんはちゃんと食事をとって、僕の帰りを待っていてください」

「エニフィール様・・・」


彼にそんな無理をさせてしまってまで、私は過去に戻るべきなのかしら・・・。

それでも、このままスレイン様を諦めることは出来ない。

今は彼に頼るしかないのよ・・・。


数日後、エニフィール様は国立魔導師団に休職願を出して、スラナビアへと旅立った。

それから彼は、新しい国を訪れる度に、私に伝書鳩を送ってくれた。

今どこの国にいるのか、その土地の郷土料理や変わった風習などを冗談混じりに話してくれた。

私を元気づけようとしてくれているのかしら。

私はいつからか、ガラスの伝書鳩が来るのを心待ちにしていた。


魔導石が手に入ったとの知らせが届いたのは、彼が出立してから三ヶ月後のことだった。

ひと月後にはこちらに戻って来られるのね。

どうか彼が無事に戻って来れますように・・・。




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