14 どうか幸せに
ミリア視点
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エニフィール視点
エニフィール様が戻ったとの知らせを聞いて、私はすぐに彼の屋敷を訪ねた。
久しぶりに会った彼の肌は日に焼け、肩にかかっていた青い髪は短く切り揃えられていた。
この数ヶ月でずいぶんと雰囲気がお変わりになったわね。
きっと私が想像出来ないほどの苦労をなさったはずだわ。
しかし彼はそんなことを一言も口にせず、これからの計画について淡々と話し始めた。
「ミリアさんを、殿下との結婚式が行われるひと月前に戻します」
「え??そんなに遡れるのですか??」
「はい」
では、私はスレイン様と結婚出来るということね・・・。
「過去に戻られたら、ミリアさんにすぐにやっていただきたいことがあります」
「なんでしょう?」
「この腕輪を手に入れて欲しいんです」
エニフィール様は赤い宝石が散りばめられた金の腕輪を私に差し出した。
「これはなんですか?」
「装着した人をあらゆる魔法から守る腕輪です」
「そのようなものがあるんですか??」
「巷には出回っていませんが、稀にオークションで取引されています。調べたところ、結婚式が行われる一ヶ月ほど前に、王都にあるオークション会場で取引されていました」
「それを私が落札して、身につければいいのですか?」
「はい。一度身につけたら、結婚式まで決して外さないでください。いえ、ご結婚されてからもずっと肌身離さずに着けておいた方がいいかと」
「わかりました。腕輪のお値段はいかほどですか?」
「5000万レギンくらいにはなるかと思います」
「え??」
「高価ではありますが、命には変えられませんから、必ず落札してください」
「わ、わかりました。どうにかしてお金を工面いたします」
「スレイン殿下に協力していただくのもいいかと思います」
「え、えぇ。そうですね」
そんな大金を用意して欲しいだなんて、さすがに言えない気がするわ。
お父様にお願いするしかなさそうね・・・。
そんなことを考えながら紅茶に口をつけると、エニフィール様がホッと息を吐いた。
「だいぶ体調が回復なさったみたいですね」
「あ、はい。おかげさまで」
代わりにあなたは少しお痩せになったようだわ。
それに気付かないフリをする私って酷いわよね。
「それは良かったです・・・。では次は、これから使う魔法について説明します」
「はい。お願いします」
「この魔法は現在のミリアさんを過去に転送する、といったものではありません。過去の脳を今のミリアさんの脳の状態に上書きする、といった魔法です」
「そうなんですね・・・」
「なので目が覚めた時、急に未来の記憶を持っているという状態になるので、初めは混乱するかもしれません」
「わかりました」
「それと、未来の記憶を持っているということは誰にも話さない方がいいかと・・・」
「ふふっ。そうですよね。頭がおかしくなったのではないかと思われてしまいます。それこそ婚約破棄されてしまいますわ」
でも不思議ね。
あなたならそんな突拍子もない話も信じてくれそうな気がするわ。
一通りの説明を聞いた後、私は一度自宅へ戻らせてもらった。
最後に家族やティナに会いたかったから。
過去に戻ったらまたすぐに会えるけれど、この世界の彼らとはもうお別れなのよね。
皆と別れを済ませた私は、馬車に乗って再びエニフィール様の屋敷へと向かった。
ついにこの時が来てしまった。
この魔法を創造した時も、彼女に過去に戻りたいか尋ねた時も、魔導石を手に入れた時も、今ならまだ引き返せるんじゃないかと何度も考えた。
僕がミリアさんを幸せにすればいいんじゃないかって。
彼女がスレイン様を忘れるまで、僕は何十年だって待つことが出来るのだから・・・。
でも僕は、学生の頃から知っていた。
彼女はスレイン様の隣に立っている時が一番輝いているって。
だから僕は、あなたに出来る最善のことをしようと心に決めました。
「準備はいいですか?」
「はい・・・大丈夫です」
僕は向かいのソファからミリアさんの隣に移動して、彼女と向かい合った。
こうやって彼女の瞳を見つめられるのもこれが最後になる。
ミリアさんが過去に戻ってしまえば、僕たちは赤の他人に戻ってしまうだろう。
そしてたまには、スレイン様と一緒にいる姿を見かけるのかもしれない。
僕はまた、遠くからあなたたちを眺めるだけの存在に戻ってしまうんですね・・・。
でもそれでいいんです。
あなたがずっと笑っていられるのなら。
「ミリアさん、どうか幸せになってください」
僕の頬を、一筋の涙が伝った。
「エニフィール様?」
彼女が僕に手を伸ばした瞬間、僕は魔法を発動した。
現在編はこれで終了となります。
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