12 突然の別れ
青ざめた顔をしたリズが、先程から縁起でもないことを言っている。
スレイン様が亡くなられたですって?
何を言っているのかしらこの子は。
「冗談はやめてちょうだい。それ以上変なことを言うのなら、侍女をやめてもらうしかないわよ」
まともに取り合わない私を見て、リズはベッドにすがりついて来た。
「殿下は・・・コリーナ様をお助けするために、池に飛び込まれたんです・・・」
コリーナ?
そうだったわ。
私はコリーナのフリをして陛下の生誕祭のパーティーに出たのよね。
そこでモニカと再会して、二人で中庭に行って・・・。
「私が、池に落ちたですって?」
「はい・・・」
そうだわ。
誰かに背中を押されて池に落ちた気がする・・・。
そんな、まさか!
「殿下!殿下はどちらに??」
ベッドから降りようとする私を、リズが必死に押さえ込んだ。
「安静になさってください。コリーナ様もようやく一命を取り留めたばかりなんです!」
「離しなさい!何かの間違いよね?そうでしょ?殿下はご無事なのよね??」
「も、申し訳ございません・・・」
嘘よ・・・。
そんなはずないわ。
先程まで一緒に笑っていたもの。
「そこをどきなさい!この目で確かめるまでは信じないわ!」
私はナイトドレス姿のまま部屋を飛び出した。
早くスレイン様の無事を確かめたくて、薄暗い廊下を無我夢中で走った。
スレイン様の寝室に飛び込むと、陛下と王妃様がベッドサイドに項垂れていた。
私に気付いた陛下は、泣き腫らした目で微笑んだ。
「コリーナ・・・君は無事だったんだな。良かった」
「陛下・・・殿下は・・・」
「スレインは・・・旅立ってしまった・・・」
陛下の言葉に、王妃様は声を殺して泣いた。
「そんな・・・信じません・・・」
「コリーナ、いや、ミリアを助けることが出来たんだ。スレインも本望だろう」
「陛下・・・」
私だと気付いておられたんですね。
きっと王妃様も。
お二人は知らないフリをしてくださっていたんだわ・・・。
「ミリアもこちらへ来なさい」
言われるがままにベッドサイドに近付くと、眠っているかのように安らかな顔のスレイン様が横たわっていた。
「スレイン様・・・起きてください。私です。目を開けてください・・・」
呼びかけても、彼は瞼を閉じたままで。
「どうしてですか・・・。私など捨て置いてくだされば良かったのに。おかしいです。あなたはこの国の王子なのですよ?私が死ねば良かったんです!私が死ねば良かったのに!!」
「ミリア!やめなさい!」
王妃様は泣き叫ぶ私を後ろから抱きしめた。
「治癒魔導師をここへ!彼女を落ち着かせるんだ!」
陛下の言葉に、側で控えていたマッシュさんが部屋を飛び出して行った。
それからのことはあまり覚えていない。
気がついた時には、私は自宅の屋敷に戻っていた。
両親やコリーナが時折私の元を訪れたけれど、何を話していたのかも思い出せない。
来る日も来る日も、時間が過ぎていくのをただ待つだけ。
季節が変わっても、私は自分の部屋から出ることはなかった。




