60.血祭り
ようやく頭が回り始めた私は、とにかくダリオの死を確かめるため、急いで治療院に走った。
もしかしたら、まだ間に合うかもしれない。
でも、容体はあんなに安定していたっていうのに、急変するなんて。
やっと治療院に着いた私はふと異変に気付く。
昼間までいたガリアーノファミリーの者たちが誰一人いないのだ。
私は治療院の扉をガンガンと叩く。
「誰か! 開けてください! ダリオを治療した治療師です!」
ようやく扉が開けられると、一人の治療師が戸惑った顔を覗かせる。
「……ああ、あなたは。……ダリオ様は本当に残念でなりません」
「彼の遺体は? 亡くなった原因は何なのですか?」
「……いえ、私も実際に見た訳ではなく、伝え聞いたもので。ご遺体はトミー様が引き取られたようです」
「……そう、ですか」
力なく両腕をだらりと垂らす私を残し、治療院の扉は静かに閉じられた。
引き取られたのであれば、ガリアーノファミリーの事務所に行ってみよう。
トミー氏もいるかもしれない。
今度はガリアーノファミリーの事務所へ駆け出した。
ひっそりとした路地裏を通り抜け、事務所までやって来ると、私は入口のドアを勢い良く開け放つ。
「な、何だ!? カチコミか!? ……って、クレアお嬢ですか?」
治療院でも会った屈強な見張りの男が、咄嗟に構えた武器を下ろす。
「突然すみません。ダリオが亡くなったと聞いて……。トミー氏はいますか? 話を聞かせて欲しいんです」
「お嬢……。気持ちは分かりやすが、残念ながら誰も通すなという命令でして。……まぁ、ボスの気持ちも察してやってください。最愛の坊ちゃんがお亡くなりになって、話どころじゃありませんぜ」
私はぐっと拳を握る。
確かに、それは言う通りだ。
自身が納得出来ないと言うだけで、残された家族の傷口をえぐるような真似をすることはできない。
ダリオは死んだのだ。
握った拳から力が抜ける。
まるで幽鬼のようにフラフラと事務所を出ようとした、その時だった。
私の背中に向かって見張りの男が声を掛ける。
「クレアお嬢! ただ、あなたが来たら伝言するようボスから命令がありました」
「……伝言?」
「三日後、必ず来い。……だそうです」
こんな状況でもフランク・コステロを血祭りに上げるということか。
いや、こんな状況だからこそなのか。
そうであればトミー氏に従い、三日後、会いに行くしかない。
そこで話を聞こう。
トミー氏もただ無謀に殴り込むという訳ではなさそうだったし。
何か策があるのだろう。
ここまでドップリ関わってしまったら、結末を見届けなければ。
私はその時が来るのを待つのだった。
――――――――――
そして、三日後。
私は朝早くから路地に身を隠し、コステロファミリーの事務所の様子を伺っていた。
特段、事務所の方に動きはなかった。
しばらくして通りの向こうから、帽子を斜めに被り、上着をマントのようになびかせた男が一人、とんでもない殺気をほとばしらせながら歩いて来る。
ベイルポートのドン。
トミー・ガリアーノに間違いない。
私はスッと路地から身を出す。
「おう。来たか」
「ええ。最早、他人事ではありません。最後まで見届けさせてもらいます」
「せいぜい期待しときな」
そう言って私の横を通り過ぎたトミー氏は、コステロファミリーの事務所へ近付いて行った。
直後、扉を激しく蹴り開ける。
「フランク・コステロはいるか?」
「……ト、トミー・ガリアーノ!」
突然の襲撃に慌てふためくコステロファミリーの手下たち。
だが、トミー氏はそんなこと意に介さず、ズカズカと事務所の中へ押し入っていく。
私はコソコソとその後に続いて行った。
そして、広間を通り抜け、ダイニングの扉をバンと開け放つ。
「何だ!? き、貴様は!!」
手にしたワインを激しくこぼしながら、フランクが驚愕の顔で席を立つ。
「ウチの息子が世話になったな。お礼参りに来てやったぜ」
「な、何のことだ!? 貴様の息子が死んだのは、投獄されて持病が悪化したからだろう? しかも捕まったのは、そこの女とニコ・ヴァルタリのせいだ! 私を恨むのはお門違いというものだ。礼は結構。帰ってくれ」
「ほぅ? まだとぼける気でいやがるのか。俺の息子が死んだ後、ドサクサに紛れて倉庫ビジネスを買収したようだが、それでもしらばっくれるつもりか?」
すると、フランクがハッハッハッと笑い声を上げる。
「ビジネスチャンスがあれば飛び付くのが商人だろう? 貴様にとっては癪に障ることかもしれないが、この世界は非情な者だけが生き残る。それは貴様も理解しているはずだ。それを棚に上げ、私を非難するとは。堕ちたものだな。商人として二流以下だ」
「もちろんだとも、フランク。俺が言いたいのは倉庫ビジネスを買収されたことじゃねぇ。どうしてお前が、息子が死んだことを知っているのかってことだ」
「愚問だな。いやはや、とうとうガリアーノの時代もこれまでか。私たちの武器は暴力ではない。情報だ。それを理解出来ない貴方はそろそろ潮時ではないですか?」
「情報ねぇ……。俺は箝口令を敷いたはずだがなぁ」
「三人以上の者が知った時点で秘密は秘密でなくなるのですよ」
フランクはそう言うと、服に掛かったワインを拭きながら、グラスに新しいワインを注ぐ。
「……だが、どうやらそこの治療師をさらった時のように、情報が正確じゃねぇようだな」
トミーがニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「……何の話だ?」
「俺の組織内にお前の手下がいるのは知ってるんだよ。だから、あえてそいつに情報を掴ませて、泳がせたのさ。嘘の情報をな。俺はまどろっこしいのは嫌いなんだ。おい! そろそろこっち入ってこい!」
突然、トミーがそう言って片手を上げると、後方の扉に背を向けたまま、指だけでクイクイと誰かを招き入れる。
そうして入ってきたのは、フードを目深に被った一人の男だった。
そして、そのフードをバッと脱いだ瞬間、私は口から心臓が飛び出しかけた。
「ダリオ!?」
「おう。まさか、あんたに救われるとはな」
ニッと口角を上げるその顔は、紛れもなくあの生意気なダリオのものだった。
「え? じゃ、じゃあ、死んだっていうのは……」
「ああ。親父がさっき言ってた、嘘の情報ってやつさ」
すると、フランクが再び高笑いする。
「ハッハッハッ! そうですか! いやぁ、無事で良かったですね。で? それが何だと言うのですか? 私には無関係だ」
「コイツの面を見てもそう言えるか? カルロ!」
ダリオがそう叫ぶと、今度は巨漢のカルロが何かを肩に担いで、のしのしと入ってきた。
そして、カルロがフランクの目の前にドンとそれを投げ置く。
それを見た私は再び心臓を口から吐き出すところだった。
「アンジェロ!?」
いつも通りの青白い顔で床に座ったままのアンジェロは、無表情でじっとどこかを見つめていた。
「息子の側近と言えばこの二人だ。息子が死んだと狂言した後、尾けてみたらアンジェロの方がアタリだったって訳だ。こいつらを疑うのは俺も断腸の思いだったぜ。特にアンジェロは幼い時から可愛がってやったっていうのに……」
それを聞いていたダリオはぐっと思い詰めるような顔で黙っていた。
すると、フランクが吐き捨てるように言った。
「その野良犬が何だと言うんだ。いいか? 貴様らは何か勘違いをしているようだが、コイツは私の手下でも何でもない。ただ、情報を私に売りに来ていただけの単なる裏切り者だ」
「ほぅ? じゃあ、暗殺もコイツが勝手にやったってのか?」
「あ、暗殺!? 誰をだ!?」
フランクはギョッとした表情で私たちを見渡す。
あれ?
どういうことだ?
何でそんな反応をするんだ?
しかも、芝居臭さは全く感じられない。
トミー氏と目を見合わせるが、どうやら彼も同感のようだ。
「ここまで来てトボけたところで無駄なことは、お前も承知だろうが念のため聞くぜ? 俺の息子を暗殺しようとして、アンジェロを使って何年も猫の糞を食わせ続けたんだろ?」
「猫の……糞? 一体、何の話をしているんだ!」
その瞬間、アンジェロが狂ったように笑い出す。
しんと静まる室内。
そして、あの無表情だったアンジェロが引きつった笑みを浮かべながら、口を開く。
「暗殺は全て私が計画したことです。もう少しで成功すると思ったのですが、まさかそこの女に潰されるとは夢にも思いませんでしたよ。私の命運もここまでということですね」
「アンジェロ、何であなたがそんなことを……。ダリオの手術だって手伝うって言ってくれたのに……」
「何で? 愚問ですね。この世界で成り上がるためですよ。ダリオが消えた後、ガリアーノファミリーの幹部に上り詰め、同様にトミーを消してもよし。もし、ガリアーノファミリーに裏切り者だと勘付かれれば、捕まる前にコステロファミリーへ寝返り、フランクを消してもよし。手術を手伝うと申し出たのは、ミスを装い、ダリオに止めを刺すつもりでしたが、あなた方のあまりの手際に為す術がありませんでしたよ。ダリオの側近としてではありますが、治療学を学んだ身として、あの手術には敬服致します。私の完敗です」
まさかそんな獣を内に飼っていただなんて。
だけど、思い返してみれば、私たちがコステロファミリーに連れ去られた時、アンジェロは一緒に監禁されず、大した怪我もしていなかった。
つまり、アンジェロが襲撃ポイントまで私とナナイを誘導していたのだ。
そんなアンジェロにトミーが詰め寄る。
「お前がそこまでの野心家だったとはなぁ。俺も見抜けなかったぜ。そして、覚悟も出来ているようだな。この世界で裏切り者がどういう末路を辿るか。お前自身、良く知っているか……」
アンジェロは虚ろな笑みを湛えたまま、膝を付き、天を仰いでいた。
トミーがゆっくりとアンジェロの元へと近付く。
私は口元を押さえたまま、必死で言葉を飲み込んでいた。
私にはもう何も出来ない。
傍観者となるしかなかった。
トミーがアンジェロの肩に手をやると、ふいにフランクへ話し掛ける。
「これからコイツを血祭りに上げるが、何か言っておくことはあるか?」
「私がか? ある訳ないだろう。そんな野良犬がどうなろうと私には関係ない。とっとと私の事務所から出て行ってくれ」
「関係ない、ね。そうかい。分かったよ」
そうトミーは含みのある言い方をすると、拳を握り、振りかざす。
その鉄槌が振り下ろされようとした、その時だった。
「待ってくれ! 親父!!」
トミーの拳がアンジェロの鼻先でピタリと止まる。
私は声の主であるダリオの方へ振り向く。
すると、ダリオの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
そして、その体は小刻みに震えていた。
声を掛けられたトミーの方は少し意外そうな顔をしていたが、すぐに威厳を取り戻す。
「……今、親父なんて呼ぶんじゃねぇ。……ボスと呼べ」
そのドスの利いた声に、ダリオが一瞬ビクリと身を震わせるが、キッと強い眼差しを向ける。
「……ボス、お願いです。……アンジェロの命だけは見逃してください」
「何だと!? 何を血迷ったことぬかしてやがる! コイツはお前を殺そうとしたんだ! その命を助けるだと!?」
「ああ、分かってるよ。……だけど、それに気付けなかったのは俺が甘かったせいだ! だから、それなりの処罰は受けさせても、最終的な処遇は俺に任せて欲しい! もう二度とこんな真似はさせない! アンジェロは……。アンジェロは……。俺の大切な部下なんだ!!」
その言葉に一番驚きを隠せないでいたのはアンジェロだった。
その頬には一筋の雫が伝っていた。
トミーはどこか嬉しそうに一瞬だけフッと口角を上げたが、すぐに元の顔で言う。
「おい、甘ったれたこと言ってるんじゃねぇ。コイツはファミリーを売った裏切り者だ。そんな奴をこのままにしていたら他の奴らに示しがつかねぇ。誰かが責任を取って、落とし前をつけなきゃならねぇ。そう思わねぇか? フランク?」
「あぁん?」
突然、振られたフランクが怪訝そうな声を出す。
何か嫌な気配を察知したように。
そんなことはお構いなしにトミーが続ける。
「俺はファミリーのボスだから、当然部下のミスは俺のミスだ。最後には俺がケツ拭かねぇと収まらねぇことなんて何度もあった。それを理不尽だと思うかい?」
「……貴様の言った通り、ファミリーのボスなら当然のことだ」
フランクはトミーの真意を探るように答えていた。
「そうだよな。だとすれば、もっと小さな、本当の意味でのファミリーにおいてもそれは当然のことだ。息子のダリオがヘマすりゃ俺がかばうし、投獄されりゃ領主にだって下げたくもない頭を下げる。それが親ってもんだよなぁ?」
「……何が言いたい?」
その瞬間、トミーが不敵に笑う。
そして、彼はこう告げるのだった。
「だったら、お前に責任を取ってもらおうか。知らなかったか? アンジェロはお前の息子だ」
「何だと!?」
青ざめるフランクとは対照的に、微動だにしないアンジェロ。
私とダリオですらこの事実に驚きを隠せないのにそんな反応ということは、アンジェロは自身の出生について知っていたのか。
「お前が駆け出しの頃、俺の仕切っていた娼館で熱を上げてたそうじゃねぇか。そこの娼婦の子がアンジェロだ」
「……まさか。……娼婦の息子だと? それでは、まるで私と同じじゃ……」
「だから、きっちり親のお前に後始末をしてもらわなくちゃあなぁ。……と、言っても、もうカタは付いちまってるんだがな」
そうトミーが言った直後、ドアが開き颯爽と一人の男が入って来る。
その姿を見た私は思わず声を上げていた。
「ネイサン!」
「全く。学業に専念されているかと思えばまたトラブルですか。まぁ、そのお陰でまた一儲けさせて頂けたのですがね」
ベイルポート大学での入学手続き以来だろうか。
シュヴェールト商会会長、ネイサン・ブラウシュヴェールト、その人だった。
「あなたがどうしてここへ?」
「……そっくりそのままお返ししますよ。私は当然、ビジネスです。トミー・ガリアーノ氏に依頼されましてね。ちょっとしたブツを調達するよう仰せつかったのですよ」
「ネイサンとは昔からの付き合いだが、まさかお前も知り合いだったとはな。ネイサンは信用の置ける数少ない凄腕の商人だ。この件はネイサンにしか任せられねぇ。その分、ちっとばかし高く付いたがな!」
そう冗談っぽくトミーが悪態をつく。
ネイサンは澄まし顔で、やれやれと両手を挙げる。
「私だってあなたの依頼でなければ、こんな危ない橋は渡りません。それに見合った報酬を請求したまでです」
本当に気心の知れた間柄のようだ。
「それで、ブツと言うのは何なのですか?」
つい気になってしまった私が口を挟むと、トミーがニヤリと私に笑みを向け、こう言った。
「ローダナムさ」
「え!? ロ、ローダナム!? 事の発端になったあの、ローダナムですか? そんなもの仕入れてどうするんですか? だって禁制品ですよね?」
「ああ、バッチリ禁制品よ。しかも、大量に所持なんかしてたら確実に牢屋行きだな」
「そんなこと大っぴらに言ってしまって大丈夫なんですか!?」
「大丈夫! 大丈夫! しっかり港の倉庫の隠し部屋にしまってあるからよ!」
「港の……倉庫?」
はたと気付いた私はゆっくりとフランクの方へ振り向く。
すると、フランクはさっきまで真っ青だった顔を、今度は烈火の如く赤く燃やしていた。
「ガリアーノ!! 貴様!! ハメたのか!」
「さぁ? 俺は所詮、二流以下の商人だからなぁ。せっかく仕入れたローダナムまでお前に買収されちまったぜ。いやぁ、大損だ。これで思う存分、ローダナムのビジネスとやらをやるといいさ。ガッハッハ!」
トミーの勝ち誇った笑いが部屋に響く。
その瞬間、怒り狂ったフランクがトミーに向かって飛び出した。
その手にはいつの間にかギラリと光る短剣が握られているではないか。
あまりの出来事に私は身じろぎ一つ出来なかった。
そこへ一人の影が飛び込む。
「ボス!!」
ドンという鈍い音。
トミーとフランクの間に立ちはだかったのは、何とアンジェロだった。
「アンジェロ!!」
私は咄嗟に駆け寄る。
「……貴様ァァ! ……どこまで私の邪魔をする気だ!!」
「……血は水よりも濃い。そんなものは妄言だと思っていましたが、どうやら違ったらしい。今ならハッキリとこう言える。……私はガリアーノファミリーのアンジェロ・コステロ。家族のためならば、いくらでもこの身を捧げよう!」
「……だったら、私の前から消え失せろォオオ!!」
ドロリと血濡れた短剣を引き抜いたフランクが、アンジェロ目掛け振り下ろす。
その刹那。
「……良く言った。アンジェロ。……おい、俺のファミリーに手を出す奴はなぁ、何人たりとも血祭りじゃあぁぁあ!!」
トミーの剛拳がフランクの顔面を歪ませる。
短剣の切っ先がアンジェロに届く前に、フランクは盛大に吹っ飛ばされると、豪快な音と共にテーブルへ叩き付けられた。
「アンジェロ! 大丈夫!? ヒーリング!!」
「……うぐっ!」
腹部からおびただしい量の血を流すアンジェロに、私はすぐさま治癒魔法を掛ける。
次第に傷は塞がっていき、何とか一命は取り留めた。
安堵した直後、部屋にバタバタと大勢の警備兵たちが入ってきた。
そして、その警備兵たちを引き連れている、白ひげを綺麗に整えた初老の男性が良く通る声で叫ぶ。
「大人しくしろ! フランク・コステロ! 禁制品所持により貴様を投獄する!」
すると、トミーがその男性に声を掛ける。
「随分遅ぇじゃねぇか。シガー」
「ふん、貴様の都合など知らぬわ。……それより、そこのお嬢さんがクレア・エステルか?」
シガーと呼ばれた男性がじっと私の顔を見つめる。
シガーってまさか、シガー・ヴァルタリ?
ベイルポートの領主で、ニコのお父さんの!?
そして、そのシガー・ヴァルタリが突然、私にこんなことを言い放つ。
「どこの馬の骨か知らんが、ニコとの結婚なぞ断じて認めんぞ!」
「……はい?」
唐突に何を言い出すんだ、この人は。
訳が分からず混乱する私に、ダリオがコッソリと声を掛ける。
「……親父さん、ニコ教授のこと溺愛しててよ。……あれで付き合う女たち、全員逃げていくらしいぜ」
そりゃあ領主に詰められたら、誰だってそうなるだろう。
まぁ、私は別にそんなつもりはなかったからどうでもいいのだけど。
と思っていたら、シガーが先程までの凛々しい態度から一変し、何やらゴニョゴニョと漏らす。
「……まぁ、しかしだ。どうやら君は息子も羨むような素晴らしい力を持っており、成功率の極めて低い手術でそこのトミーの息子を救ったと聞いておる。……それだけの功績があり、ニコの仕事の助けとなるならば、伴侶となることを、まぁ考えてやっても良い」
「……はぁ、ありがとうございます? いえ、でも私は別に……」
「ヴァルタリ様! フランクを拘束しました!」
「よし! 連れて行け!」
私の言葉をかき消すように警備兵の報告がなされた。
そして、私たちの前を警備兵たちに鎖で拘束されたフランクが通る。
その時だった。
フランクが吐き捨てるようにアンジェロへこう言った。
「……血は水よりも濃い。……それが私の足枷になるとはな。……せいぜい貴様はこうならないようにするんだな」
アンジェロはフランクの顔も見ず、どこか一点をじっと見つめていた。
そして、フランクはそのまま警備兵たちに連れられて行った。
もしかしたら、これが最初で最後のフランクの教えだったのかもしれない。
こうしてガリアーノとコステロのファミリーの抗争は幕を閉じたのだった。




