表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第四章 Allies激動
71/74

急転

 

 居ても立っても居られなくなった蓮二は、指揮所にいた西馬の元を訪れ、そして尋ねた。

「あの、日本は大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ、と言う他ないな」

 表情を変えずにそう答える。今の時点では、例え危険な状態でもどうしようもないのだ。

 未だ『日本からの要請がない限り介入は不可』という誓約は生きている。

「しばし待て。策はある」

 確信めいた調子で言う西馬。

「はあ……」

 蓮二は曖昧な返事をした。


 その時だった。

「中国軍の非常警報を傍受しました! 発信源は黄京(おうきょう)です!」

 待機していた通信員が叫ぶように言った。

 その言葉に、周囲は騒然となる。


 黄京とは、中国の首都だ。国家指導者である七人の先王。彼らが身を置く先王宮も、そこに存在する。

 そこから、軍における非常時の際発せられる非常警報が出たと言うことは、十中八九国に関わる危険な状態だと言うことだ。


「ある限りのラインを全て使って情報をかき集めろ!」

 西馬は叫ぶ。

 全員がすぐさま反応し、自分の仕事を始める。

 蓮二はただ立っているだけだった。


「司令! 中国国営放送が電波ジャックされた模様です!」

「モニターに出せ!」

「了解!」

 声をあげた士官が手元の機器を操作する。一瞬のノイズの後、最も大きなモニターにそれが映し出された。


 仕立ての良さそうな服を着た七人が後ろ手を縛られ、跪かされている。見るからに貴族のような様相だが、その表情は皆青白い。

「あれは……先王……!」

 中国出身の通信員が言葉を零した。

 全員に緊張が走る。


 一瞬たりとも見逃すまいと、誰もが画面を注視する中、男が現れた。

 見覚えのある装い。髪型。顔。そして、表情。

「……牛島、か……ッ」

 第四師団の姿を捉えられていなかったのは、何かの不具合ではなかった。そもそも日本にいなかったのだ。


『中国軍の皆様、日本の占領、ご苦労様でした』

 不敵に笑って牛島は言う。

『ですが、残念なお知らせです。今をもって、中国は我々の支配下となりました。従って、アジア連合は我々のものです』


 西馬は冷や汗を垂らした。

「……まさか」

『ここに、日本を再び作り出す。薄汚い手の内から我が国土を取り返し、もう一度栄華を極めるのだ!』

「やはりか……!」


 蓮二は驚きつつも、訝しげに西馬を見守っていた。




 実は、西馬が考えていた作戦こそ、牛島が今回使ったものなのである。つまり、先を越されたのだ。

 日本が陥落し、政府は解体。日本を名乗る国はその時点でいなくなった。

 それならば、日本を新たに作ってしまえばいいのだ。


 国の定義は『領土』『国民』『主権者』、三つの存在である。それさえあれば、一応は国として認められるということだ。

 平和連のいずれかの国から土地を借り、そこを日本とする。幸いAlliesの予算には余裕があった。

 まだ公式の案ではないものの、Allies参謀本部ではかなり詰められていた策だったのだ。



  * * *



 対応を連合議会とも協議するため、西馬は参謀達を連れて一度本拠地へ戻った。彼の独断で動けるほど些細な問題ではない。

 台湾に残された兵士たちは、相変わらず日本を憂いでいた。


 その間にも、旧第四師団による占領政策は続く。

 先王を安易に殺さず捕虜としたことで、体制はそのままに乗っ取ることができた。官僚は先王の命を握られ、従うしかなかったのだ。同様に各地方からの襲撃もなく、安全に事を進められている。

 故に、Alliesに残された時間は少ないのだ。

 それもあって、主力は台湾に残っていた。部隊全員が緊急の出撃に備え、ほぼ全ての時間を詰所で過ごしている。


 蓮二は例外的に自室で過ごしていた。出撃のシークエンスが根本的に違う上、誰かに見られるのは避けたいからである。

 それはもちろんシュトラーフェのことだ。

 さすがに、誰も来ない格納庫で日がな一日過ごさせるのは酷である。

 西馬の特別措置だった。




「蓮二、暇だ」

 ベッドの上で膝を抱えていたシュトラーフェが呟く。しかし、返事はない。

 蓮二は部屋の中央付近で、胡座(あぐら)を組んで座っていた。微動だにしない。

 どうやら瞑想をしているようだ。


 つまらなそうに蓮二を観察するシュトラーフェ。集中していることは見て取れる。だが、暇な事には変わりない。

「ふぅん……ん」

 何を思ったのか、彼女は蓮二の真似をし始めた。

 座り直し、目を閉じる。意識を集中させ、考える事をやめる。やめるつもりだったが、どうにも難しく、どうしても何か思ってしまう。


 一言も喋らず、全く同じ姿勢で座り、目を閉じている二人。はたから見れば妙な光景である。

 だがシュトラーフェはそれで満足だった。

一回分お休みさせていただきました。すみません。

またバリバリ更新していきます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ