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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第四章 Allies激動
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宣戦

 

「我々日本軍は、アジア連合に対し宣戦を布告する」

 東条の口から発せられたその言葉は、瞬く間に様々な回線を通して全世界に届いた。誰もが最も予想していなかった事態。無論、Alliesの面々もその例に漏れない。


 特に、西馬がそれを耳にした時の表情は壮絶なものだった。

 怒り。悲しみ。やるせなさ。そういったものが()い交ぜになった西馬の表情は、その知らせを伝えた者を(おのの)かせた。

 それほどに、混沌とした感情だったのだろう。何も言葉を発しなかったそうだ。


 西馬だけではなく、日本を故郷とする面々は気が気でない。皆が古巣の未来を想像し、酷く苦しげな表情を露わにする。


 これが起きたのは、日本から人員を脱出させてから、一週間と経っていない日のことだった。



  * * *



 西馬は連合議会に、何らかの対応が必要だと掛け合ったが、議会からの回答は思わしくなかった。

「今すぐに連合へ影響が及ぶとは考え難い。対応を検討しなければならないのは確かだが、危急を要するものではないと判断する」

 との事だ。

 確かにその通りではある。合理的であり理屈も通っているのだが、感情面では看過できないのだ。西馬にも愛国心はあるのだ。


 それでも、渋々ながら西馬は引き下がった。そして、すぐにこの事を皆に伝えた。

 誰も怒る事もなく、泣くこともなく、沈痛な面持ちでその言葉を受け止めていた。

 全員が絶大な信頼を寄せる西馬が行動を起こした結果、こうなったのだ。不平不満は無い。あっても押し殺す。そんな彼らの様子をまた、西馬は物憂げな目で見ていた。

 日本人以外の構成員は、そんな彼等を励ますように一段と明るく振る舞っていた。


 一方、蓮二、シュトラーフェ、守、結の四人は、蓮二の部屋に集まった。

 シュトラーフェ以外の三人は、小さなテーブルの周りに座り、他の兵士たち同様辛そうな表情だ。シュトラーフェは、三人を心配そうな面持ちで、一歩離れたベッドに座って見守っている。

 口々に出るのは、心配の声。

 過去に訓練生時代を共にした者達や、世話になった人々。

 守に至っては、家族を置いてきている。

「勘当されたようなもんだから気にしなくていいよ」

 とは言っていたものの、表情にどこか暗さがあっては、蓮二と結の心は落ち着くわけがない。

「ほら、俺家を飛び出して来たからさ」

 だからと言って心配にならない理由にはならないだろう、と二人は思ったが、それを言ったところで何かが解決することはない。むしろ、守を追い詰めかねないのだ。


 いつもはなにかとストレートにモノを言うシュトラーフェも、今回ばかりは二人の様子を見て何も言わなかった。

 むしろ、いつもよりも静かだった。



  * * *



 Alliesメンバーであり国家情報委員会に属する谷は、未だ日本にいた。彼の仕事は諜報であるから、当然と言えば当然である。

 その谷が今調べているのは、東条の身辺だ。

 アジアを震撼させた宣戦布告。まだ日本軍の再編も完了しておらず、不安定な中なぜ中国にそれを行ったのか。不審な点も多い。


 東条の執務室には、盗聴器が仕掛けられている。そこからの電波を屋根の上で聞く谷。日本では違法な行為だが、そんなもので国民防護が出来るというのなら、日本に軍人はいらない。

 室内で東条は誰かと電話しているようで、一人だけの話し声が聞こえてくる。敬語を使っており、部下ではないらしい。

 所々聞こえてくる話を携帯端末にメモしていく。

 通話は三十分近く続いた。




 そして、情報を整理する。

 見えて来たのは、東条の計画。


『日本をアジア連合の庇護下に据え、アヴァロニアの脅威に抗う。その為に中国と取引をし、一時的に日本を中国の占領下に置く』


 というものだった。

「なんだよ……これ……」

 思わず谷は独りごちる。


 シュトラーフェやアヴァロニアによって、拡張戦術機の総数における約半分を失った日本。陸海空各軍の主力部隊は無事なものの、拡張戦術機と正面から戦えるようなものではない。

 そういった面から、日本は軍事力を半減させたと言える。もしここでアヴァロニアから攻撃を受ければ、民間人に大きな被害が出ることは確実。日本の存続すらも危ぶまれるほどだ。

 ならば、その局面をどう打開するか。

 東条が出した答えが、それだったのだ。

 一人の男が、祖国の為に出した結論だったのだ。


 谷は、東条を半ば馬鹿にしていた思考を捨てた。

章タイトル回収してなくね……?って思いましたがたぶん大丈夫です。きっと。

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