表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第四章 Allies激動
63/74

不吉

 

 待機命令が解除され、二人が別々のベッドに入ってから数時間が経っただろうか。蓮二はまだ起きていた。シュトラーフェと話して、だいぶ気が紛れたと思ったのだが、どうにも違うらしい。

 目は冴え、睡魔が訪れる事もなく、ただ布団にくるまった状態でぼうっとしていた


 冷静になってみると、先ほどの会話では何も解決していない事に気がついた。ただ慰められ、ほんのわずかな希望のようなものに縋っただけなのだ。

 家族のことが何も思い出せない、という事実は何ら変貌を遂げていない。


 シュトラーフェが元気付けようとしてくれたのは手に取るようにわかった。だが、素直に甘えられなかった。自分という存在が全て嘘偽りだったような、自分を作り上げてきたものが根底から崩れていくような感覚。それに支配されたのだ。

 蓮二は身震いした。

 恐怖か、冷えか、心細さか。


 急に寂しくなった。

 近くにシュトラーフェがいるというのに。

 その事に気がついて、自分の都合の良さが嫌になりそうだった。

 もぞもぞと布団の中で体を転がす。自分の四肢にしては、やたらと遠のいたような感覚が返ってきた。


 次第に辺りが気にならなくなり、意識は深い谷底へと没入していく。眠りなのか、闇なのかわからない。わかったところで止まるはずもなく、蓮二は暗い暗い下へと落ちていった。


 そんな蓮二が、シュトラーフェの寝息が収まり、目が開いていた事には気付くわけがなかった。



  * * *



 時を少し遡る。

 位置を決めた結は、桜花を滞空させる。

 偵察機の追跡をやめ、来るであろう追っ手を受け止めるつもりだった。

「こちら桜花。敵機は超音速機のため、撃破は困難と判断。予想される敵追撃部隊の迎撃に備えます」

『了解した。出来るだけ時間を稼いでくれ』

「はっ」


 結は一人になった。

 自分が出られなかった戦いも、彼はこうして戦っていたんだな、と思う。

 経験してみると、心細く、少しだけ怖い。大海原を一人で漂うような、そんな気分だ。だが不思議と落ち着いている。

 あの時の蓮二も、そんな思いだったのだろうか。結にはわからない。わからないが、置いていってしまった過去の蓮二に軽く詫びた。


 しばらくすると、日本軍基地から月光が上がってくる。数は少なく、特に注意せずとも撃破可能だ。

「月光が弱く見えるなんてね」

 桜花の操縦桿を握りながら呟く。

「桜花は、強いね」

 機に語りかけるように言った。

 もう何ヶ月も桜花に乗っている。愛着も湧いてくる頃だろう。

 もちろん返事は無い。それでも、なぜか結は嬉しかった。


「さてと、頑張りますか!」



  * * *



 人々を乗せた輸送機は、無事Allies傘下の地域へ戻ってくることができた。結も、後に続いて桜花とともに無傷で帰ってきた。

 作戦は予定通り、一つの損害もなく完了。

 Allies幹部は皆嬉しげな表情だ。西馬一人を除いては。


 彼は、今の作戦結果より先のことを気にしていた。すなわち、生まれ変わった日本軍の動向である。

 同志の危険という憂いを断つことができた今、西馬が考えねばならないのは今後の展望である。


 最も重要なのは、日本の動向だろう。自分の古巣であり、部下たちがいるのだ。

 私情を抜きにすれば、警戒すべきは中国だが、西馬はどうも最重要事項に中国を据える気にはならなかった。身内の特別扱いは、誰もが簡単には捨てられないものである。

 これが、会見など公式の場だったら良くないことだろうが、Allies内なら誰も構わない。


 そして、不安要素はそれだけに限らない。アジア連合から独立する際の戦闘に現れた、ペルソナと名乗る不明機も気にしなければならない。順調に見えて、由々しき問題を何個も抱えているのがAlliesである。




 一方、連合議会では、中国への対応を協議していた。曲がりなりにも中国の影響下を離れ、あまつさえ新たな勢力として台頭しようとしている連合とAlliesを、彼らが快く思っていないことは自明である。ならば、今後何かしらの手段で攻撃を仕掛けてくると考えるのが妥当だ。


 中国は大国である。正面からやり合えば、敗北は必至。いくらシュトラーフェでも、部隊全てをカバーできるわけではないのだ。一度戦端が開かれれば、シュトラーフェの居ないところから、数の暴力によって部隊が瓦解していく。

 もちろんそれを狙ってくることは予想出来、議会はそれを、様々な方法で何としても避けるために、日夜激論を交わしている。


 Alliesの総弁として、西馬も出席していた。

 真剣に会議には参加しているものの、その表情はどこか虚ろである。

 あいも変わらず、日本の事を考えているのだった。

もうちょっと戦闘描写を頑張りたいなと思ったりもします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ