蓮二とシュトラーフェ
今回の作戦で、シュトラーフェの出番はない。圧倒的な個人戦闘能力を使う場面が無いのだ。ステルス機能は使いたいところであったが、不可欠ではないという判断だ。それでも、予備兵力として待機を命じられてはいる。
つまりは「たまには休め」という事だろう。西馬の計らいだった。
Allies創設以来、いや、それ以前から全ての戦いに参加してきたシュトラーフェと蓮二。二人はAlliesきっての功労者と言える。
なのだが、本人達は前線に出られないことがご不満のようだ。シュトラーフェは、椅子の背もたれにしがみつくように座っている。蓮二は所在無げに部屋をウロウロしていた。
ちなみに、シュトラーフェと蓮二のベッドは離れて設置されている。くっつけなどしたら結と守が黙っていない。
「なあ、西馬さんには話しとくか、あれ」
唐突に蓮二が喋り出す。
「あれとは?」
「シュトラーフェが人になれること」
「蓮二に一存しよう」
「考えるのが面倒だから俺に投げるってことか」
「そういうことだ」
蓮二はハアとため息をついた。
「言い切るなよ……まあいいけどさ」
そう言うと、作戦の指揮を執っている西馬のもとへ歩いて行った。
「さて……」
シュトラーフェは椅子から立ち上がり、あたりを見回す。机が目に留まったのか、そばに寄って行き、引き出しを開けた。ゴソゴソと中を漁る。
「特に面白いものはないのか」
残念そうに息を吐いた。
その後、あらゆる場所を漁り、終わる度にため息をつく。
「……親の写真はやはり持っていないか」
前々から気になっていたことがあった。
以前、彼は家族を戦争によって亡くしたと言っていた。その事を、シュトラーフェに初めて出会った時思い出し、やると決めたと。
――家族を亡くしたことを、思い出した。
では、なぜそれまで忘れていたのか。
記憶喪失などではない。自分の名前や多少の経歴は覚えているのだから。
都合良く家族に関しての記憶だけ消えることなどあるのだろうか。単に意識していなかったのであれば、"思い出す"などという表現は使わないはずである。
シュトラーフェは疑っていた。
自分が覚えていた最初のやるべきこと「蓮二に会い、従う」というのと、関係があるのではないだろうかと。自分にも記憶が無く、使命の対象にも記憶の欠落がある。
これが無関係と言えようか。
顎に手を当てて考えていると、蓮二が帰ってきた。
「どうかしたのか?」
「いいや、なんでもないさ」
* * *
一方、作戦にあたって護衛任務を遂行している結と守の二人である。
二人の機体には電波を吸収する塗装が施されており、シュトラーフェほどではないもののレーダーには映りにくい。周囲までステルス化出来てしまうシュトラーフェが特異なのであって、二機が一般的に劣るかというとそうではない。
護衛対象は、潜水艦一隻とVTOL(垂直離着陸)機が二機だ。前者は旧シンガポール海軍のものであり、後者は旧ベトナム空軍が所有していたものである。
この度のAllies再編成によって、各国軍の全てはAlliesに統合された。とは言っても、派遣部隊という体裁で各国軍は自国に駐屯している。国土防衛が必要になった際、遅れが生じるようなことはあってはならないからだ。
潜水艦に乗れるだけの人員は全て移乗し、乗れなかった人はVTOL輸送機に乗せる。現在はその作業の真っ最中であった。
夜間作業であるため、多少の能率低下は避けられない。だが、それ以上に隠密性が必要だった。視界に映らないというだけでかなりの効果があるのだ。電波探信儀だけで、手に取るように理解するのは難しい。
上空で警戒に当たる桜花と風花。闇夜に紛れる赤と青は気味の悪さを醸し出している。月明かりも星明かりもない闇。常に警戒態勢は敷いているものの、何が出てくるかわからないような、何かにまとわりつかれるような恐怖心を覚える。
その時、二機のレーダー範囲へ侵入するものがあった。二人は同時に捉え、確認する。
まず先んじて、地上の作戦部隊に通達。作業を急がせる。
次に、超長波通信によってヒマラヤ山脈にあるAllies本部へ報告する。指示を仰いだ。
オペレーターより返答。
『おそらく夜間警戒の偵察機です。こちらが発見されない限り、手出しはしないように』
「「了解」」
空中で息を潜め、出力を限界まで絞る。
戦力差があるとは言え、見つかるのは避けたい。現在最低限の戦力で出撃しており、数が現れると防衛に支障が出る。かと言って、これ以上増やすわけにもいかない。
それでは護衛など居ない方がいいのではないか、と思うかもしれないが、それでは作戦部隊の負担があまりにも大きすぎるのだ。
ジリジリと近づいてくる敵偵察機。レーダースクリーンを、ゆっくりとこちらへ向かってくる三つの点を二人は注視する。
被探知を感知すると、ブザーが鳴るようになっているが、二人は心配でならない。
我慢の時間だ。
最近は買うラノベが多くてお金がどんどん減っていきます。辛いです。




