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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第四章 Allies激動
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兄弟

 

「……本当にここに住む気?」

「当たり前だ」

 相変わらず強硬なシュトラーフェである。

「結に怒られても知らねえぞ」

「きっと大丈夫だ」

「その自信はどこから来るんだ」

「結への信頼」

「へえ、信頼ねえ……」

 蓮二は目を見張った。

 最初の頃は独りだったシュトラーフェが、他人との関係の深さを口にしたのだ。蓮二は少し嬉しくなった。

「ニヤニヤしてどうしたんだ?」

「なんでもないぞ」

「信用ならん」

「アッハイ」


 そんな二人を覗く影が二つ……。

「アウトだろうこれは」

「そーだそーだ」

 守と結である。小声で蓮二を咎めるような事を言っているが、中に入っていく様子はない。

 それは、結が嬉しそうな顔をしていたからだろうか。シュトラーフェが楽しそうな様子だったからだろうか。

「……私たち完全に不審者だね」

「そうだな」

「撤退する?」

「……そうするか」

 そして、そそくさとその場を後にした。



  * * *



 連合議会では、西馬の案が可決。これにより、新体制となったAlliesにおける初めての軍事行動は要人救出となる。


 西馬は日本にいるAlliesメンバーへと指示を送った。国家情報委員会に属し、情報を受け取りやすい立場にいる谷。彼を通じ、ハブとして各員へ繋いでもらう。

 そうして、確実に予定を伝えるのだ。


『二週間後に、Allies所属者全員及び志願者を迎えに参上する。各自準備をし、指示通りの場所へ集まれ』


 暗号文に変換され、通信員が打電。民間回線の隙間を縫って、谷のもとへ届くだろう。そこからは谷の仕事だ。

 上司や公安警察の目をかいくぐり、議員やら官僚やら大企業の幹部やらに情報を回すのだ。全くもって簡単な事ではない。だが、それをクリアしてこその谷である。

 無事情報が伝わると、各員は一斉に準備を始めた。

 幸いにも、今回対象となる人員に関しては所帯持ちが少ない。そのおかげで、準備はいくらか簡単になる予想だった。


 作戦立案も、索率いる参謀部が考えに考え抜き、大詰めとなっている。

 作戦開始まではもう直ぐだ。



  * * *



 索 淳の姿はある部屋の中にあった。

 外側から錠がかけられ、出ることはできない。窓は無く、簡素な机やベッドがあるのみ。

 捕虜収容のための部屋である。


 あの時、ペルソナらに撃破された中国軍機の一部は、地面へ落下していた。なんとか不時着したものの、深い傷を負っていたため、索は意識を失っていたのだった。

 気が付いてみると、この場所である。彼は自分の置かれている状況を察したのだった。すなわち、捕虜となったと。


 かと言って、出ようという気もなかった。辺りを見る限り汚いという事もなく、悪くはない生活レベルの待遇を受けているらしい。

 今の彼に、何かを起こそうというまでの気概はないのだ。

 当然だろう。先王を無視して軍事行動を起こした結果、全滅させられたのだ。そういった状況で帰れば、待っているのは電気椅子かギロチン、もしくは鉛玉である。誰がそこに戻りたいと思うだろうか。

 それに比べれば、大人しく捕まっていた方が得だ、という打算もあった。


 そして、まさかここで再開するとは思ってもみなかった。

「……兄……さん……」

 索有人が目の前に立っていた。

「……やっぱり、お前だったか」

 二人の目に、涙が流れることはない。二人の間にそのような感情はない。

 ただの、存在認識。

 それが二人の間を取り持った。


 兄は裏でレジスタンスに身をやつし、弟は国軍で武官を務める。そこには、血の繋がりを分かつような大きな溝があるのだ。

 敵同士の関係。兄弟の関係。

 二つの間を揺れる二人の距離は測れない。


「……俺を、レジスタンスに入れてくれよ。もう、帰れないんだ。勝手に部隊を壊滅させて……帰れない」

 苦し紛れの言葉だった。確実に、有人の耳朶を打った。

「……お前はその程度なんだな」

 返答は冷たいものだった。

「俺の弟だからという下らない理由で簡単に鞍替えできると思うな。都合が良すぎるんだよ。お前は何人の部下を殺した?その責任はお前にあるんだぞ」

「わかってる。でも――」

「わかってるのならそんな考えに至るわけがないだろうが」

 淳は何も言い返せなかった。どう言えば、この状況をよくできるのかわからなかった。言葉が見つからなかった。

「俺は恥ずかしい」

 有人は、その言葉を残して去っていった。

兄弟同士で戦ったりとか協力したりっていうのはなかなか熱くて好きです。この二人にも注目しておいてくださいね。

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