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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第四章 Allies激動
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coup d'État

 

 東京は晴れていた。

 清々しいほどに、雲のない灰色の空。晴れていようがいまいが、景色は変わらないのだ。

 大通りでは反戦を掲げるデモ隊が闊歩している。警官に誘導され、整然と並びながら歩くその姿は、側から見れば滑稽とも思えるだろう。実際、街行く人々は好奇の視線を注いでいる。


 突如、街頭の超大型モニターの画面が、砂嵐へと切り替わった。そこだけではない。各家庭のテレビや、電車のモニター。首相官邸の大型テレビまでもだ。

 次第に鮮明になっていく映像。

 そして、そこに映し出されたのは、東条中将の姿だった。


「国民、政治家、マスメディアの皆様方、私は日本軍中将、東条克己だ。これまで、鮫島元大将の弱腰戦略の前に、多くの将兵が命を落とした。私はそれを許さない。この度天誅を下した。新たな日本軍に生まれ変わらせるのだ」



  * * *



 東条中将改め東条大将の下、日本軍の組織改革が行われた。従来の形を踏襲しながらも、異なった制度へ作りかえられていく。民衆も、好意的な目で迎えているようだった。

 だがそれは、一般の国民だけである。

 多少知見のある人々や、治世に関わっている人々は、気付いていた。

 全て、東条の都合のいいようになっている、と。

 政治家は、軍の組織体系に関しては口を出し辛い。また一介の市民が異議を唱えられるわけもなく、改革は進められていった。


 西馬は、数々の報告を前にして、頭を抱えて唸っていた。

「あいつは何をする気なんだ……」

 基地の一角にある司令室に、その声が響く。

「そういえば西馬さんの元部下でしたね」

 穏やかな口調で西馬の言葉に反応したのは、今回のAllies再編成で事務官となった女性。小鳥遊祐美(たかなし ゆみ)である。

「いつか何かやるとは思っていたんだが……殺すのはまずいだろう……」

 だんだんと西馬の顔が机に近づいて行く。

「国民には一応好意的に取られているみたいですけど、実際は酷いですしね」

 彼女は茶色がかった髪を揺らしながら机に淹れたての緑茶を置いた。

「お、ありがとう」

 熱々の、湯気がもうもうと出ている湯呑みを啜る。

「……はあ、茶は美味い」

「それは良かったです」

 お淑やかな笑みを見せた。

「対応を協議しなければな」

 西馬は溜息をつき、各所に電話をかけ始めた。




「私としては、何かが起こる前に本国からある程度人材を引き上げておきたいと思っている」

 緊急に召集された会議で、西馬は唱えた。

「具体的に言うと、誰になるんですか?」

「残っている厭戦派兵士達と、Allies創設に関わった数人だろうな」

「となると結構大規模ですね……」

「大型の輸送ヘリ二機で足りますかね。輸送機を使うのも難しいですし」

 場が騒がしくなったところで、西馬が手を叩き、話をやめさせた。

「ここでは決定事項として扱う事とする。皆は詳細を詰めてくれ。私は連合議長に掛け合ってくる」

「わかりました。あとはお任せください」

 索が恭しくこうべを垂れる。



  * * *



「結構狭いなあ」

 蓮二は荷物を運び終え、一息つきながら呟いた。六畳ほどの空間。それが蓮二に与えられた部屋だ。

「個室になっただけマシか」

 そう自分に言い聞かせ、荷ほどきを始める。


 三割ほど片付いた頃、急に扉が開いた。

「シュトラーフェか、びっくりした」

 そこに立っていたのはシュトラーフェ。真剣な眼差しで蓮二を見据えている、

「蓮二。私もこの部屋に住むぞ」

「…………え?」

「私もこの部屋に住むぞ」

「ほんとに言ってます?」

「もちろんだ」

 腕を組んで足を肩幅に開きながら言った。

「許可は?」

「取った」

 どこから出してきたのか、紙を蓮二に突きつけた。そこには確かに、シュトラーフェの割り当てをこの部屋にする旨が書かれている。

「こんな物をどうやって……」

「私が蓮二の妻だって言ったらくれたぞ」

 とんでもない言葉がシュトラーフェから飛び出した。

「……なんでそんなことを?」

「なんとなくだ」

「なんとなくで済んだら憲兵はいらないんだよなあ……」

 蓮二は全てを諦めたように天を仰いだ。

「固いこと言うな」

「固くない……」

 ついに、崩れ落ちるようにして蓮二は床に寝転がった。

「急にどうしたんだ?いきなり一緒に住むなんて」

 朦朧としたつもりの意識の中、蓮二はシュトラーフェに訊いた。

「……それは、だな」

「おう」

「……共にいる時間が長い方が、連動性が上がるかと思って……な」

 柄にもなく、詰まりながらゆっくりと喋るシュトラーフェ。

「そ、そうか」

 いつもと違うその様子に、蓮二も言葉を失ってしまった。

「……荷物はいいのか?」

 蓮二は場の空気を紛らわそうとしてシュトラーフェに訊いた。

「荷物は無い」

「あ、そうか、そうだったな」

 再び、二人の間を沈黙が埋める。

 なんとなく気まずさを覚えながら、荷ほどきの作業を続ける蓮二だった。

今回より新章です。よろしくお願いします!

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