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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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アジアの起立 乱


 索は呆気にとられた。

 何が起こったかを理解するまでに数秒かかった。その間にも、一人、また一人と味方は失われていく。

「小隊毎に散開!一対一で戦うな!」

 ようやく平静を取り戻した彼は指示を飛ばす。だが、それが意味を成すかは別の話だ。

 シュトラーフェの猛攻に(ひる)みつつも、部隊は広がる。


 それは無駄だった。

 備え付けられたセンサーですらシュトラーフェの驚異的な機動に追いつけない。

 たった数十秒で、索の戦意は後悔、恐怖にとって変えられた。



  * * *



『制圧完了!』

「よし、二小隊は制圧歩兵部隊の支援に残れ!他は次だ!」

 空を報告と指示が行き交う。伊上隊は合計六機を残し、現状を展開しておいた歩兵部隊に任せ、別の基地へと向かった。

 伊上隊と暮那隊が向かうべき戦場は、全部で四箇所。いずれも爆撃に失敗した基地だ。


 移動を始めた伊上隊を指揮する長谷のもとに情報が届く。

『司令より各員。現在こちらに中国からの援軍とみられる一団が接近中。シュトラーフェが止めに向かってはいるが注意されたし』

 司令部から、作戦に参加する全員への通達だった。

 長谷は檄を飛ばす。

「急ぐぞお前ら!」


 ほぼ同時刻。

 暮那隊も六機を残し、別の基地へと向かう。




 西馬は手を力一杯握りしめながら一際大きなスクリーンを見つめる。リアルタイムで更新されていく数多の情報が所狭しと並んでいる。

 ――こういう時はいつも、罪悪感のようなものを覚えるのだ。


 遥か彼方の空では、今も兵士達が命をかけて戦っている。地上でも同様だ。損害は今の所軽微だが、それでも死んだ人にはそれが全て。

 総力戦の中、自分は安穏(あんのん)と空調の効いた部屋の中で佇んでいるだけ。無論、それを批判する者はいない。彼にしか出来ない事だとわかっているからだ。

 西馬自身もわかってはいる。

 それでも、西馬は辛さを感じる。

 だからせめて、目は離すまいとスクリーンを見つめる。出来る限り勝てるような、生存率が上がるような作戦を立てる。

 そんな思いが、彼の姿勢に表れていた。


「なんとかなりましたね」

 索有人は心を落ち着かせるように大きく息を吐いた。

「……一応、な」

「どうかしたんですか?」

 暗い表情の西馬に、索は不思議そうな表情で目を向ける。

「いや、大丈夫だ」

「はあ、ならいいんですが」

 二人の間にはしばしの沈黙が流れる。



  * * *



 シュトラーフェの周囲は爆轟で満たされていた。

 五百居た中国軍もかなりの数が減っている。七割ほどになっただろうか。

 敵が小隊毎に連携して戦うようになってから、撃破するスピードがいくらか落ちていた。

 だが、焼け石に水。多少遅くなった程度でシュトラーフェに問題はない。

「このままの調子で行くぞ」

 蓮二も好調のようだ。

「ああ」

 シュトラーフェは嬉しげに頷いた。


「蓮二!何か来る!」

 突然シュトラーフェが鬼気迫る様子で声を張り上げた。先程、中国軍の部隊を発見した時とは全く異なった様相だ。

「何かって……」

「わからない。ただ、ものすごく速い。私ほどではないが、今まで見てきたどの機よりも速い」

 真剣な声音で言うシュトラーフェ。

「なんだそれ、どこから出てきた」

 蓮二も次第に緊張し始める。

「わからない。所属も不明、機体のデータも無い。……なんなんだあいつらは……!」

 レーダーに映る三つの影。

 月光どころか桜花を超える速度でこちらへと迫ってきている。

「一旦離れるぞ!」

「頼む!」

 蓮二はこの状況を危険と判断。すぐに混沌とした戦場から距離を取り、様子を伺う。

「……見えた」

 肉眼ではまだ見えないが、シュトラーフェに搭載されているカメラは捉えたのだろう。

 すぐに目に見えるようになる。


 月光も霞むほど、光を吸収するような黒いシルエット。今まで見た機体のどれとも似つかないようなフォルム。邪悪にすら感じるその三機。

 一直線にこちらへ向かってきていた。だが、そう捉えられるのは一瞬だけ。数秒も経たぬうちに近距離までやって来た。


 何をするのか、と臨戦態勢で彼らを睨むシュトラーフェと蓮二。事態は二人の予想と大きく異なる展開を見せた。


 シュトラーフェの仲間だと思い込んだのだろう、中国軍の一個小隊がその三機へと向かっていく。

 攻撃しようとした瞬間、黒い機は消えた。

 そして、そこに残されたのは爆炎のみ。

「第三勢力……?」

 蓮二は訝しげに呟く。

「かもしれないな」


 考えているうちに、黒い機体が中国軍機を襲い始めた。シュトラーフェもかくや、というスピードで撃破していく。

『聞こえるか、播磨君』

 コックピットへ、西馬の声が響いた。

「はい。それで、これは?」

『我々もその三機が何者なのかは掴めていない。だが、このままAllies主力が彼らに攻撃されると非常にまずい。敵対するようであれば……その時は頼む』

 重苦しい雰囲気を醸し出しながら、西馬は言った。

 それもそのはずだろう。彼らの機体性能はシュトラーフェに迫るほどである。それと、一対三で戦えというのだ。無茶な事は西馬もわかっているのだろう。

「わかりました」

『決して無理はするな』

「大丈夫です」

 通信を切った。


 ちょうど、中国軍機が殲滅されたのと同時であった。

いつのまに歩兵展開したんだ?って思った人は52話をご覧ください。

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