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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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アジアの起立 自分の力

 

 高高度を保ってその集団へと向かうシュトラーフェ。雲が多く、視界は限られている。

「敵勢力はおおよそ五百。全て百十五式。スペックは月光に劣るが、数が数だ」

「そりゃまた多いな」

 蓮二は薄く笑う。余裕の表情だ。

「あまり調子に乗っていると足元をすくわれるぞ」

 その様子にシュトラーフェは苦言を呈した。

「ん、ああ、すまない」

「蓮二に死なれると私は嫌なんだ」

 ぷいっとそっぽを向きながらそう言った。

「そ、そうか」

 蓮二は頰を掻いた。


「そろそろ真下だ。行くぞ」

「おう!」

 一度出力を抑え、浮力を消す。重力に従いながら姿勢を変え、目指すは雲の下にいる敵軍。

 出力を全開にし、出せるだけの速度で雲を突き抜ける。

「見えた!」

 二人は敵を視認。その速度は緩めずに(はし)る。

「いくぜ!」

 何度目かの、二人だけの戦いが幕を開けた。



  * * *



「私は成長した証左が欲しい」

 敵集団を前にして(うそぶ)く。

「訓練の見返りが欲しい」

 桜花に乗る結。

「強さが欲しい」

 見据えるは正面。

「守られるだけの女にはなりたくない」

 彼女は二度、蓮二に助けられた。一度目は日本軍から逃げた日。二度目は初めて桜花で戦場に赴いた日。

「自分の敵は、自分で倒す」

 決意の光を湛えた目。

「私はあの時とは違う」

 自分に言い聞かせるように。

『突入!』

「了解!」

 目を閉じ、深呼吸一つ。

 目を開き、(まなじり)を上げる。

「よっし!」

 部隊の先陣を切って敵集団へと空を駆けた。

 突出していた三機に狙いを定める。さらに速度を上げた桜花。


 交錯する瞬間、一気に機を回した。

 間を滑るように通り抜けた後に残るのは、三つの爆轟の華。

 あの一瞬だけで、確実に三機に攻撃、破壊したのだった。

 結は無言のまま、操縦桿を握る力を強める。

 ――ようやく劣等感を拭い去ることができたのかもしれない。



  * * *



 風花はこれが初戦。今まで慣らすために訓練は続けてきたものの、どうしても不安は残る。

 守は自機の強さを信じ、それを以って不安と戦う。


 目前に迫る敵機。

 風花の機体性能ならば優位を取れたはずなのだが、敢えて後手を選んだのは強がりだろうか。


 敵パイロットは剣を振りかぶる。左上から打ちおろす気だろう。

 だが守は見抜く。これはブラフだと。

 そこで、守から見て右側への防御姿勢を残しつつ左へ即座に反応できる体勢を作る。

 案の定、敵は強引に機体を回し、反対側からの胴薙(どうなぎ)を放つ。

「甘い」

 風花の武装、太刀型の高出力振動刃をくるりと回し、その一閃を止める。そのまま力で跳ね除け、敵機体を深々と切り裂いた。

 爆炎に周囲を巻かれながら、守は小さな声で呟く。

「……強いな、これ」

 その声音には、喜びの念が含まれていた。



  * * *



 蓮二は敵部隊と対峙する。

「これ以上進むのであれば、落ちるお仲間は一人ではなくなる」

 警告、いや、脅迫だった。

 百十五式に乗り、この部隊を指揮していた男、索 淳の耳に、オープンチャンネルを伝ってそれは届く。

 思わず舌打ちをした。


 巡航中、突然何かが物凄いスピードで通り過ぎたと思ったら、僚機が一機爆散した。目が追いつくことすらできない何かによって攻撃された彼らは狼狽した。

 収めるべく索が声を張り上げていると、レーダーに一つの影が出現したのだ。それも、正面の遠くない距離。レーダーの故障を疑ったが、確かに正面にはそれがいたのだ。

 そのシルエット、色、舌を巻くような性能。

 間違い無く、噂のシュトラーフェだと索は断じた。

 たかが一機、と向かおうとする部下たちを制止したのだった。


「貴方は何故ここにいる」

「答える義理はない」

「我々を通してもらいたい」

「それはできない」

 何を言っても無駄なようだった。

 このままでは駐屯地が壊滅してしまう。だが、ここで戦えば間違いなく負ける。

 歯がギリギリと鳴る。

 索は苦境に立たされたのだ。


 今ある選択肢は二つ。

 総突撃をかけ撃破できる望みに賭けるか、大人しく引き下がるか。どちらにしても、中国は大きな損害を被る。


 そして一つ、大きな問題があった。

 この軍事行動は、先王の誰一人にも許可を得ていないものなのだ。それだけでも、首を()ねられかねないことである。

 だが以前危機に陥った際、索は止む無しに許可を得ないまま軍事行動を行った。その結果中国は守られ、お咎め無しということもあった。


 その時は結果が得られたのでよかったが、今は違う。このままシュトラーフェに勝てる保証は無い。

 そのまま五百近くに上る拡張戦術機を失ったとあっては、首が飛ぶのは間違いない。


「ここで引いては中国軍人の名折れ!自分の命など二の次だ!」

 索の大声は、中国軍機全てとシュトラーフェに伝わった。

「戦う、ということでいいのか?」

「当たり前だ」

「そうか」

 一つ、ため息が聞こえた。


「残念だ」


 声が届くと同時に、シュトラーフェの姿を見失った。いや、捉えられなくなった。


 その時、最後尾にいた僚機が真っ二つに斬られた。

風花と桜花は対をなす存在なのです。思いついたときは思わずニヤニヤしました。

ロマンはいいぞ

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