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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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アジアの起立

 

 アジア連合に属する十一カ国の首脳はその日、"偶然"一国に集まっていた。

 そのうちの十カ国は、以前索が示したもの。もう一カ国は、彼らのロビー活動によって新しくAlliesと関係を持った国だ。

 その面子も"たまたま"である。少なくとも、公式にはそういうことになっている。外遊、首脳会談、視察など、外国を訪れる理由は幾らでもあるのだ。

 すべからく、彼らの表情はどこか緊張している。しかし、その中には喜びや期待の色があった。全員が、これから起こる変革に期待しているのだ。


 そして、そのままの流れで"偶然にも"一堂に会した十一人は、本来二国間の首脳会談後に行われる予定だった記者会見の場に姿を現した。

 時刻は午後二時半。

 ぞろぞろと、演台が二つしか用意されていない会場に十一人が入る。待っていた記者たちは唖然とした。

 誰も、何かが変わるなんて思ってもみない。


 ――ある関係に終止符が打たれる。


「我々十一カ国は、名ばかりの共栄を謳ったアジア連合を脱退する。これより我々は、真の共和、共栄を目指すものである」



  * * *



「予定時刻です」

 時を同じくして、レジスタンス基地に急いで作られたモニタールーム。薄暗い中に、青白い光がいくつも灯っている。

「よし……状況開始!」

 全体が見渡せる高い位置に座っている西馬の一際大きな声が響いた。

 それと同時に、一人に一つが割り当てられたモニターの前に詰める管制員が、一斉に喋り出す。

 ヘッドセットを通し、各部隊へその命令が伝達される。

「状況開始。繰り返す、状況を開始せよ。普通科二個中隊は予定通り中国軍駐屯地に――」

「上空待機中の各部隊へ。小隊ごとに散開、各方面へ」

「――戦術機中隊展開終わり。予定より一分の遅れ」

 その部屋は一気に騒がしくなった。

「急造の指揮系統もなんとか機能しているようでよかった」

 西馬はホッとした様子で一息つく。

「そうですね」

 傍に控える索も安心しているようだった。そんな彼に、西馬は問いかける。

「この先どう読む?」

「奇襲ですから初戦は絶対に上手くいくでしょう、保証できます。そのあとは……本土から応援が来られると厳しいでしょうね」


 今回の戦いでのAlliesの目標は、十一カ国に駐留する中国軍の掃討、もしくは国外へ追い立てることである。

 中国軍は、安全保障という名目でアジア連合各国に駐屯地を配置しているのだ。無論、その目的は威圧。喉元に刃物を突きつけられているようなもの。

 今はまず、その刃物を叩き落とすのが先決で、話はそれからである。



  * * *



 基地から発進していた爆撃機は、シュトラーフェのステルス機能によってその存在を秘匿、待機していた。

「展開する。小隊三機、俺に続け!」

 状況開始の下命と同時に、ステルスの庇護下から離れ、小隊ごとに各々の目標へと向かう。

 シュトラーフェと蓮二は彼らの後ろ姿を目に焼き付け、機を翻した。

 やることはまだ終わっていない。




 同時刻に、守、結を旗印とする部隊が展開を終えた。日本軍から離脱した月光五十二機を二分(にぶん)したものだ。

 結が乗るのは以前と同じ桜花。フローティングシステムの修復が完了し、設備を増強。前までの桜花とは、いくらか違った様相を見せている。


 そして、守が駆るのは、富士川重工の技術を駆使して作られたもう一つの試作機。

 "試式拡張戦術機 風花(ふうか)"である。

 桜花とは対照的な青一色の塗装に、所々白く模様が描かれている。

 しなやかに伸びる機械じかけの手足。桜花よりも厚く施された装甲。

「初実戦、どんな働きをしてくれるんだ?こいつは」

 調子に乗っているのか、不遜な態度で言う守。

『自慢気になるのも大概にしとけよ』

「……はい」

 部隊の陣頭指揮をとる長谷にたしなめられ、落ち着きを取り戻した。




 後詰(ごづ)めとして配置された普通科歩兵総勢八百名、四個中隊は移動。各目標へと向かう。時には地下水路を通り、空挺降下も行う。その時は近い。

 その中には、レジスタンスだけではなく正規兵も含まれていた。

 各国の軍に籍を置きつつも、"個人的に"レジスタンスへ身をやつした彼らはその身に闘志をたぎらせる。




 今回のシュトラーフェの役割は、単機で敵基地を撹乱することにある。もちろん危険は伴うが、そこは機体性能と蓮二の腕が上手くやってくれるだろう。


 奇襲爆撃によって混乱がもたらされた基地へ、シュトラーフェは空を駆け抜ける。



  * * *



「本当に通信量が増えましたね」

 一方、中国本土の基地司令室にいた索淳は、部下の報告を受けながら腕を組んで考え込んでいた。その時、部下の一人が声を上げる。

「レーダーに感あり、突然現れました!場所はヒマラヤ山脈から南東に二十kmです!」

「なんだと!?どういうことだ!」

 その常識から外れた報告に、索は耳を疑った。

「わかりません!突然強い反応が……!」

「わかった。……理由を考えるのは後回しだ。すぐに出現した付近の基地に戦闘機及び拡張戦術機を展開させろ!」

「了解!」

 索の命令に瞬時に反応し、各自のなすべき事を行う。

 索は一息ついた。

「やはり来たか。用意しておいた甲斐があった」

この章はじめての大規模戦闘ですお待たせしました。

戦闘シーンももちろん好きなのですが、裏での謀略や作戦立案やらのお話が大好きなのでそっちに熱が入ってしまってなかなかやりづらいです。

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