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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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Base

 

 その日、蓮二などの富士川重工に駐留していた一団は大陸の空にいた。皆各々の機に乗っている。細かい場所は明かされていないが、レジスタンスのアジトに向かっていた。

「へぇ、このあたりか」

 蓮二にとっての第一印象は、"高い"であった。計器は現在海抜8000mを指しているが、地表の様子がわかる。と言っても、ほぼ一面真っ白で時折岩肌がある程度。

 彼らが飛んでいたのは、ヒマラヤ山脈上空である。


「おい蓮二、本当にこの辺なんだろうな」

 突然個人回線で守が話しかけてきた。

「知らん。索さんに聞いてくれ」

「話しかけづらい」

「なおのこと知らん」

 適当にあしらっていると、先頭を行く索の機が高度を下げ始めた。

「この辺りらしいな」

 しれっと反応した守に一発殴りたくなるような衝動を覚えたが、それをねじ伏せる。面倒ごとはごめんなのだ。

「だな」

 先導に合わせ、降下する。


 山肌に近づいていくと、一箇所から土煙が上がった。そして、ゴゴゴゴという音と共に一部が縦にスライド。

 その向こうに入口が出現した。

 索はその中へと滑り込むように入っていく。

「どっかで見たことあるような光景だな」

 蓮二は一人呟いた。



  * * *



「すごーい」

 格納庫で自機から降りた結の第一声はそれだった。格納庫だけでもかなりの広さだ。レジスタンスの予算でこれほどの拠点が造れるのか疑問を覚えるほどである。

 だがその割に、庫内にあったのは旧式の戦闘機や爆撃機、もはや年代物の拡張戦術機ばかりであった。


「ん……?おい、あれ、疾風(はやて)じゃないか!?」

 なにやら興奮した様子で守がかけていった。ある機体の目の前で止まり、舐め回すように観察している。

「やっぱり疾風だ……よくこんなものが……」

 なにやらブツブツとつぶやいている。

「おい、蓮二も来てみろよ」

「えー……」

「日本軍初めての拡張戦術機だぞ」

「へぇ、こんなところにあるんだな」

 興味無さげにつぶやいたが、視線はそれに注がれていた。

「よく見たらかなり改造されてるな……動力系も手が入ってるか……武装も全然違う」

 再びブツブツと独り言を垂れ流し始めた。


 Multi role Fighting Systemという構想および運用は、アヴァロニアが開発したものだった。それが採用されると同時に南米へ侵攻したアヴァロニアは、瞬く間に敵戦車部隊や飛来する敵航空機部隊を撃破。南米諸国の軍事力はそこまで大きなものではなく、装備も旧式のものが多かったが、MFSの実力を示すには十分だった。

 世界各国もすぐに開発をスタート。日本もある程度の遅れは取ったものの、開発競争に参入した。


 そして、世界で二番目にMFSを手にしたのは、なんと日本だった。

 それが、富士川式一型拡張戦術機 疾風である。その開発社は、名前の通り富士川重工である。

 世界有数の技術力を駆使、国家レベルでの支援も受けながら完成したその機体は、可もなく不可もない程度の性能であった。

 出回っていたアヴァロニア機のスペック情報を下回ったのである。


 とは言え、それでもMFSだ。

 演習においては戦車複数両を撃破。かなりの運動性能を見せた。


 その機体が、ここにある。

 守は天にも昇る心地であった。


「おい守、いつまでニヤニヤしてんだ。そろそろ行くぞ」

 悦に浸っていたところを蓮二が遮った。やや不満げな守だったが、仕方ないと蓮二に追従した。



  * * *



 ある夜。

 中華王朝人民国、先王宮(せんのうきゅう)では、晩餐会が執り行われていた。

 目を痛めそうなほど激しい色合いの服に身を包む七人が、これまた豪華な内装の大部屋で会を楽しむ貴族達を見下ろすようにして、一段高い場所に座っていた。

 彼らはこの国を治める先王と呼ばれる七人だ。


 先王を国家における最高意思決定機関と位置づけ治世を行っており、その政治体制は、言ってしまえばとても古臭い。

 この時代に王政など、前時代的どころか古典的も飛び越え骨董品ですらなく化石である。いくらその制度が良かろうと、時代には適不適があるのだ。


 そんな彼らのうちの一人に、武官が耳打ちをした。

「連合の国のいくつかに不穏な動きが……」

 それを聴くと、先王の一人は煩わしそうに言った。

「お前はそんなことのためにわざわざ我が時間を割いたというのか?恥を知れ」

「……失礼いたしました」

 その武官は歯を食いしばりながらその場を去った。そのまま先王宮を出る。

 出口のところで、彼の部下が待っていた。歩きながら、その武官に問う。

「いかがでした?」

「ダメだな」

「やはりそうですか……」

 その部下は肩を落とす。大きなため息をついた。

「命令に背くことにはなるが、我々でやるしかあるまい」

「よ、よろしいのですか」

「それで解決できればいいのだ。後でどうとでもなる」

 その武官は精悍な顔を強張らせる。

「戦の用意をしろ。拡張戦術機部隊を出す」

「はっ、直ちに」

 格好のついた敬礼をすると、彼の部下は走っていった。

「諸国連のジジイども、何をする気だ」


 街明かりに照らされ、ぐいと先を見据えるその男の名は(スォ) (チュン)といった。

旧式機はいいぞ。

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