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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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大綱

 

 身を震わせる轟音。

 それは地面すらも揺るがす。

 何が起きているのか全く掴めない。

 あたりにあるのは、崩れ、跡形も無くなった建物。所々鉄筋や配管が突き出ている。

 それらの間から、まるで湧き出したように人間が転がっている。


 立ち尽くしていられるほどの体力は、すでにない。土の上にへたり込んでいた。

 かろうじて上半身を立てているが、今にも崩れ落ちそうだ。


 ――これは覚えている。

 既視感。デジャヴ。

 そのようなものを、幼い子は覚えた。



  * * *



「……っは……っ……」

 朝日が差し込むことのない朝はもう何日目だろう。

 シュトラーフェは飛び起きた。荒くなった呼吸は、苦しそうで声にならない声を上げさせる。

 過呼吸になりそうな胸を必死で抑え、息を落ち着ける。

 だが、なかなか治らない。

 やけに長く感じた。


 五分、いや、十分くらい経っただろうか。

 シュトラーフェは布団にくるまった。

 顔を(うず)め、膝を丸める。

「…………ふぅ」

 一つ、小さなため息を漏らす。

 なんとか落ち着くことができた自分を褒めた。

 なぜあんな夢を見たのか。シュトラーフェに覚えはなかった。しかし、あの感覚だけは強烈に覚えている。

 戦闘の中で体感したのだろう。彼女はそう割り切ることにした。


 そうする事で、自分の中にある何かから目を背けたかったのかもしれない。



  * * *



 第一回から数日後、二回目の会合が開かれた。

 この日は全員出席とはいかず、何名か欠席者が出た。しかし、今日の議題とは関係が薄い人だったので決行したのだ。

 前回と同じ、電波塔の高層に位置する部屋に各員が集まった。


 西馬が立ち上がり、声を張る。

「今日の議題は今後の方針設定だ。何人かで詰めてきてはいるが、確認を取っておきたい」

 言い終えると、西馬は傍に目配せをした。その目線の先にいたのは、索 有人だった。

 彼は立ち、出席者を見回して言う。

「簡単に言うと、私が企図するのはアジア連合の切り崩しです」

 その言葉に、会場にはどよめきが満ちた。


 アジア連合。

 中華王朝人民国を盟主とし、東南アジアから中東までの数十カ国をまとめ上げる国家連合だ。

 十年ほど前から国際社会で幅を利かせるようになり、経済力ではアヴァロニアに迫る勢いだ。

 その急成長は、日本のおかげと言っても過言ではない。

 アジア連合の製品を輸入する業者が日本には数多くいる。日用品から電化製品まで、多岐にわたるのだ。おかけで日本の対アジア連合貿易収支は赤字である。それゆえ、アジア連合は国力を増大させている面が大きい。

 さらに、アヴァロニアの侵攻を日本が食い止めており、図らずもアジア連合の首魁を守る結果になっているのだ。


 しかし、そんなアジア連合にも近年亀裂が入っている。その主な原因は、中国の国体の古さと横暴さだろう。

 簡単に言えば、中国は資源の蛇口を握りながら外交をやっている。「そちらの出方次第では供給を止めるぞ」ということだ。

 中東の石油資源は軒並み中国系企業が占有。東南アジアの地下資源およびゴムなど熱帯にしか存在しない資源は、インフラ整備の見返りとして中国本土へ。

 たしかにアジア連合の勢力は大きいが、それは一国が全てを吸い上げているからに過ぎないのだ。


「中国による一方的で威圧的な外交政策のおかげで、連合諸国は鬱憤がたまっています。事実、我々レジスタンスは表立ってではありませんが、三カ国ほどから支援を受けています」

「具体的には?」

 質問の声が上がる。

「先方からは、誰にも明かすな、と言われているので、今のところは申せません」

 索はきっぱりと断った。

 そこで西馬が口を挟む。

「"今のところは"ということか」

「はい。いずれ近いうちに協力関係を結ぶことになるでしょうから、その際みなさんにお教えします」

「わかった。続けてくれ」

「はい。……支援を受けておらずとも、活動を許容している国は七カ国ほどになります。つまりは、我々が行動を起こした時にバックアップしてくれる国は十カ国ほどだろうという予測です」


 索の言葉に、何人かから驚嘆の声が上がる。

「それはすごい」

「アジア連合の三分の一じゃないか」

「ええ。まあ、何年もやってますから」

 索ははにかんだような表情を見せた。だが、すぐに真剣な眼差しに戻る。

「数で言えばたしかに三分の一ですが、国力で言えば十分の一程度でしょう。今まで割りを食ってきた国ばかりですから」

 つまり、それだけではアジア連合を揺るがし得ないということだ。

「そこで、Alliesが参入します」

「まだ何も無い組織だがそれでもいいのか?」

 列席者の一人から疑問の声が上がった。

 Alliesはまだ何の戦果も挙げていない、結果も出していない幼生のような団体だ。権限はおろか発言力も信頼も求心力も無い。


「いえ、そういうわけでもありません」

 索ははっきりと言う。

「実績なら播磨氏がたくさん作っていますよ。輸送船団の単機壊滅、敵拠点の単機制圧、広範囲ジャミング、対多数戦闘において何度もの勝利……さすがにどこの国の情報部も掴んでいると思います」

 蓮二は少し恥ずかしかった。

「さらに、アヴァロニアを退けたことで日本軍の評価は変わってきています。これだけあれば十分ですよ」

 索は楽しげに笑った。


サブタイは「たいこう」と読みます。おおつなではありませんのでご注意を。

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