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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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躍動

 

 思わず蓮二は足を止めてしまった。

 眼は見開き、全身が強張(こわば)る。

「どういうことですか」

 声が震えている。恐怖か緊張か。

「あー、別に言いふらす趣味はねえから安心しろ。あいつらはおろか上司にすら言ってねえよ」

 毒気を含んだような笑みをそのままに、柔らかな声で言った。

 だが、信じられるはずがない。

「本当なんですか」

「こればっかりは信じてもらうしかないな。それよりそろそろ呼んでくれないとこの先がまずいんだが」

 周囲を見回しながら谷は言った。

「とりあえず呼びますけど……しばらく警戒しますからね」

「わかったよ。好きにしてくれ」

 谷の表情はいたずらっぽい笑みへと変わった。



  * * *



 その頃、シュトラーフェは蓮二のベッドを陣取っていた。その表情はどこか不満げである。

 蓮二と会って以来、彼から離れることがなかったシュトラーフェにとって、初めてのお留守番であった。

「んー……」

 守と結は外で訓練中のためここにはいない。簡単に言えば、暇なのである。

 二人の練習相手を務めてもよかったのだが、強過ぎて練習にならないだろうということでやんわりと断られてしまった。

「…………んーー」

 うつ伏せになり、手で顔を支えて足をパタパタと動かす。実に退屈そうだ。

 なぜ蓮二のベットなのかというと、なんとなく、である。


 その時、シュトラーフェに無線が届いた。蓮二に渡してあった通信機からだった。

「……どうした、蓮二」

『悪いが今すぐ来てくれ。色々とまずい事になってる』

「わかった。東京なら二分で着く」

『ありがとう』

 二つ返事で了承するシュトラーフェ。蓮二の様子から察するに、危機的状況のようだ。急がねばならない。

 通信が切れたのを確認すると、すぐに地上へ出る。そこではちょうど、守と結が訓練を行っているところだった。それを横目に、普段シュトラーフェを隠してある事にしてある廃墟へと向かう。

 内部の中央まで来たところで、その体を光が包む。たちまち機体へと姿を変えた。

 念のため、守と結の二人には伝えておく事にした。

「少し出かけてくる」

「え?どういうこと?」

 結の問いを無視し、一気に飛び上がる。

「……ジルヴェ・フリューゲル」

 ある程度の高さまで昇ったところで、人知れず呟く。

 すると、その声に応じるように、シュトラーフェの姿に変化が起きた。

 翼が生えたのだ。


 無論、それは猛禽のような何枚もの羽根が重なったようなものではない。科学技術の粋が集められたであろう、(しろがね)の翼。

 しなやかなフォルムはとても美しい。


 その翼の、航空機で言うエルロンにあたる部分から、光が漏れ出す。

 シュトラーフェは姿勢を地と平行にした。

 そして、慣性を引きちぎるように加速した。


 その姿を目にした守と結の二人は、しばらくそこに立ち尽くしていた。



  * * *



「三分で来るそうです」

「そりゃ速え」

 当たり前のように蓮二が口にした言葉に、谷は思わず笑ってしまった。

「んま、三分くらいならなんとかなるだろう。どっか建物行くぞ」

「もうそんな近くにいるんですか?」

 焦ったような谷の様子に、蓮二は疑問を覚えた。周囲に人影はなく、何の音もしないのだ。

「いや、近くにはいないな。ただ、おそらく囲いは完成してる。なんとか抜けようと思ったんだがな。そうなると、追っ手を引きつけて、時間を稼いで助けを待つのが安全なんだよ」

 さも当然かのように言い切った。

「そんで今は、シュトラーフェの支援を受けやすい場所に移動するってわけだ」

「なるほど……」

 やはりとんでもない人物だと蓮二は思った。国家情報委員会のメンバーは皆こうなのだろうか。


「ここでいいかな」

 蓮二が考え事をしていると、突然谷が止まった。ちょうど、そこそこの高さがあるビルの前だった。

「一番高い所の方がいいんじゃないですか?」

 蓮二の考えも当然である。だが、谷は答えなかった。

「まあ付いて来いって」

 それだけ言うと、ガラスで出来たビルのエントランスに飛び蹴りを放つ。

 谷の全体重と慣性が一点に加わる。小気味好い音をあげ、ガラスは簡単に砕け散った。

 蓮二はなんとも言えない表情だ。

「一分で屋上まで上がるぞ」

 先程から結構なスピードで走っていたと言うのに、これである。蓮二は気が遠のきそうだった。

 駆け出す谷。仕方なく蓮二はその後を追った。



  * * *



 シュトラーフェは、既に東京上空に居た。

 あとは蓮二の居場所を探すのみだ。だが、先程からうまく発信機の位置が捉えられない。建物の内部にいるのだろうか。

 大声で呼ぶわけにもいかず、ひとまず待機する事にしたのだ。夜中でも、大都市東京は煌々と火を灯している。


 しばらくして、蓮二の信号を捉えた。

 彼女は一目散にそこへ向かう。

またしても痛々しい名前を作ってしまいました。満足です。

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