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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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夜光

 

 しかし、その事実が判明したところで、何かが起きるわけではない。調べようとは思うものの、ひとまず蓮二は棚にあげることにした。

 行きに使ったエレベーターで展望フロアまで降りる。夜も深くなり、人影はまばらだ。

 ふと、なんとなしに窓辺へ寄る。


 闇に浮かぶネオン。

 その一つ一つが人々の営み。

 各々に道があり、人生があり、灯はそれらを照らす。良い方向であろうが、悪い方向であろうが、構わずに前を照らす。


 この時間でも、商社ビルの窓からは光が漏れている。日本全土が解放されてから数ヶ月も経っていない今でさえ、すでに日常は始まっているのだ。


 蓮二が国民の生活を守ったのは事実だが、どうにもその実感は湧いてこない。それどころか、いずれこの日常を壊してしまうのではないか、という不安に駆られる。


 世界にとって戦うことが正解でも、一人一人にとって正解だとは限らない。全は個に適応できない。

 戦争によって家を失う。国を追われる。命を落とす。

 当事者にしてみれば、それが全てなのだから。

 これから戦うであろう誰かも、今眼下に広がる町に住む人々と変わらぬ日々を送っているのだ。


 ――自分は一体、幾千、幾万の人生を潰すのだろうか。


 ――和平のために、どれだけの屍を積み上げればいいのだろうか。


 その答えは、永久に出ない。



  * * *



 感傷に浸るのをほどほどに、蓮二はその場を後にした。

 待たせていた車まで歩く。宇垣が快く貸してくれたものだった。もちろん運転手付き。偉い人になった気分の蓮二である。

 あたりは、首都だけあってどこも明るい。意味があるのかと問いたくなるほどだ。

 一陣の生温い風が髪を揺らす。

 その場所に、車は無かった。


 辺りを見回すが、それらしい影は一つもない。それどころか、人気(ひとけ)も全くない。

 一体何があったというのか。

 どうしようもなく、立ち尽くす蓮二。

 直後。

 背後から音が聞こえた。


 コンクリートにライフル弾が突き刺さった音が。


 それが直撃していた未来が、蓮二の脳裏に浮かび上がる。もしそうだったのなら、今頃、糸の切れた操り人形のように地面へ横たわっていたに違いない。

「クソッ!」

 死の淵に立たされた蓮二は、怯えるでもなく喚くでもなく、悪態をついた。

 そして、走り出す。無論荷物は投げ捨てた。姿勢を低くし、全力で加速。

 ひとまず向かうのは射線が切れるであろう場所。どこから飛んできたかはわからないが、何もしないよりはマシだろうと考えたのだった。

 前方に路地が見えた。

 迷わず入り込む。


 そこで、蓮二は己の不幸を呪った。


「まずは、ナイスランとでも言っておこうか。蓮二君」

 男の声だった。

 無意識に足が止まる。


 暗闇から現れたのは大柄の男。

 闇に紛れ込むようなスーツを着ている。胸板の厚さや腕、足の太さから、相当屈強であることの予想がついた。

 整えられた金髪。青い眼。

「我々にご同行願うよ。シュトラーフェのパイロット」

 穏やかに、だが有無を言わさぬ迫力を持った声が蓮二に届く。射竦められたように固まる蓮二。

「……誰だ」

 恐怖心を強引にねじ伏せ、意識して強く声を発する。足掻きのようなものだった。

「答える義務は無い」

 その問いを微動だにせず跳ね返す。

 ギリギリと蓮二の歯が擦れた。


 逃げようにも、ここは細い路地。

 前には大柄の男と他に二人。後ろも数人が配置され、どこにも逃げられない。


 絶体絶命。

一話分の文量が少なくなってきてるのに今気づきました。まずいです。

これから書く文は少なくとも二千字以上にしたいと思います。

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