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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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Allies

 

 シュトラーフェの扱いに関しては、無期限の引き伸ばしとなった。事実上の放任とも言える。

 要は、西馬と早川におもねったのだ。

 改めて、二人の権威に驚く蓮二であった。


 同時に、気になっている事があった。

 あの時早川は『理由は言えない』と言った。

 そこに何の意図があるというのだろうか。

 あそこに揃っていたのは、志を同じくする西馬の関係者達だ。開示できない情報があるのか。

 それとも、何者かの諜報を警戒したのだろうか。しかし、あの場に揃っていたのは軍の幹部や国直轄の諜報機関の人間である。

 それに、西馬が重要な機密を話していたこともあり、その線は薄いとも思える。

 まったくもって意図が不明だった。



  * * *



 曖昧なままシュトラーフェの話を終えた中、西馬は言う。

「最後に我々の名前でも決めておこうか」

 今までの空気を打破するように、とても楽しげな笑みを浮かべていた。

 その意図を察したのか、多方から声が上がる。

「せっかくだからかっこいい名前にしたいですね」

「賛成です」

 敢えて楽しげに振る舞う。やはり陰鬱とした空気は皆好かないようだ。

「名前ねぇ……」

 首を傾げて考え込む者もいた。

Allies(アリーズ)なんてどうでしょうか」

 先程まで話題の渦中にあった蓮二が声を上げる。

「Allies……同盟……仲間たち、か」

 西馬は噛みしめるように呟く。

「良いんじゃないか?」

 相模から好意的な意見が出された。それを皮切りに、次々と賛同の声が上がる。

「それで行こう」

「痛いくらいでいい」

「格好いいな」

 その実、誰も心のうちには幼さが眠っているのだろう。だが、それくらいが丁度いい。合理性と事実だけではつまらない。場は一気に和やかになった。

 蓮二はそれがわかり、とても穏やかな心持ちとなった。

「では、今日(こんにち)よりAlliesを設立する」

 西馬は立ち上がる。

「平和の興廃、この一心に在り。各員、奮励努力せよ」

 古き英雄の言葉を引用し、第一回目の会議を締めくくった。



  * * *



「あの、早川さんって何者なんですか?」

 疑問を放置しておくことが嫌だった蓮二は、二人きりになったタイミングを見計らい、情報を集めるために西馬に遠回しに訊く事にした。

「何者って、元日本軍総司令だが……」

「もっと詳しくお願いします」

 頰を掻きながら言った西馬に、蓮二は食い下がる。

「うーん……士官学校での同期でな。その時からずっと付き合いがある。見ての通りの堅物だがな、意外と情に流されるところもある奴だ」

 感慨深げに西馬は答えた。


 それを聞いた蓮二は、西馬とは相異なる思いを抱いた。

 ――疑惑、である。

 同期ならば、未だ総司令の任に就いていてもおかしくないはずなのだ。

 早川智洋が退いた原因は、情報漏洩および不審な行動、と蓮二は兵学校時代に聞いていた。

 そして、その摘発者は、西馬源三。


 蓮二は再び疑問を投げかける。

「早川さんが罷免になる原因となったのは西馬さんだと聞きましたが、どういうことですか?」

「……そのままの意味だ」

 次第に西馬の表情が曇り始める。だが、そんなもの蓮二にとっては御構い無しだ。

「なぜ早川さんを招集したんですか?」

「今は言えん」

 今度ばかりは突っぱねられた。

「……わかりました」

 これ以上聞くのは、関わっていく上で良くないだろうと判断した蓮二は、また訊くことはなく素直に下がった。

「ありがとうございます」

 謝辞を口にし、その場を離れる。


 そのまま早川と谷に話を聞こうと思ったが、二人はすでに、周辺にいなかった。



  * * *



 早川と西馬の反対意見。

 彼らの関係。

 西馬が早川を摘発した件。

 その上で、先ほど二人が会い、当たり前のように目的を同じくした事。

 蓮二にとっては、どうにも前々から準備された計画のように思えてならない。


 さらに、西馬の会議での発言。

『――前々からリストアップしておいた――』

 これが決定的だ。

 蓮二の中で結論は出た。


 これは、自分が戦い始める前から始まっていたことなのだ。

『皇国の興廃、この一戦にあり。各員奮励努力せよ』

東郷平八郎提督の言葉ですね。これをベースにしました。こういうの大好きです。

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