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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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西馬の思惑

 

「軍、ですか」

「ああ。和平を目的とした多国籍軍のようなものだ」

 蓮二は真剣な眼差しで西馬を見つめる。

「たしか、以前中国人が君を訪ねただろう。名前を(スォ) 有人(ヨウレン)と言ったか」

「……よくご存知で」

「これでも今は情報を掻き集めている最中だからね。それで、その人と協力関係を結んだという話があるのだが、本当かね?」

 これは、守と結、シュトラーフェに隠していた話だった。思わぬ形で伝えることになってしまった蓮二は、バツの悪そうな表情だ。

「はい。レジスタンスを支援する代わりに、我々の目的を手伝うと」

「ならば話は速い」

 西馬は色めき立つように姿勢を変えた。

「我々は現在その軍の編成を進めている。頭数は少ないがね。そのレジスタンスも含めて、我々に加入してくれないか」

 力のこもったその声は、廃墟によく響いた。

「君とシュトラーフェは功績がある。言い方は悪いが、旗印にはうってつけなんだ」

「なるほど……」

 蓮二は考え込んでしまった。

「君達はどうかね」

 西馬は突然三人に話を振る。

「私はもともと蓮二について行くためにここに来たので、蓮二の判断に従うだけです」

「俺も同じです」

 結と守はきっぱりとそう答えた。一方、シュトラーフェは気にもとめずぼうっとしている。

「君は……どうなんだね」

 少しばかり語気を強める。名前を知らないその女性に、西馬は尋ねた。


「申し訳ありませんが彼女には何も聞かないでください」

 唐突に、無言で思考の海へ沈んでいた蓮二が声を上げる。

「どういうことだ?」

 西馬は思わず蓮二に訊いた。

「彼女の事についてもこちらからは一切説明できませんのでご容赦を」

 取り付く島も残さずに蓮二ははっきりと拒絶する。言葉遣いは丁寧であるが、その声は何をも跳ね返す壁のようであり、また刀剣のように鋭い。

 蓮二に凄まれるという初めての事態に直面した西馬は思索を巡らせる。

 ここで好奇心を持ち出して、蓮二と険悪な関係になることは避けたい西馬。これから自分達の象徴的存在になってもらわねば困るのだ。

 その集団を象徴する偶像が存在するだけで、そのイメージはガラリと変わる。本来の意味とは離れるが、簡単に言えばマスコットだ。西馬は、そのキャラクターマーケティングのような手法で民衆の支持を得る画策をしていた。


「わかった、聞かないでおこう」

 ここは退()くこととした。

「答えは出たかね?」

 西馬は改めて蓮二に問う。

 一瞬の後、蓮二は口を開いた。

「……とりあえずは参加しようと思います」

「ありがとう。詳しいことは索氏も交えていずれ話す」

 そう言うと、用はそれだけだとばかりに西馬は踵を返した。四人は、去って行くその背中を複雑な心境で見送る。



  * * *



 足音は聞こえなくなった。

 すると、誰からとなく四人は顔を合わせる。

「はーーーびっくりした」

「私心臓止まるかと思った」

「寿命縮んだ気がするわ……」

「緊張した」

 そして一斉に気を抜いた。皆お疲れのようである。

「そういや蓮二。なんでシュトラーフェの事明かさなかったんだ?」

 ふと疑問に思ったのか、守は蓮二に問いを投げかける。

「知ってる人は少ない方がいいからな」

 蓮二はどもることも無くそう言い切った。

「だからって西馬さんにまで……」

「これからどう動くかわからないんだから、味方だって断じるのは早い気がする」

「確かにそうだけどさ」

 返す言葉が見つからないのか、不満げながらも守は閉口した。

「慎重に越したことはない」

「まあ、そうだな。俺は個人的な感情に流されてるのかもしれない」

 守は俯く。

「それも、悪い事じゃないと私は思うけどね」

 結が慰めるように、守に言葉をかけた。

「慰めどうも。これからはもうちょっと客観的視点を目指すよ」

「実際俺も冷たいのかもしれないな」

 守が言ったのに続いて、蓮二も自分を省みるようにそう呟いた。


「蓮二は冷たくない」

「蓮二は冷たくないよ!」

 ――二人の声が重なる。

 シュトラーフェと結だ。

「……」

「あっ……」

 その事実に気付いた結は、気恥ずかしそうに体をすぼめた。シュトラーフェも頰をうっすらと赤らめている。

「慰めどうも」

 先程の守の口調を真似て、蓮二はそう言った。



  * * *



 四人は戻った後、建物の中では西馬のことを一切口に出さなかった。これは西馬の要望だった。

 意図は伝えられていないが、悪影響は無いだろう、という判断で四人はそれに従うこととした。


 だが、残念なことに、地上には対人レーダーが設置されていた。

 それは確かに、播磨達へと歩いて行き、会い、帰っていった人物の影を捉えていたのだ。

 何者かはわからないが、播磨達に接触を図った人物がいる。そして、自分と会ったことを口止めさせている可能性が高い。

「何のつもりだ」

 宇垣は、普段より低い声でそう呟いた。

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