Suggestion
「それは信用に足る情報なのか?」
『はい。間違いありません。裏は取れました』
「……わかった。ご苦労」
宇垣は通信を切る。そしてディスプレイを見やった。
表示されているのは最近集めた情報の数々。
そこには無論、西馬らが軍から逃走した事も含まれる。やはり一番の懸念事項はこれであぬた。
その後の足取りはまったく掴めておらず、今どこにいるのかもわからない。一体どこで何をしているというのだろうか。
彼らの人数は多かったと聞く。さらには月光を使って逃げたという事だ。ならば、簡単に見つかりそうなものである。
IFF――敵味方識別装置――を切っていても、駆動しているだけで微弱な電波が出る。逃げた際にそれを追えばすぐに捕らえられたはずなのだ。
無論西馬室長ともあろう者がそんな可能性を考えていないわけがない。何か手を打っておいたのだろうか。
「一体何が起きるっていうんだ」
宇垣は身震いした。
* * *
「――という事です」
それらの情報のうち、いくつかは草鹿を通して蓮二達に伝えられた。
シュトラーフェは相変わらず無表情だが、三人からは驚きの声が漏れる。
「西馬さんが……」
特に西馬と親しかった守は、その分二人よりも驚いていた。
「何かやろうってのは俺達だけじゃなかったんだな」
蓮二は胸を張る。
「そうね。でも私達が発端となったおかげでみんな動き出してるってことよね」
少しばかり誇らしげな表情で、結はそう呟いた。
「身の引き締まる思いです」
「だな」
身を震わせながら言った守に、蓮二は追随する。皆一様に、その表情の裏に誇らしさを抱いていた。
「私も、頑張る」
シュトラーフェは小さいながらもはっきりした声で言った。
「頼りにしてるぞ」
* * *
その夜、四人の姿は廃墟の屋上にあった。以前蓮二と守が飲んでいた場所だ。
「飲まなくても一緒に行けば良いんだ!」と結が気付いたことによって参加が決定。ならばとシュトラーフェまでもが付いてくることとなった。
ちなみにそのシュトラーフェは裂け得るチーズを裂かずに食べている。その様子を見かねて結が食べ方を教え始めた。
「静かなのも良いけど、賑やかなのも良いよな」
この前と同じ椅子にもたれかかる守はうそぶいた。
「楽しそうで何よりだよ」
「そうだな」
蓮二の一言に反応したその声は、ここにいる誰とも似つかない野太い声。
「本当に、楽しそうで何よりだ」
その声色から、皮肉で言っているわけではないことがわかる。
「誰だ!」
未だ誰か判別できず、警戒し声を張り上げる守。蓮二も思わず身構える。
シュトラーフェは一瞬戦闘態勢を取ったが、誰なのか気付いたのだろう、すぐに止めた。
ゆっくりと砂利を踏みしめながら近寄ってくる。次第にその顔も照らされ、初老の男性の顔が浮かび上がる。
「西馬さんじゃないですか!」
目の良い守が一番に声をあげた。
「久しぶりだな、君達」
好々爺と呼ばれるには少し若い微笑みを浮かべながら、西馬は四人の傍に立つ。
「室長がどうしてここに?」
蓮二が一番に思い浮かべた疑問がそれだった。西馬が軍を抜けたとは聞いていたが、それ以外の情報は全く耳にしていない。そういった疑問が生まれるのも当然だろう。
「詳しくはまだ話せない。だがとりあえず君達の様子でも見ておこうと思ってね」
「なるほど……」
「なんか、保護者みたいですね」
結が真面目な顔でそう言った。
* * *
「あ、西馬さんも飲みます?」
守は西馬に尋ねた。
「飲みたい所だが、この後もまだやることが山積みでな。またの機会に頼みたい」
若干名残惜しいそうに、西馬は断る。
「やる事ってなんなんですか?」
先程から西馬へ疑問と警戒が入り混じった視線を向けている蓮二が問うた。
「……君達の邪魔はしないように気をつけているよ。むしろ君達、いや、君と同じ目的で動いている」
「俺と、ですか」
すなわち、不戦平和。
「ああ。君もこのまま日本軍の侵攻を止めているだけではその目的に届かないことは薄々気付いているだろう?」
図星だった。
出来ることからやる、と言えば正解なのかもしれない。だが、和平という大きな目標の前では、これまでやってきたことも雀の涙にも満たないのだ。
「そこで、播磨君。君に提案があるんだ」
最近はサブタイトルのネタが尽き始めてます。辛いです。




