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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第三章 Allies
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ナオミ

 

「あ、おかえり」

「おつかれ」

 蓮二が当てられた部屋の扉を開くと結と守が待っていた。

「それで、なんだって?」

 結が事の次第を聞き出そうと蓮二に訊く。蓮二はしばし悩んでから答える。

「協力関係になりたいって人が訪ねて来てな。詳しいことは後々伝えるよ」

「なるほどね」

 結には蓮二が少し嬉しそうにしているように見えた。

「そういや伝え忘れてたけど、西馬さんから伝言を預かってる」

「ん?」

 不意に守は蓮二を見据え、喋りかけた。

「"カマナシ"と"フエフキ"には気をつけろ、ってさ」



  * * *



 ヘルムズは憂鬱である。

 日本に潜伏している工作員を走らせてはいるものの、一向にシュトラーフェの消息は掴めない。

 大きなため息のように唸り、万年筆を持った手で頬杖をつきながら、報告書に目を通す。

 書かれているのは"不可"、"至らず"、"失敗"などそんな文字ばかり。見飽きる。

 精鋭諜報部門のIGAとはなんだったのか、と小一時間問い詰めたくなる内容である。ここまでしても消息一つ掴めないとなると、相手に畏敬の念すら抱くようになるものだ。


 ――そこへ不意の来客。

 来たのはパットンであった。面倒な奴が来た、と内心で毒づくヘルムズ。表には出さず、冷静に出迎える。

「おや、なんのご用ですか?」

 嘲笑うかのような表情でパットンは言う。

「そろそろ例の機に関しての情報が集まる頃かなと思ってな」

「日本軍の管轄ではないことと今は消息不明だと言うことしか仕入れられてませんが」

「それだけか」

 以前ヘルムズが言った内容をそのまま返される。屈辱だが、自分が蒔いた種であるから仕方ない。

「ええ、まあそうですね」

 感情を噛み殺し、落ち着いた声音でそう答える。

「こっちは一つ掴めたぞ」

 なんの前触れもなく、パットンは驚きの事実を口にした。

「……聞かせていただいてもよろしいですか?」

 これはIGAに対する陵辱の域である。ヘルムズは怒り心頭だ。

「パイロットの名前が割れた。"レンジ・ハリマ"と言うらしい」

「それだけですか」

 つい言い返した。いや、言い返してやった。

「何もないよりは遥かに良いがな――誰だ!」

 唐突に振り向き、扉をキッと見つめたパットン。その向こうからは、誰かが走り去るような音が聞こえた。逃げて行ったようだ。

「誰かに聞かれたか……」

 ヘルムズは独り言のように呟き、机の端にあった固定電話の受話器を取る。

 だがそれをパットンはやんわりと静止した。

「名前なんぞ誰に聞かれても問題はない。それに……」

「なんですか?」

「いや、なんでもない」

 パットンには珍しく、答えをぼかした。



  * * *



 パットンが使っている執務室の扉がノックされる。

「入っていいぞ」

 開かれた。

 入ってきたのは二十歳未満に見える女の子。実際年齢もその通りである。

「君だよな?」

 何のためらいもせずにそう訊いた。

「……はい」

 か細い声がそう答えた。

「血縁者でもあるまいに、どうしたと言うんだね」

「いえ、その、興味本位で……」

「ふぅん、まあそういうものか。まあ敵になりうる強い輩だからな」

 その女の子は終始オドオドとしている。

「私でも勝てますかね」

「どうだろうな、ある程度迫れるんじゃないか?」

 それを聞くと、嬉しそうに微笑んだ。




 彼女が部屋を出ていくのを見送ると、パットンは備え付けられた大型の情報端末を開いた。

 アクセスするデータベースは"汎用機軍 開発部門 テストパイロット名簿"。

 名前と顔写真などの個人データが並ぶ欄をスワイプしていくと、先ほどの女の子の顔写真が現れる。

 その名前はナオミ・ハリマ。

 詳しい経歴は不明。ある筋からの縁故採用。

 成績は優秀。勤務態度も良。

 どう考えても怪しい文字列が並ぶ個人情報。

「やはり、そうだな」

 そう言って頷くとすぐに端末を閉じた。


 実のところ、パットンが仕入れた情報はヘルムズに伝えたことだけではなかった。

 日本に派遣した諜報員が、匿名のタレコミを受けたのだ。情報源は不明だが、信用に足る情報だということ。

「……そろそろ山場か」

 虚空に一人つぶやいた。

かっこいいおじさん方が飽和してきているような気がしています。

書きたいんだからしょうがないんです。

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