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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第二章 決別 敵と味方
33/74

撤退戦

 

「奴らは退()き始めた!追って墜とせ!」

 牛島が(げき)を飛ばす。第四師団の面々はすぐさま態勢を立て直し、追撃にかかる。

 だが、彼我の機体の性能差は無。その差が詰まることはない。しかし、第四師団員にとってそのようなことは予測済みである。

「出力制限を解除!気を付けて扱えよ!」

 第四師団に配備された型式のみが備えるシステムである。


 いくら強力なパワーリソースを作ろうが、機体がそれに耐えられるように制御しなければならない。

 その制御機構を今、解き放った。

 このシステムが第四師団機にしか適用されていない理由は、単純に力量の差である。制限を解除すると、安全に運用できる出力を容易に超える。安易にパワーを上げればたちまち機体にガタが来てしまう。

 その調整が難しいのだ。


 彼らは機体を傷つけないよう、最新の注意を払いつつ速度を上げる。じわじわと詰まる彼我の間隔。

 だが、追われる彼らは慌てていない。なぜなのか。

 疑問に思った牛島はレーダーを睨む。表示されているのは僚機や、選別が終わった敵機。そして、そこには――

「映っていない……?」

 ――白銀のそれがいなかった。

「シュトラーフェはどこに行った!探せ!」


 その声が周囲に届いたと同時に、先を行く僚機が攻撃を受けた。



  * * *



 無論、襲ったのはシュトラーフェである。明るく視認されづらい上空で待機し、ステルス機能を使っていた。これならば見つからないのも当然である。

 そして、追いすがる第四師団機を逆落としに攻撃したのだ。

 斬撃をもろに受けたその機は墜落。パイロットは脱出出来たが、機体は海中に没した。


 第四師団の行く手を阻むように空を(はし)る白銀。午後の太陽にさらされ強く輝くその姿は、戦場を駆け巡るほうき星。

 一撃離脱を繰り返しつつ、守達への接触を妨害、攻撃していく。

 攻めあぐねた第四師団は、半数ほど攻撃の矛先をシュトラーフェへと向けた。

 それでも止まらない。

 一撃離脱のみを行うシュトラーフェの速度は凄まじく、捉えられるのは第四師団でも一部だ。追ってもその驚異的な速度で引き離される。よって当然無駄である。難しかろうが、交錯する瞬間を狙う以外の選択肢は無い。


 牛島がシュトラーフェの進路を読み、立ちふさがる。しかし、今蓮二が相手をする理由はない。

 急制動で間合いに入らず避ける。

 蓮二が戦わねばならない相手は、守達に追いすがる敵機のみだ。



  * * *



「お前らあと何分持つ?」

 苦虫を噛み潰したような表情で牛島は部下に訊いた。

 返ってくる答えは皆五分程度。そろそろ燃料が尽きようとしている。だが、手を伸ばせば届くような距離に敵がいる。

 牛島には耐え難い屈辱だった。

「……撤退する」

 小さくも、野太く力強い声でそう言った。




 蓮二とシュトラーフェは単機で第四師団の追撃を退けきった。

「よく頑張った」

 シュトラーフェは楽しげに言う。

「そりゃどーも」

 蓮二もどこか嬉しそうだ。守からも労いの声が届く。

「お疲れ蓮二」

「おう、あとでしこたま感謝しろよ」

「嫌だね」

 本当に楽しそうに話す二人に、シュトラーフェは複雑な感情を覚えた。

 寂しいような、つまらないような、疎外感のような感情。今まで経験したことのないそれが、彼女にはついぞ何なのかわからなかった。



  * * *



 シュトラーフェのエリアステルスを使えば、帰途は安全である。レーダーに探知されないというのは大きい。

 悠々と空を進む彼ら。


 しばらくすると、見慣れた廃墟群が見えてくる。

 事前に通達は行っているようで、道路の一部が沈み込み入り口が見えた。

 彼らはゆっくりと高度を落とし、そこへ向かう。

 ひっそりとした凱旋だ。

機体にダメージが入る可能性があるけど性能を底上げできるとかいうロマン装置が大好きです。

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