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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第二章 決別 敵と味方
31/74

東京湾航空戦 四編 差

 

 ギリギリと音を立てて刃が擦れる。

 パワーではシュトラーフェが上回っているはずなのだが、力任せに押し潰すことができない。一体何が違うのか。力の使い方だろうか。そういった些細なところで大地との技量の差を痛感する蓮二。

 だが、甘えてばかりはいられない。

 押しつぶせないならば、と蓮二は一旦距離を取る。

 武器を構え直し、姿勢を下げ、突貫。

 そして、直剣を振り下ろす寸前に操縦桿を捻る。力任せに機を左へスライド。

 通り抜けながらに振り抜く。

 今度こそは、と思ったが、返ってくるのは押しのけられるような感覚。月光の丸い刃先が届いていたのだ。

 その結果、シュトラーフェはあと少しのところでいなされた。

「これでもダメかよ……!」

 蓮二は歯噛みした。

 半ばやけになりながら、振り向きざまに再び剣を振るう。

 装甲に切れ込みを入れることは出来たが、それまでだった。


 一方、大地は驚いていた。

 先ほどまで直線的な特攻と機体性能に物を言わせたマニューバしか出来なかったそれが、ブラフをかけ、避けられた直後でも冷静に切り返しの刃を振るう。

 着実に進化しているように思えた。

「クソ……何でそう簡単に……強くなるんだよ……!」

 大地の強さの源は、その膨大な訓練量。

「強くなるのが、どれだけ難しいことなのか……」

 機体性能においては数倍上回るシュトラーフェに対し、月光で互角に渡り合う大地も十二分に優秀な搭乗員なのだ。

 自分と自分がやって来た事を誇りに思っていた大地には、癇に触るような事だったのかもしれない。

「何でだよッ……!」


「――一人じゃないから」

 シュトラーフェを操る蓮二。

「一人じゃないから、こんなことが出来てるのかもしれない」

 たった一機で大軍を相手に戦う。

 訓練生を卒業してもいないパイロットが、軍の精鋭と互角に渡り合う。

 それがどれほど難しいことなのか。

 圧倒的な機体性能を持っていたとしても、相当な精神力だ。

「蓮二……?」

 突然話し出した蓮二に疑問の声を上げるシュトラーフェ。

「君がいたから、かもな」

「そ、そうか……」

 突然の告白のようなものに彼女は戸惑い、思わず俯いた。

「ありがとう」

 蓮二は珍しく改まったような口調で言った。

 その間にも斬撃が目の前を抜け、シュトラーフェも返しの刃を振っている。

 その中で、蓮二は落ち着いて話していた。



  * * *



 守は敵を引きつけつつシュトラーフェの様子を見ていた。

「すごいもんだ」

 その圧倒的なスペックは見ていて呆れるほどである。本土上空決戦の際は周りなど気にせずアヴァロニア軍を潰すことに専念していたため、間近でシュトラーフェの実力を見るのは初めてだった。

「さすがに訓練生の時よりは上手くなってるかな」

 よくもあれだけ暴力的な機体を操れるものだ、と守は感心する。

「俺もうかうかしてらんないな」

 そう言うと、引きつけていた敵の月光と対峙した。




 ほうき星のように物凄い速度で移動を繰り返し、鼓膜をつんざくような轟音を響かせる二機。未だにどちらも有効打を入れることができていない。

 だが見る限りでは、その拮抗は徐々に崩れ始めていた。


「ふざけるな!」

 その状況に思わず大地は悪態を()く。

「俺の三年間を、どうしてお前はすぐに超えていくんだよ……!」

 血反吐を吐くような努力をしてきた三年間。死に物狂いで強くなろうとした。

 それが、いきなり出てきた敵に超えられようとしている。

 ――耐えがたい屈辱だった。


 蓮二の表情は次第に良くなっていく。先ほど追い詰められた時とは雲泥の差である。

「もう少しだ!」

 一合ごとにその切っ先は勢いを増す。精密になっていく。

 尋常ではない成長速度。しかし、本人はそれに気づいていないようだった。

 この状況では、シュトラーフェが最も驚いていた。同時に、嬉しいような楽しいような、そんな感情が込み上がってきた。

「……この気分は、何なんだろうな」

 蓮二には聞こえないような小声でそう言った。

「ん?何か言ったか?」

「いいや。なんでもない」

 楽しげな様子のシュトラーフェに首を傾げながらも蓮二は視線を前に戻した。


 その時、ついに月光が握っていた曲刀が弾かれた。

戦闘中に成長していく系主人公になりました。

こういう展開も好きだったりします。

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