こいばな(?)
遂に日本軍は、会議にてシュトラーフェを倒すべき敵であると認定した。師団一つが壊滅させられたのだから当然とも言える。
この決定を強く推したのが、第四師団 牛島 均その人である。彼は、軍人というよりもスポーツマンのような気質を持った男だった。
士官学校在学中、剣道においては敵なし。その上他の武道でも優秀な成績を収めている。スポーツ馬鹿といった感想を持つのも無理はない。
だが、牛島は学業においても優秀だった。テストにおいては常に上位をキープ。兵法の学内対抗戦や囲碁などのゲームでもかなりの強さを誇った。
だからこそ第四師団の師団長を務めているとも言える。また、彼の赴任から師団がより強化されたのも事実だった。
そんな彼は、強い者に何よりも興味を抱く。それも、敵味方を問わずである。今まで彼が興味を持ったのは片手で数えられるほどしかいないのだが。
シュトラーフェも、その中に加わったようだった。
はっきり言えば、面倒な奴に目をつけられた、である。
* * *
播磨蓮二は腕立て伏せをしていた。日課の筋トレ中である。拡張戦術機を操る為には人並みの筋肉が必要ではあるが、過剰なものは必要ないはずだ。ちなみに現在日課分の二周目である。
必要ないのにも関わらずなぜそんなことをしているのかというと、単に暇だからである。
現在地上および上空では、日本軍が訓練を行なっている。それもかなりの規模だ。
その為、現在地下において大きな熱源を伴う活動は禁止されているのだ。工場も軒並み活動を停止、拡張戦術機の移動も許可されていない。
そういうわけで訓練をするわけにもいかず、特に趣味もない蓮二は筋トレに精を出していた。
適度に疲れ、終いにしようかというところで部屋を分かつ壁の辺りに座っていたシュトラーフェが口を開いた。
「二人に聞きたいんだが……恋愛とはなんだ」
蓮二は大きく咳き込んだ。結は飲んでいたお茶を噴き出す寸前でなんとか止める。必死に口を押さえており、その姿はなんとも滑稽である。
「えっと、どういうことかな?」
硬い笑顔で結が聞き返す。
「そのままの意味だけれど」
シュトラーフェは首を傾げた。こてん、と音がしそうなその仕草はとても可愛らしい。
「じゃあ俺はちょっと厠に……」
そそくさと部屋を出ようとする蓮二。だがその肩に、がっしりと手がかかる。
蓮二が振り返ると、そこには満面の笑みをたたえた結がいらっしゃった。
「逃すと思う?」
「申し訳ありませんでした」
* * *
「恋愛……恋愛ねぇ……」
唸りながら考え込む結。一方蓮二はベッドの上で瞑目している。恋愛なんてもの女性経験の無い蓮二にわかるものか。
薄目を開けてちらりと結の様子を見る。
「あ、ほら、誰かを好きになることじゃない?」
その様子と言い草を見て、蓮二は思った。
こいつも恋愛とかしたことないんだろうな、と。
だが、どうやらシュトラーフェは納得したようである。
「なるほど」
一呼吸置き、彼女は問いを重ねた。
「では、好きとはなんなんだろうか」
いたって真面目な表情で結を問い詰めるシュトラーフェ。結はいかにも苦しげである。
蓮二はなんとなく嫌な予感がしたため、薄く開いていた目を閉じ、いかにも寝ているフリをした。
「寝たふりをしてる蓮二に聞いてみたらどうかしら?」
バレるのが早すぎである。だがこれで認めては兵士の名折れ。
「どうなんだ、蓮二」
シュトラーフェが訊いてくるが、蓮二は絶対に反応せんとばかりに寝たふりを続けた。
しばらくするとデコピンが蓮二の額へ突き刺さった。思わず苦悶の声をあげてしまう蓮二。
「大人しく答えましょうね〜」
「わ、わかりました」
渋々シュトラーフェに向き直り、咳払いを一つ。
「はっきり言って、俺にもわか――」
言いかけたところで、シュトラーフェの目がスッと細められた。やけに冷たく感じる。
「――じゃなくてですね。……誰かと一緒に居て楽しいとか、誰かがいないとさみしいとか、そういうのだと思うんですよ。はい。」
いつのまにか正座をしていた蓮二はそう答えた。
なんとか絞り出したシュトラーフェの問いに対する答え。だがシュトラーフェは何の反応も示さない。
しばらく三人の間を静寂が満たす。
「なるほど」
シュトラーフェはそう呟いた。
「えぇ、それだけっすか」
思わず突っ込んでしまった蓮二であった。
自分で作ったキャラですけどシュトラーフェちゃんが可愛いです。「自分が可愛いと思わないキャラを他の誰かが可愛いと思うわけがない」という言い訳でここはひとつ……。
私事ですがワイヤレスヘッドホンが壊れました。保証が切れて10日後のことでした。




