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罪の銀翼  作者: 富嶽 ゆうき
第二章 決別 敵と味方
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鬩ぎ合い

 

 ――シュトラーフェが止まった。

 先ほどまでの勢いが嘘のように。

 ぴたりと、空中で止まった。

「蓮二!一体何をして……」

 不審に思ったシュトラーフェが、自分を止めた蓮二を咎めようと彼の方へ向く。

 だが、何も言えなかった。

 ――蓮二は俯いて、涙を流していたのだ。

 泣き声をあげているわけではない。嘆いているわけでもない。

 ただ、歯を食いしばって涙を流していた。

 それは、"もしも友達を殺してしまったら"という恐怖からの涙か。その恐怖によって止まってしまった自分を悔いての涙か。

 シュトラーフェには、わからなかった。動けなかった。


 シュトラーフェの先では月光が編隊を組み、飛んでいく。

 ただそれを眺めていた。



  * * *



「この戦いに、これからの日本の趨勢(すうせい)がかかっている!各員奮励努力せよ!」

 師団長 高峯中将は愛機を駆り、部下を先導する。襲うはマーカス島アヴァロニア軍基地。一個師団を使うには小さな島だが、初戦と言うのは勢いを決める大事な要素だ。否が応でも勝っておきたい。

 すでに戦闘攻撃機 屠龍によってレーダーサイトや主要施設は無力化されていた。

「突入!」

 一定高度を保って飛行していた月光は、一気に高度を下げる。月光は島に降り立ち、次々と要衝を制圧していった。抵抗はほぼ無く、不審に思えるほど。

 不思議なほどに戦闘は早く終わった。


 この戦果の報は、瞬く間に軍部内で広まった。至る所で歓声が上がる。完全に祝勝ムードだ。

 だがその中で、西馬の顔は浮かない。

 報告を聞いていた彼は、違和感を覚えていた。特に何の抵抗もなく、占領されたと言う。日本に最も近いアヴァロニアの前線基地だと言うのに、だ。

 それに加え、オスカーと呼ばれるアヴァロニアの主力MFSが一機も無かったのだ。

 何かあると考えて間違いない。

 だが、何がある。

 西馬は自分の脳に暗示をかけるように考える。脳をフル回転させる。

 まず考えられるのは、戦略からこの島をとらせる必要があった、と言う可能性。だが、それは今すぐに対処しなければならない、と言うわけにはならない。

 考えられるのは、島への誘い込み。

 そして、誘い込んでやるものは、一つしかない。


「高峯!部隊を撤収させろ!早く!」

「え、何を言って………………」


 ――――通信はそこで途絶える。



  * * *



 マーカス島は大爆発を起こした。

 アヴァロニア軍が、あらかじめ埋めておいた爆薬に点火したのだろう。そう考えると、抵抗がほぼ無かったのも頷ける。

 この、島一つを使った罠によって、第一師団は壊滅し、高峯中将は戦死。島に降り立っていた部隊は全滅。付近に滞空していた部隊も、多大な被害を被った。


 西馬の心中には、自責の念が蔓延していた。

 もう少し伝えるのが早ければ。もっと自分が早く気付けていれば。

 いつもそうだった。例えそれが自分が考えた作戦でなくても、自分が少しでも口出しをし、それが失敗すると、彼は必ず自分の責任を追及した。


 だがそれもひととき。

 自分の精神をすぐに立て直した。これが、西馬を名将たらしめるものだ。

 西馬は顔をしかめて舌打ちをした。

蓮二の心の動きをシミュレートするのが楽しかったりします。


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