第四話 盗賊勇者
ラビィナ王国の商人は、自前の馬車で国外へ向かう。
国内で採れた農産物や特産品を売り、その金で国外の珍しい品を仕入れて帰ってくる。
つまり。
国境近くの森に潜んでいれば、向こうから勝手に獲物がやってくる。
翔にとって、これほど都合のいい場所はなかった。
「追放されたときはどうなるかと思ったが、何とかなるもんだ!」
ここにいれば、肉が勝手に野菜やどこぞの名産品を運んでくる。
仕留めれば金品も手に入る。
ボロいよな!
ハーレムが作れない以外は、良いところじゃないか!
「ここで稼いで、人のいるところに移動すればいいか!」
うさぎ共への仕返しは忘れてないけどな!
「ハハハハ!」
翔は森の中へ響くほどの高笑いを上げた。
◇
「うちの人が戻ってこないのだけど、見かけてませんか?」
あるうさぎ夫人が町の南門の門番を訪ねる。
「見かけてないな。確か四日前に出ていったんだったな。昨日くらいには戻ってくる予定だったか?」
「そうなんです。でも戻って来なくて……」
「そうか。それは心配だな」
そこへ、もう一人の門番が口を開いた。
「そういえば、そろそろ戻ってきてもいい連中が、他にも戻ってきてないな。何かあったか?」
門番と夫人は、顔を見合わせた。
そこへ、
「何かありました?」
と、通りがかりの商人が声を掛ける。
「隣の国に出た商人が戻ってこないんだ。お前も行き先は隣の国だったな」
「はい。今日出発して、明日顔見知りのところで仕入れをして、三日後には戻る予定です」
「そうか。悪いが、向こうでこの町の商人を見かけたら、家族が心配していると伝えてくれないか」
「他人事じゃありませんから。分かりました」
商人は軽く頭を下げると、門を出て隣国へ向かっていった。
その背を、夫人は不安そうな表情で見送っていた。
◇
「報告があります」
ドアをノックし、宰相が王の執務室へ入ってきた。
「宰相よ、どうした? 火急の要件か?」
「いえ。先日、城内で暴れた人族の件に関係する報告です。国外追放に同行した兵士たちが戻って来ません」
「……何かあったのかもしれません」
「少し待て」
王は目を閉じ、静かに思考を巡らせる。
「……」
やがて、ゆっくりと口を開いた。
「国外追放した場所は国境付近であったな」
「はっ」
「護送した兵士が戻らぬのであれば、偶然とは考えにくい」
「至急、調査隊を編成せよ。兵士たちの安否確認と、人族の所在確認を最優先とする」
「はっ!」
宰相は深く一礼すると、足早に執務室を後にした。




